びわ湖ホール プロデュースオペラ コルンゴルト《死の都》 制作発表

 1998年の開館以降、数多くのプロダクションを上演してきた日本屈指のオペラ劇場、びわ湖ホール。同館が総力を挙げて制作する「プロデュースオペラ」で、コルンゴルト《死の都》が2025年3月1日、2日に上演される。7月26日、制作発表が行われ、指揮を務める芸術監督・阪哲朗、キャストの清水徹太郎、山本康寛(以上パウル役)、木下美穂子(マリー/マリエッタ役)らが出席した。

左より:村田和彦(びわ湖ホール館長)、阪哲朗、木下美穂子、山本康寛、清水徹太郎

 エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(1897~1957)は、“神童”としてウィーンの楽壇を席巻しながら、ユダヤ系の出自のためナチスの迫害から逃れアメリカに亡命。ハリウッドで数多くの映画音楽の作曲を手がけるなど、波乱万丈の人生を送った作曲家だ。《死の都》はわずか23歳の若さで作曲され、初演から大成功を収めたコルンゴルトの代表作。日本では2014年3月にびわ湖ホールにて、故・栗山昌良演出により初めて舞台上演された。同館が誇る舞台機構を最大限に活かしたこのプロダクションを、今回は岩田達宗による再演演出で蘇らせる。

 十数年前、ドイツ・レーゲンスブルク歌劇場の音楽総監督在任中に《死の都》の指揮を経験した阪。
「音数が多い、オーケストラも大編成、主役のテノールとソプラノに求められる技量は段違い…ととにかく難しい作品です。前回取り組んだ際は、やるだけで手一杯…という感じでしたが、今はある種“批判的な”視点で、全体を俯瞰しながら掘り下げていけるのではないかと思います」

阪哲朗

 今年3月、芸術監督就任後初めて臨んだ「プロデュースオペラ」ではR.シュトラウス《ばらの騎士》を上演し、大きな反響を呼んだ。この作品を取り上げる時から《死の都》をセットにすることを決めていたと明かしつつ、本作を上演する意図を次のように語った。
「(前監督の)沼尻竜典さんによるワーグナー・シリーズが完結し、その後の時代の作品を取り上げる…となった際、ヴェリズモ・オペラが選択肢の一つになると思いますが、このジャンルでは作中で必ず人が死ぬ。《死の都》にも“死”のシーンはありますが、それは夢の中での話。最後は希望に向かって再生していきます。劇場から出たときに、“生きる”ことの喜びを感じてもらえることにつながる作品なのではないかと考えています」

 主役のパウル(テノール)、マリエッタ(ソプラノ)はいずれも大変な難役として知られている。登壇した3名のキャストは、次のように抱負を述べた。

清水「1年半ほど前、このお話をいただいてすぐ楽譜を開いたのですが、今までに見たことがないほどの音の数や出番の多さで驚きました。自分にできるだろうか…と悩んだのですが、マエストロから『オーケストラは必ずあなたにつけるから!』と力強い言葉をいただき、お引き受けしようと決心しました。普通のオペラ作品の練習であれば、本番の半年前ぐらいから始めることが多いと思いますが、この作品に関しては今年の1月から取り組み始めています。勉強を重ねるほど、一層身の引き締まる思いになります」

清水徹太郎

山本「2014年の公演では代役という形で急遽パウルを演じましたが、その時は約2ヵ月半、この作品のことだけを考え続け、とにかく走り抜けるのに必死でした。この役には、《死の都》という長大なオペラの音楽を歌い手に進めさせる力―“余白”がある、と感じ、公演を終えた後『一生のうちでもう一度やりたい!』と思っていました。この10年間で積み重ねた経験や声質の変化も活かしながら、前回より長い時間をかけしっかりと作品に向き合えたら、と思っています」

山本康寛

木下「2014年は海外にいたのですが、びわ湖ホールでの《死の都》が大成功したという評判は耳に届き、『いつか歌える機会があるかな…』と思っていたので、オファーをいただいたときにはご縁を感じました。ですが、お引き受けしてから楽譜をみて愕然! 『本当に歌えるのかしら…?』と思ってしまうほどの難曲で、1年近くずっと楽譜を持ち歩いています。
 栗山先生の演出したプロダクションにはデビュー以来何度も出演し、手取り足取りご指導いただきましたので、先生が大好きだったこの作品で歌えることを心から嬉しく思っています」

木下美穂子

 公演に先立ち、音楽評論家の東条碩夫による解説講座(全2回)や、演出家・中村敬一と声楽家・福井敬のトークによる「オペラ演出家 栗山昌良を語る」などの関連企画も開催される。演奏機会のきわめて少ない隠れた名作、ぜひ実演でその真価を確かめたい。

写真提供:びわ湖ホール

Information

びわ湖ホール プロデュースオペラ
コルンゴルト作曲 《死の都》

(全3幕/ドイツ語上演・日本語字幕付)

2025.3/1(土)、3/2(日)各日14:00 びわ湖ホール 10/5(土)発売

演出:栗山昌良
再演演出:岩田達宗
指揮:阪哲朗(びわ湖ホール芸術監督)
管弦楽:京都市交響楽団

出演(3/1、3/2)
パウル:清水徹太郎*、山本康寛*
マリー/マリエッタ:森谷真理、木下美穂子
フランク:黒田祐貴、池内響
ブリギッタ:八木寿子、山下牧子
ユリエッテ:船越亜弥*、小川栞奈
ルシエンヌ:森季子*、秋本悠希
ガストン/ヴィクトリン:島影聖人*(両日)
フリッツ:晴雅彦、迎肇聡*
アルベルト伯爵:与儀巧(両日)
*びわ湖ホール声楽アンサンブル・ソロ登録メンバー

合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル
児童合唱:大津児童合唱団

問:びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136
https://www.biwako-hall.or.jp