
第9回の仙台国際音楽コンクールは、ヴァイオリン部門が5月24日から、続いてピアノ部門は6月14日から始まる。世界各地から期待と緊張を胸に若者たちが集まる。映像による予備審査を終えたヴァイオリン部門審査委員長の堀米ゆず子に、第9回コンクールへの期待を訊いた。同部門には世界各地から193名の申し込みがあり、41人が仙台でのステージに進むことになった。
「予備審査では、新しい世代の台頭、特に中国からの参加者のオリジナリティに溢れた演奏が印象的でした。おそらく海外で経験を積んだ世代が先生となり、若い奏者を育てているのだろうと思います。その人たちが仙台でどんな演奏をしてくれるのか、興味深いです」
本コンクールでは、予選、セミファイナル、ファイナルと計3つのラウンドで審査が行われる。
「ただ、今回は課題曲をちょっと絞りました。すべてのステージでオーケストラと共演するという点は同じですが、予選ではモーツァルトの『アダージョ K.261』と『ロンド K.373』を指揮者なしで演奏し、そこにイザイの無伴奏ソナタ第5番も加わります。セミファイナルは、メンデルスゾーンとドヴォルザークというロマン派を代表する協奏曲から1曲を選び、さらにコンサートマスターとしてモーツァルトの『カッサシオン K.63』のアダージョ楽章とブラームスの交響曲第1番・第2楽章の指定部分を演奏するという課題です」
そして本選でもモーツァルトのコンチェルトから1曲選択、それ以外はヴァイオリン協奏曲の王道とも言える名曲のなかから1曲を選んで演奏するので、全ステージを通してモーツァルトの比重は大きい。
「コンテスタントの皆さんには、自分の目標を持ち、コンクールを通して演奏家として成長してほしいと常々思っています。その前提として、予選から楽譜をよく読み込んできてほしいです。イザイも自由なようで、実は楽譜に細かく指示が書き込んであり、それをどこまで理解して表現するかに期待します」
モーツァルトの「ロンド」や「カッサシオン」がコンクールの課題曲となるのはかなり珍しい。
「モーツァルトでは自分のソロの部分だけでなく、オーケストラがそこでどんな動きをしているのか、という点も聴きながら演奏してほしいですね」
筆者の個人的な体験だが、かつてヴァイオリニストのシャーンドル・ヴェーグがカメラータ・アカデミカ(ザルツブルク)を指揮した演奏、録音がモーツァルトの解釈の基本を教えてくれた。前回のコンクールも真摯に作品に取り組む若者たちの演奏が聴けたが、第9回ではどんな才能が現れるのか。モーツァルトを含む名作に向き合うその姿に出会えるのが楽しみである。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ2025年4月号より)
第9回仙台国際音楽コンクール
ヴァイオリン部門 2025.5/24(土)~6/8(日)
ピアノ部門 6/14(土)~6/29(日)
日立システムズホール仙台
問:仙台国際音楽コンクール事務局022-727-1872
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