熱きタクトで導く三大交響曲
1990年に始まった大阪フィル真夏の風物詩「三大交響曲の夕べ」は、今年も灼熱の8月に通算33回目の公演を行う。序曲から始まり、協奏曲を経てメインの交響曲を演奏するという一般的なコンサートの流れとは違い、「未完成」「運命」「新世界より」という人気の交響曲3曲をまとめて演奏するというスタイルは、当時「美味しいところ取り!」と話題を呼んだ。
この公演を第1回目から指揮するのは小林研一郎。昨年から外山雄三、飯守泰次郎、小澤征爾と次々と巨匠指揮者が亡くなった日本の音楽界にあって、秋山和慶とともに最年長指揮者として益々活躍中だ。とはいえ、第1回当時50歳だった小林マエストロも現在84歳。全身全霊でこれらの名曲に向き合い、楽譜の行間から作曲家の声を探り、情熱的な指揮で聴く者にその魅力を届けてきた “炎のコバケン” は、34年を経過した今年も大阪フィルとともにフェスティバルホールのステージに立つ決意をした。これは聴衆の感動が約束されたということに他ならない。
シューベルト、ベートーヴェン、そしてドヴォルザーク畢生の大作をまとめて聴いた最後にアンコールとして演奏される曲は、大阪フィル16型の弦楽器が奏でる恒例の「ダニーボーイ」だ。小林マエストロが指揮する、ダイナミックレンジをいっぱいに使った祈りの音楽にも似た「ダニーボーイ」こそ、他所では聴くことができないこのコンサートだけのご褒美のような演奏。未来のことは分からない。今この瞬間、至福のひと時を楽しみたい。チケットは完売間近。急ぐしかない。
文:磯島浩彰
(ぶらあぼ2024年8月号より)
三大交響曲の夕べ
2024.8/10(土)17:00 大阪/フェスティバルホール
問:大阪フィル・チケットセンター06-6656-4890
https://www.osaka-phil.com