
右:松田理奈 © Akira Muto
2021年春に名称を変更して、今春で5年目に入る「富士山静岡交響楽団」。そのシーズン開幕となる5月定期は、首席指揮者の高関健が登場し、ロシアとソヴィエトの名作曲家たちのプログラムを聴かせる。
前半は民族的な香りを味わう。まず、ロシア音楽の祖、グリンカの「スペイン序曲第1番」。「ホタ・アラゴネーサ」の陽気な旋律と打楽器のリズムが楽しい一篇だ。続いて、グラズノフのヴァイオリン協奏曲。後期ロマン派の甘美な作風による、濃厚な情趣とヴァイオリンの魅力あふれる一曲で、舞曲的なフィナーレにはバラライカを模した奏法も現れる。ソリストは早くからソロ活動を展開し、近年ますます充実の度を深める松田理奈。本作は彼女が熱望したとのことで、楽団のウェブサイトにもその意気込みのほどが掲載されており、大いに期待したい。
後半は一転して重厚に。ソ連の体制に翻弄されながらも生き抜き、今年没後50年を迎えたショスタコーヴィチの交響曲第10番が演奏される。スターリン没年に完成した大作で、前半2楽章は重苦しくも劇的な音楽、後半2楽章には自らの音名象徴を駆使するなど、公私にわたるメッセージを込めると同時に、シンフォニーとして堅固な構成で完成度も高く、かのカラヤンが唯一録音したショスタコーヴィチ作品でもある。そのカラヤンのもとで研鑽を積んだ高関が紡ぐ第10番は、いまこそ取り上げたいメッセージと、高関と静響の充実ぶりを示すものとなるだろう。静岡と浜松の2公演、注目となる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年4月号より)
高関 健(指揮) 富士山静岡交響楽団
第130回 定期演奏会〈静岡公演・浜松公演〉
2025.5/24(土)13:30 静岡市清水文化会館マリナート
5/25(日)13:30 アクトシティ浜松(中)
問:富士山静岡交響楽団054-203-6578
https://www.shizukyo.or.jp