鬼才ピアニスト、トーマス・ヘルが日本の気鋭奏者たちと4人の作曲家に対峙

左上より:トーマス・ヘル ©藤本史昭/山根一仁 ©T.Tairadate/谷口知聡 ©ferranteferranti
周防亮介 ©松尾淳一郎/水野優也 ©Yuji Ueno

 ドイツ出身の鬼才ピアニスト、トーマス・ヘルは、モダンな音楽にとりわけ造詣が深い。それは輝かしさと切れ味を併せ持つ音やシャープな感性が最大限に発揮されるからだ。2016年トッパンホールでのリゲティ「エチュード全曲」はその好例。同ホールでは18年と22年にも鮮烈な印象を与えている。

 そこでトッパンホールは5月に「トーマス・ヘル プロジェクト」を開催する。初日は「リゲティ&バルトーク」。ヘルの看板たるリゲティ初期の傑作ピアノ曲「ムジカ・リチェルカータ」に、リゲティが敬愛したバルトークのヴァイオリン・ソナタ第2番および2台ピアノと打楽器のためのソナタが続く内容だ。ヴァイオリンは成長顕著な山根一仁。2台ピアノの相方を、オルレアン国際ピアノコンクールで第2位を受賞後、欧州で演奏活動を展開する谷口知聡が務める。彼女は、当ホールでのマスタークラスでヘルと出会い、親交を重ねているというからパートナーにまさしく打ってつけだ。

 2日目は「J.S.バッハ&ショスタコーヴィチ」。旧ソ連の大家のピアノ三重奏曲第2番と室内楽版の交響曲第15番を、美しく煌めくバッハのトッカータ ニ長調が繋ぐプロである。ピアノ三重奏曲は20世紀屈指の名作だし、交響曲はオケとは異なる透明感や明晰さが魅力。こちらは、当ホールでの実績も光るヴァイオリンの周防亮介とチェロの水野優也が共演し、両日共に、竹原美歌、L.ニルソンといった打楽器の達人も出演する。

 これは、ヘルの演奏も、彼に触発された俊才たちの化学反応も楽しみな、トッパンホール以外ではまず体験できない公演だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2025年4月号より)

トーマス・ヘル(ピアノ)プロジェクト 2025 I・II
I リゲティ&バルトーク
 2025.5/26(月)
II J.S.バッハ&ショスタコーヴィチ 5/29(木)
各日19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com