いずみホール・オペラ 2024 佐藤正浩プロデュース 《真珠とり》(演奏会形式)

フランス・オペラの匠が鮮やかに描くビゼーの“もう一つ”の名作

左より:佐藤正浩/森谷真理 ©タクミジュン/宮里直樹 ©深谷義宣

 「コンサートホールならではのオペラ上演を」と、その魅力を追究してきた住友生命いずみホールのシリーズ「いずみホール・オペラ」。コロナ禍による中断を経て“復活”を果たし、森谷真理(ソプラノ)ら実力派キャストを揃えてのビゼー《真珠とり》(全3幕)を上演する。今回は、ホールの響きを最大限に生かし、音楽そのものを前面に打ち出すため、あえて「演奏会形式」での上演を選択。フランス・オペラのスペシャリストである佐藤正浩が、プロデュースと指揮を担当する。

 《真珠とり》は1863年、パリで初演。舞台は、未開時代のセイロン島(現在のスリランカ)。真珠採りの漁師たちが歌い踊る海岸で、部族の長ズルガと漁夫ナディールが再会し、旧交を温める。しかし、2人が恋敵となって訣別した要因である尼僧レイラが現れ、不穏な空気が漂う—。愛や嫉妬、自己犠牲を描く当作は、第一幕の終盤でナディールが歌うアリア〈耳に残るは君の歌声〉をはじめ、魅力的な旋律が満載。《カルメン》と比肩し得る傑作だ。

 今回は、レイラを演じる森谷をはじめ、ナディールの宮里直樹(テノール)、ズルガの甲斐栄次郎(バリトン)、高僧ヌーラバットに妻屋秀和(バス)という布陣を、ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団と神戸市混声合唱団がバックアップする。

 公演に先がけ行われた会見で、「冒頭から一瞬で心を奪われてしまうメロディが随所に散りばめられています…演奏会形式だからこそ、“音”に集中していただけるはず」とコメントした森谷。宮里が「高音域に向かうほど柔らかく歌わせるなど、ビゼー特有の技巧が要求される」と明かすと、森谷が「歌手が越えねばならない技巧の壁がある。だからこそ、やり甲斐があります」と語った。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2024年8月号より)

2024.8/31(土)14:00 大阪/住友生命いずみホール
問:住友生命いずみホールチケットセンター06-6944-1188 
https://www.izumihall.jp