円熟味を増す名手、松岡淳が奏でる“ピアノの交響楽”

 壮麗な音色と堅牢な構築力で聴き手を魅了するピアニスト、松岡淳。ブラームス国際音楽コンクールピアノ部門初の邦人優勝者で、国内外のオーケストラとの共演も重ねてきた実力派である。彼が2019年からスタートしたリサイタル「ピアノの交響楽」は、今年で5回目を迎える。“たった一人のシンフォニー”と銘打つだけに、毎回ベートーヴェン、リスト、ラヴェルらによる音楽的スケールの大きな作品を届けてきた。

 今回もリスト「リゴレット・パラフレーズ」、ショパンの「幻想ポロネーズ」など華やかな曲目が並ぶ。そして例年の注目プログラムであるリスト編曲のベートーヴェンの交響曲が今年も披露される。5作目に取り上げるのは交響曲第8番 ヘ長調。ベートーヴェンの全9作の交響曲の中では比較的コンパクトな作品だが、作曲家自身が大変気に入っていたことでも知られている。明るく颯爽とした曲想を生かしたリスト版を、松岡がどのような響きで聴かせてくれるのか楽しみだ。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2025年4月号より)

松岡 淳 ピアノリサイタル ピアノの交響楽 vol.5
2025.6/4(水)19:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677 
https://www.proarte.jp