株式会社KADOKAWAと株式会社ドワンゴが、東京交響楽団の監修のもと行うバーチャルアーティスト開発プロジェクト「ポルタメタ」のお披露目記者会見を6月26日、ミューザ川崎シンフォニーホールで行った。会見には東京交響楽団正指揮者の原田慶太楼、開発されたバーチャルアーティストの潤音(うるね)ノクト(ピアニスト)、ポルタメタプロジェクト チーフプロデューサーの高橋薫(ドワンゴ)、同リーダーの千葉淳(KADOKAWA)らが出席した。
幅広い世代の人がコンサートに足を運ぶきっかけを作ること、素晴らしい技術を持ちながらも演奏機会や受賞歴のない人が、バーチャルアーティストとして活躍できる機会を作ることを目指し立ちあげられたこのプロジェクト。
「ポルタメタ」は、音楽用語の「portamento」と“高次元の”という意味の「メタ」をかけ合わせた造語。クラシック音楽をとりまく状況を、滑らかに音程を変える 「portamento」のように変身させていきたいという想いが込められている。
まず、バーチャルアーティスト 潤音ノクトの技術的な仕組みを説明しよう。実際にピアノを演奏する“中の人”が存在する。その全身に装着したモーションキャプチャーでピアノを演奏する動作をトラッキングし、コンサート会場のモニターに映し出されたキャラクター 潤音に投影。“中の人”が演奏する音は、会場内のスピーカーから出力され、潤音の映像とシンクロさせるというもの。
“中の人”となるピアニストは、昨年11月から今年2月にかけて行われたオーディションですでに選ばれており、審査には委員長の原田のほか、ピアニストの三舩優子、仲道祐子、田村響らがあたった。
潤音は原田の指揮する東京交響楽団とともに、フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2024のフィナーレコンサートで「ラプソディ・イン・ブルー」を演奏し、コンサートデビューを果たす。
原田によると、オーディションでは、顔、名前、性別など個人を特定する情報は公表しないバーチャルアーティストとしての活動になるので、演奏技術で“何か”を伝えられるピアニストを選んだという。
「一次は動画審査、二次で生の演奏を聴きましたが、二次に進んだ方は本当に素晴らしいピアニストばかりでした。子どもが4人いる主婦の方もいて、その方は演奏家として活動していないながらもピアノが大好きで高い技術を持っていました。
世界的に見てもプロとしてキャリアを持つにはコンクールなどのきっかけが必要。私はこのプロジェクトによってそんな方にもチャンスを与えたいと考えています」
また、潤音の演奏会デビューは「100パーセント成功する」と自信をみせる。
「今回はファーストステップ。配信コンサートの予定もあり、今後のキャリアもきちんと考えています。オーケストラとの共演はこれをきっかけに別の団体にも売り込んでいきたい。日本だけでなく海外でも活躍するアーティストになってもらいたいと思っています」
会見の途中には、テクニカルリハーサルの様子が公開され、潤音、原田、東響による「ラプソディ・イン・ブルー」が披露された。
ステージ上のモニターに映る潤音の動きは指先まで自然で、複数のスピーカーから流れる演奏音とのズレはほぼ感じられず、バーチャルとリアルが融合した新感覚の舞台となっていた。
リハーサルではスピーカーの音の出力とオーケストラの生音との聞こえ方の確認や、それぞれのスピーカーの位置調整などが行われていた。
サマーミューザのフィナーレコンサートで潤音が登場するのは、プログラム最後の「ラプソディ・イン・ブルー」のみ。コンサート全体はファンタジアがテーマ。ディズニーのアニメにも使用されたデュカスの交響詩「魔法使いの弟子」、ゴジラのテーマが現れる伊福部昭「ヴァイオリンと管絃楽のための協奏風狂詩曲」(独奏:川久保賜紀)などが演奏される。
【Information】
フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2024
東京交響楽団 フィナーレコンサート
2024.8/12(月・休)15:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
(14:20~14:40 プレトーク)
指揮:原田慶太楼(東京交響楽団 正指揮者)
ヴァイオリン:川久保賜紀◆
ピアノ:潤音ノクト(バーチャルアーティスト)*
プログラム
ムソルグスキー(リムスキー=コルサコフ編):交響詩『禿山の一夜』
吉松隆:アトム・ハーツ・クラブ組曲第2番 op. 79a
伊福部昭:ヴァイオリンと管絃楽のための協奏風狂詩曲◆
デュカス:交響詩『魔法使いの弟子』
〈Discover the Future〉
ガーシュウィン:ラプソディー・イン・ブルー*
問:ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200
https://www.kawasaki-sym-hall.jp/festa/