New Release Selection

【CD】ことばのない詩集/高橋悠治

 高橋悠治は昨今、ますます洋の東西や時代、様式が意味をなさなくなってしまう自在の境地に遊んでいるように見える。本アルバムにも、その精神は如実に表れている。奇妙にスウィングするクープラン「花開くユリ」の千鳥足に魅せられてついていくと、いつの間にかマリピエロの幻想の世界へと足を踏み入れている。高橋の即興的な自作「空撓連句」…

【CD】J.S.バッハ:トッカータ vol.2/家喜美子

 何と、清冽な響きだろう。当盤の第1音を聴くだけで、あなたの耳は虜となってしまうに違いない。家喜美子は、歴史的鍵盤楽器の先駆者レオンハルトの薫陶を受けた後、30年以上にわたってヨーロッパで活躍し、現在は日本を拠点に精力的な演奏活動を続ける。20代前半の青年作曲家がしたためた、覇気あふれる「トッカータ」を源流に、バッハの…

【CD】ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第3番&第9番/ウェールズ弦楽四重奏団

 第3番冒頭の2音だけで独特の空気を作り上げてしまう。ウェールズ弦楽四重奏団のベートーヴェン・シリーズ第3弾は、最初に書かれた名品第3番と、中期の傑作第9番の組み合わせ。開放弦やフラジオレットを多用する澄み切ったトーン。1拍ごと、1音ごとに自在に伸縮するテンポ。4人の図抜けた和声感と技術、ストイックな鍛錬と研究なしには…

【SACD】ザレンプスキ:ピアノ作品集/江崎昌子

 江崎昌子はポーランドの作曲家の作品のスペシャリストとして活動の幅を広げ続けるピアニスト。輝きと豊かな響きに満ちた音色によって多くの作品を美しく彩り、自然かつ表情豊かなルバートは、作品の隠された魅力を引き出している。そんな彼女が今回リリースしたのはポーランドの知られざる作曲家、ザレンプスキ。彼の作品は先輩であるショパン…

【SACD】J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(ヴァイオリン版/世界初録音)/レイチェル・ポッジャー

 ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラではない。正真正銘ヴァイオリンによって演奏されたバッハの無伴奏チェロ組曲である。編曲はポッジャー自身が担当、5弦チェロで高域が多用される第6番以外は全て1オクターヴ+5度高く調弦されて演奏されている(なお、第6番では幾つかの低域フレーズでヴィオラのC弦による音が編集によって付加)。実際に…

【CD】souvenirs〜記憶〜/岡本愛子

 フランス近現代の音楽に愛を注ぎ、40年にわたる演奏活動を通じてその魅力を伝え続けてきた岡本愛子。本アルバムは、その軌跡の一端を収めた、楽しくも貴重なライヴ録音である。メシアン生誕100周年、デュティーユの特集、そしてパリのソリストたちとの室内楽シリーズのリサイタルから選りすぐりの録音が並べられる。フルートと共演する「…

【CD】テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア/川田知子

 独バロックの巨匠テレマンの「無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア」は1735年、作曲者自身の手で出版され、当時の大ヒット作に。しかし、今ではバッハの一連の無伴奏作品に取り組むため、必要な技術を習得する“前段階”の作品と位置付けられがちだ。だが、国際的に活躍する名手・川田知子は、時代特有の様式感を踏まえつつ、モ…

【CD】Masters, Masterworks/小森邦彦

 録音もマリンバの運動性よりは奥深い鳴りに焦点を当てているからだろうか、第一印象は少し地味に感じた。が、師や作曲家、同僚との交流などを記したライナーノートを片手に聴き進めるうちに、作品をその技術的なタフさを感じさせず、最も美しい形で現前させたいという小森邦彦の思いが伝わってきた。例えば「ナイトラプソディ」は多数の声部を…

【CD】ベートーヴェン × シューベルト/ジョン・健・ヌッツォ

 2000年にウィーン国立歌劇場デビューを果たし、NHK大河ドラマ『新選組!』テーマ曲の歌唱などでクラシック・ファン以外にも抜群の知名度を誇るテノールの新譜。近年はドイツ歌曲の歌い手としても定評のある彼が、17年に名古屋で行った公演のライヴ録音盤。前半は“楽聖”ベートーヴェンによる愛の歌で、大作「遙かなる恋人に寄す」の…

【CD】天の舞 Celestial Dance/Bach Artists Japan 匠

 N響、東響の首席奏者等、日本を代表する5人の名手が集結した、“トランペット五重奏&四重奏のみ”のアルバム。グループ名の「Bach」は、同楽器のトップブランドたる「バック」を意味している。つまり5人はその愛用者であり、本作も統一感のある音色が大きな特徴をなしている。アメリカ人作曲家のオリジナル中心の選曲には一切の媚びが…