New Release Selection

【CD】松平頼曉 声楽作品集

 言葉は文字としての相、音としての相、意味としての相と、器楽にはないいくつかの特性を持っている。ここに収録された6作品のテキストのそれぞれに、松平頼曉は異なる相から入りこみ、言葉と音楽の関係性に着目しながら敷衍していく。それは詩句の朗読に薄く音を付けた風情の「歌う木の下で」、隠れキリシタンの旋律を編みなおした「反射係数…

【CD】星月夜/小島弥寧子

 小島弥寧子は武蔵野音大大学院などに学び、欧米で腕を磨き、国内外で活躍する実力派オルガニスト。今回の録音は、軽井沢の小ホールに設置された古様式の楽器を弾き、17世紀スペインの作品を大枠に、国際的に活躍する作曲家、柿沼唯による「6つのプレリュード」などを挟み込んだ、興味深いラインナップで臨んだ。本来はチェンバロのために書…

【CD】日本歌曲 詩人と作曲家の対話―大嶺光洋 八十歳の表現―/大嶺光洋&宮崎芳弥

 教育活動や出版社勤務など、様々な社会人経験を積みながら鍛錬を重ね、地道に演奏活動を続けてきた大嶺。歌に対するひたむきな愛情と積み重ねてきた多様な経験は着実に歌へと昇華されており、傘寿を過ぎてなお豊かに響く歌声、そして歌詞の一つひとつに“重み”や“深み”を感じる歌唱を届けてくれる。日本歌曲を代表する作品が集められたこの…

【SACD】LIVE from MUZA! モーツァルト・マチネ 第40回/原田慶太楼&金子三勇士&東響

 ニコニコ生放送による配信で話題を呼んだ東響無観客公演のライブ録音第2弾。活躍顕著な指揮者・原田慶太楼のデビューCDでもある。「モーツァルト・マチネ 第40回」の全プログラムを収録した内容は、3ジャンルが揃った“モーツァルト中期の佳きエッセンス”の趣。フルート四重奏曲は明朗・優美なソロが魅力的だし、「ハフナー」は原田の…

【CD】“八木節” 幸松肇編:弦楽四重奏のための日本民謡集 第1集〜第4集/クァルテット・エクセルシオ

 我々がよく知る民謡のアレンジとして楽しいし、それぞれが単独の芸術作品という斬新さも持っている、幸松肇の名編曲。“民謡を弦楽器で弾きました”という次元とは一線を画し、日本民謡と西洋弦楽器の表現語法を突き詰め、クラシックの歴史の文脈で再創造した、いわばバルトークの境地に近づくもの。16曲中前半は土俗性や素朴さが強く、後半…

【CD】バルトーク:ピアノ作品集/井出久美子

 ブダペストのリスト音楽院に留学、同地で名ピアニストのシェベック・ジョルジュから教えを受けた井出久美子の満を持してのバルトーク。例えばシャーンドル・ジェルジやゾルタン・コチシュなどのバルトーク演奏に接するとそこには独特の間合いや節回しが明確に感じられるが、ここでの井出の演奏にもまたそれらとは違った意味ではっきりとローカ…

【CD】ジョン・ウィリアムズ ライブ・イン・ウィーン

 ウィーン・フィルからの10年越しのラブコールで、ハリウッドの巨人ジョン・ウィリアムズとの共演が実現。黄金の音色で奏でられる彼の楽曲の魅力的なことといったら! 今年88歳、これがヨーロッパ指揮デビューだったが、楽員が心から共感して楽しんでいるのが伝わる。ハリウッド音楽の祖はウィーンから渡米したコルンゴルトであり、もとも…

【CD】夕べの詠 ショパン:ノクターン愛奏曲選集 /角野怜子

 東京藝大、ウィーン国立音大を経て長年ドイツに在住し、角野裕とのピアノ二重奏等で活躍している角野怜子の初のソロ・アルバム。有名作中心の9曲が収録されたショパンのノクターン選集で、美しいタッチと的確な構築が光る好演が終始展開されている。作品9の3曲や遺作の第20番等の甘美な楽曲における品性を湛えた味わい深さや、第7番嬰ハ…

【CD】鍵盤音楽の領域vol.10 バッハからモーツァルトへ/武久源造&山川節子

 18世紀の音楽の国際感覚がヴィヴィッドに伝わってくる一枚だ。J.S.バッハはドイツ国内にあってイタリアやフランスの流行を輸入し、自分なりに解釈した。いくら巧みでも舞曲のステップに滲み出てしまうドイツ的な重々しさ。一方、イタリアで学びイギリスで活躍した息子のJ.C.バッハは、明るく軽やかで、エレガント。どんな人にも訴求…

【CD】J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータ/アテフ・ハリム

 世に“バッハの無伴奏”の録音は数あれども、これは唯一無二だ。揺らぐ音程、湾曲したリズム、振れ幅の大きなテンポ。大理石の滑らかさではなく、無垢の木が持つ、荒々しくも温かな手触り。若くしてフランス国立管弦楽団のコンサートマスターを務め、シェリングら巨匠の薫陶を受けた鬼才ヴァイオリニスト、アテフ・ハリム。70歳を目前にして…