クァルテットの魅力ぎっしりの60分
2015年に第一生命ホールがスタートさせた、音楽ライター・山野雄大による「雄大と行く 昼の音楽さんぽ」は、お昼の時間帯に室内楽を気軽に楽しもうという企画だ。ベテランから若手まで、様々な編成のラインナップで山野のプレトークも含め1時間ちょっとというコンセプトが好評を得ている。
12月に開催される第28回は弦楽四重奏の雄、クァルテット・エクセルシオが登場する。弦楽四重奏には歴史的に名曲が多いのに、日本ではなぜかあまりメジャーではない。すでに四半世紀に及ぶ活動歴の中で、エクはこのジャンルのトップランナーとして東京・京都・札幌での定期演奏会を核に全国各地で、古典から現代まで名演を幅広く聴かせ、ジャンルそのものの普及、啓蒙にも努めてきた。
今回のプログラムもそんなエクのホスピタリティーがあふれている。《フィガロの結婚》序曲、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」第1楽章(モーツァルト)と誰もが知っている名旋律で始まり、「ピッツィカート・ポルカ」の弾むウィットを、明るく溌剌とした「岸辺のモリー」(グレインジャー)へつなぐ。チャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」のしっとりとしたハーモニーで温かくなった後は、ウィーンのメロディーメーカー、ヴォルフの「イタリア風セレナード」。さらに日本のメロディ(幸松肇「弦楽四重奏のための日本民謡より」)を経て、弦楽四重奏の聖典ともいうべきベートーヴェンの「ラズモフスキー第3番」終楽章へとなだれ込む。クァルテットの魅力をぎゅぎゅっと濃縮した60分だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年11月号より)
2021.12/8(水)11:15 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702
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