New Release Selection

【CD】渡辺俊哉作品集 あわいの色彩

 「音の綾Ⅲ」「あわいの色彩Ⅱ」は音の数を絞り淡々と進む。聴き手の注意は音と音との関係性やその佇まいに集中し、いつしか自然の声とか宇宙の響きに耳を傾けているような瞑想的な気分へと導かれる。「声の痕跡」は性格の異なるトロンボーンとピアノが対峙する中、音の身振りの差異が明らかにされる。それは前2曲に比べ、遥かにヒューマンで…

【CD】ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲/大江馨&上岡敏之&新日本フィル

 百花繚乱とも言いうる有望な若手ヴァイオリニストたちの中でも、その力量の点で最右翼の1人たる本年26歳の逸材、大江馨のデビュー盤はドヴォルザークの協奏曲。年齢に似合わぬ風格ある表情と類稀なる美音を駆使したその演奏は、「若手にしては・・・」などという留保抜きでこの曲の録音史に独自の地位を占める名演奏だと言って差し支えない…

【CD】ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番/エルデーディ弦楽四重奏団

 後期弦楽四重奏曲シリーズ第3弾は、前作・第11番から14年の時を経て作曲された第12番。冒頭のファンファーレのような和音は重厚に響き、対位法的な両主題はごくごく自然に流れてゆく。和音との対比が美しい。長大な緩徐楽章で聴かれる各変奏では、アンサンブルに粘着力があり、声部ごとの絡みがとてもきれい。特に主調変イ長調に対して…

【CD】マーラー:交響曲第3番 ニ短調/小泉和裕&九響

 この演奏会を聴けた福岡の聴衆は、さぞや満足して会場を後にしたことだろう。九州交響楽団と、2013年から音楽監督を務める小泉和裕による、マーラー最長の大作、交響曲第3番。19年7月のライヴ録音ながら、驚くべき精度のアンサンブルで、すばらしい演奏を実現した(わずかにずれる箇所も臨場感あふれて好感)。バランス明晰な響きで細…

【CD】MY FAVORITE THINGS/SiriuS

 夜空でひときわ輝く連星シリウスに因んで名付けられた、揃って180cm超えの美男声デュオのデビュー盤は、オペラの世界で最高の好敵手であるテノールとバリトンがミュージカルの名曲を歌い継ぐ魅惑のアルバム。セクシーなハーモニーが聴き慣れた曲も馴染みのない曲もときめかせる。英語歌唱にこだわり〈チキ・チキ・バン・バン〉等がオリジ…

【CD】上野優子リサイタル with FAZIOLI スカルラッティ・ドビュッシー・プロコフィエフ

 上野優子は、楽曲から様々な色彩を引き出すことが可能な変化に富んだ音色と確かなテクニックを兼ね備えたピアニスト。全6回の公演で使用するピアノを変えながらプロコフィエフのソナタを全曲演奏するシリーズを行っており、本盤はその第2回の模様を収録。ファツィオリを使用し、プロコフィエフの第3番、第4番のソナタにスカルラッティのソ…

【CD】月光 ベートーヴェン・アンソロジー

 生誕250年という一大アニヴァーサリーを味わうには、こういう穏やかなアルバムもいい。マイスター・ミュージックによる名演奏家たちのベートーヴェン録音から、作品番号のない愛らしい初期作品から中期の傑作、後期の名品まで、工夫された選曲でアンソロジーが編まれた。2月に亡くなったサンティ指揮の交響曲の一部が聴けるのはうれしいし…

【CD】ノヴェレッテン シューマン ピアノ作品集Ⅺ/小林五月

 2005年からシューマンのピアノ独奏曲全曲演奏会を開催し、並行してCD収録を行っている実力者・小林五月のシリーズ11枚目のアルバム。彼女は全8曲を明快に表現し、明暗や動静をはじめとする様々な陰影を見事に描き分けている。これは確かな技術の中で知性とパッションが絶妙な均衡を保った演奏ともいえようか。全曲にわたって聴き応え…

【CD】エネスク:ヴァイオリン・ソナタ第3番、バルトーク:同第1番/戸田弥生&エル=バシャ

 文字通りの入魂の演奏である。東欧の民族色を湛えたモダンな2曲を、戸田弥生とエル=バシャのコンビが凄まじい集中力で弾き切った。「ルーマニアの民俗様式で」という副題の付いたエネスクのソナタはロマを想起させる節回しが特徴的だが、ヴァイオリンはフレーズの隅々に隠れた民衆のスピリットを余すところなく現前化する。ピアノが控えめな…

【CD】シューベルト:美しい水車屋の娘/ディートリヒ・ヘンシェル&岡原慎也

 現代ドイツを代表する名バリトンで、リート解釈・歌唱の第一人者であるディートリヒ・ヘンシェル。フィッシャー=ディースカウ亡き今、その正統な後継者と目されている名手が、「美しい水車屋の娘」の20年ぶりとなる再録音に臨んだ。言葉ごとに施される、音楽的かつ理知的な表情づけ。過剰な感情移入を排するからこそ、シューベルトの旋律の…