新国立劇場《死の都》ゲネプロ・レポート

　12日から新国立劇場で上演されるコルンゴルトのオペラ《死の都》のゲネプロ（最終総稽古）が9日に行われました。

　コルンゴルトがわずか23歳で作曲した《死の都》の音楽は、年齢からは信じられないほど卓越したオーケストレーションによる絢爛な響き、甘美なメロディにあふれています。リヒャルト・シュトラウスとプッチーニを合わせたような華麗な音楽は、オペラ初心者でも存分に楽しめるもので、特に、最大の聴きどころのひとつ、第1幕〈マリエッタのリュートの歌〉は陶然とする美しさ。

　主役のパウルとマリエッタは、いずれも大変な技術が要求される難役ですが、今回パウル役のトルステン・ケール、マリエッタ／マリー役のミーガン・ミラー、共に最高レベルの歌唱を聴かせ、観るものをドラマに引き込みます。ケールは今回の公演中に、パウル役を演じた回数がなんと100回になるそうで、もはやパウルそのものと言えるでしょう。一方のミラーは今回が初役にもかかわらず、歌唱はもちろんのこと、コケティッシュな魅力もふりまいて魅了してくれます。

　そして、特筆すべきは、ヤロスラフ・キズリンクの指揮と東京交響楽団の演奏の素晴らしさ。キズリンクは凝りに凝ったコルンゴルトのスコアをバランス良く整え、魅力的な指揮ぶりで生彩に満ちた演奏を引き出し、抒情的な場面は夢のような響きを作り上げます。
　
　フィンランド国立歌劇場で好評を博したカスパー・ホルテン演出による幻想的な舞台の美しさも見どころです。亡くなった妻マリーが、パウルにだけ見える黙役として登場しているのも演出の特徴。舞台にちりばめられたマリーの遺品はすべて細かくリアルに作られ、その空気感も印象的です。

　大事な人を忘れられない、忘れたくない…。死別以外にも、人、物、思い出などについて、深い喪失感や、どうしても区切りをつけられない、といった経験は観る人それぞれにあるでしょう。オペラの最後、パウルがついに妻の死を受け入れて〈リュートの歌〉を歌うとき、そうした思いも涙と共に浄化されるに違いありません。
　全てに最高水準のキャストがそろった今回の《死の都》は、新国立劇場の今シーズンの白眉と言えるでしょう。

（文：M.Hayashi 撮影：M.Terashi/TokyoMDE）

新国立劇場 2013/2014シーズン
エーリッヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト《死の都》全3幕
【ドイツ語上演／日本語字幕付】

●新国立劇場
●新国立劇場《死の都》特設サイト

2013/2014 Season New production
Die tote Stadt
March 2014 12-24

Music by Erich Wolfgang Korngold
Opera in 3 acts
Sung in German with Japanese supertitles
Opera Palace

Conductor Jaroslav Kyzlink
Production Kasper Holten
Revival Director Anna Kelo
Scenery Design Es Devlin
Costume Design Katrina Lindsay
Lighting Design Wolfgang Göbbel

■Cast
Paul Torsten Kerl
Marietta/Marie Meagan Miller
Frank/Fritz Anton Keremidtchiev
Brigitta Yamashita Makiko
Gaston/Victorin Ohara Keiroh
Juliette Hirai Kaori
Graf Albert Itoga Shuhei
Lucienne Ono Misaki

Chorus New National Theatre Chorus
Orchestra Tokyo Symphony Orchestra

The New National Theatre, Tokyo
Box Office
+81-3-5352-9999 (10:00 am-6:00 pm, English available)

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