高坂はる香のワルシャワ現地レポート♪17♪
J J ジュン・リ・ブイ インタビュー

(c) D. Golik / The Fryderyk Chopin Institute

取材・文:高坂はる香

 最年少17歳ファイナリストとして、唯一入賞を果たしたJJ ジュン・リ・ブイさん。ベトナム人と中国人のご両親を持つカナダのピアニストで、現在はダン・タイ・ソンさんのもと学んでいます。お若いのに落ち着いた音楽、そして少し早口だけれど同じく落ち着いたしゃべり。ガラコンサートの後に立ち話的におこなった短いインタビューですが、どうぞ。

JJ Jun Li Bui (c) Haruka Kosaka

── 1次予選、エチュードOp.10-3(別れの曲)から弾き始めたことがとても印象に残っています。

 僕の心の中でも特別な位置にある作品です。あのエチュードはポピュラーな作品として扱われているところがあって、あまり真剣に聴かれることがないかもしれないけれど、僕はとても深くシリアスな作品だと思っています。そこに敬意を払いながら演奏しました。

── ショパンを演奏するうえで大切だと思っていることは、どんなことですか?

 ショパンの音楽の中には多くの詩情があり、思想があると思います。ショパンはたくさんの顔を持っています。すべての作品にユニークなキャラクターがあるので、そのキャラクターを伝えなくてはなりません。技術的に大切なこともたくさんありますが、やはりムードや雰囲気をちゃんと捉えることが重要だと思います。

── お若いのに、人生経験を積んできたかのような表現が聴かれることもありましたが、その音楽性に影響を与えたものはなんでしょうか?

 映画を観たり小説を読んだりすることは好きです。そういう物語がいろいろな世界を見せてくれて、そこからインスピレーションを得ている部分もあると思いますね。それが音楽に反映されているかもしれません。

── ショパンはあなたにとってどんな存在ですか?

 とても特別な作曲家です。他の作曲家よりも、より理解ができるような気がします。彼の音楽からは、深い愛情を感じますし、心を動かされます。

── ピアノはカワイを選びましたね。どんなところが気に入りましたか?

 とてもフレキシブルで、整ったピアノでした。他に、すごくいい音がするけれど暗すぎる印象のピアノもあって、それだと若いショパンの作品がうまく表現できないと思って。
 カワイのピアノは、ブライトな感じと暗い感じがちょうど良くブレンドされていて、明るい曲、シリアスな曲の両方に向いていると思いました。

── 6位に入賞して、いかがですか?

 もちろんものすごく嬉しいです!
 ファイナルに行けただけでも嬉しいのに。僕はまだ若いのでもっと経験を積まないといけないと思っています。これから音楽家として、ピアニストとして、もっと成長していきたいです。

高坂はる香 Haruka Kosaka
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体で記事を執筆。また、ポーランド、ロシア、アメリカなどで国際ピアノコンクールの現地取材を行い、ウェブサイトなどで現地レポートを配信している。
現在も定期的にインドを訪れ、西洋クラシック音楽とインドを結びつけたプロジェクトを計画中。
著書に「キンノヒマワリ ピアニスト中村紘子の記憶」(集英社刊)。
HP「ピアノの惑星ジャーナル」http://www.piano-planet.com/