オーケストラの楽屋から 〜N響編〜 第2回

第2回 白井圭 早川りさこ 辻本玲

 トップオーケストラの音楽家たちはいったいどんな話をしているだろう? 「ぶらあぼONLINE」リニューアル特別企画の第2回。第1回は、盛り上がりすぎて長くなってしまったのでショート版と完全版の2つのバージョンを掲載しました。しかし、編集部の心配をよそに長い完全版の方に多くの反響をいただきました! なので第2回は最初からカットなしの完全版のみをお送りします。今回もN響のゲスト・コンサートマスター白井圭さんが、ハープの早川りさこさんとチェロ首席の辻本玲さんをゲストに迎えトークを展開。意外な素顔や驚きの事実の連続で、あっという間に時間が過ぎていきました。若返りが進むN響のフレッシュな一面をお楽しみください。

ぶらあぼONLINEリニューアル特別企画:オーケストラの楽屋から
普段なかなか見ることのできないアーティストの素顔や生の声、意外な一面などを紹介していきます。音楽家としてだけでなく、“人”としての魅力をクローズアップし、クラシック音楽をより身近に、そして深く楽しんでもらいたい、そんな思いを込めたコーナーです。
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♪オーケストラとの出会い

白井 早川さんはN響、結構長いんですよね?

早川 長いですね。今年20年目です。

白井 20年! ずっとN響ですか?

早川 その前は、N響をはじめいろんなオーケストラにエキストラで乗っていて、東京都交響楽団さんとか新日本フィルハーモニー交響楽団さんとかいろんなところをフリーランスとして渡り歩いていました。オーディションがあるというので、その時初めてN響のオーディションを受けたという形です。

白井 専属のハープというのは、どのオーケストラにも1席くらいあるものなんですか? 

早川 いや、そんなことないです。ないオーケストラのほうが多いくらいですね、まだ日本だと。

白井 どのくらいの出番があるんですか? しかも1人なわけでしょ? 誰かと交替するというわけにもなかなかいかない。

早川 N響でですか? すごく偏っていて、指揮者がフランスものとかロシアものとか現代ものを組むと、途端にひと月休みなしになっちゃうんですよね。かといって今度、モーツァルト、ブラームス、ベートーヴェンになると、ひと月休みとかに…。

白井 ハープは、オーケストラの中で、ソロとして出てくることって実はそんなにないですよね。

早川 そうですね。カデンツァとかあれば別ですけど、そうでないとやっぱり。

白井 「くるみ割り人形」なんかだとね、有名なすごく華やかなところがあるけど。

早川 そうですね。

白井 ハープってどちらかというと独奏楽器のようなイメージがあるけれども、オーケストラで弾くとなると、また全然違う感覚になるんですか?

早川 ハープのソロの曲というのはハーピストが書いた曲だったりして、いわゆる「大作曲家の作品」って少ないんですよね。そういう意味で、やはり曲に魅力のあるものをやりたいっていうのがオーケストラに入りたいと思ったきっかけの一つです。マーラーなんか、ソロの曲ないじゃないですか。

白井 たしかにね。

早川 そうすると、やっぱりいろんな色を出す楽しみというのかな。ソロ楽器でやっていた時とは違う面白さがあるので、広がるというか。自分のイマジネーションとか、見ている景色が変わってくるという…

白井 それが、また今度ソロを演奏する時にも違う?

早川 そうですそうです。全然違いますね。

白井 オーケストラをやって良かったなという感じですか?

早川 うん、本当に。今、生徒にも薦めてます。

白井 ああ、そうなんだ。でも薦めてもね、あんまり職場がないとなると…(笑)

早川 たしかに。でもフリーランスとしてやっていくには、けっこういろんなオーケストラがハープのある曲を最近やっているので。募集していないから、楽員にはなれないけれど。でも、いろんなところで助っ人として行くことは、機会としては多いんじゃないかなと思います。

白井 本当はどのオーケストラにも居たほうが良いんですかね?

早川 本当はそうだと思います。

白井 ハーピストとしては、どのオーケストラにも雇い口があると良いですよね。

早川 いいですね。

白井 辻本さんは、N響は何年目ですか?

辻本 まだ3…えっと…4か月目です。

一同 (爆笑)

早川 そっか…!!

辻本 一応、入団は去年の12月。

早川 でもその前に試用期間があったからね。

辻本 試用期間が去年の1月から始まって、その前に4~5回くらいゲストで来ました。

白井 けっこう試用期間が長かったんですね。

辻本 本当は半年だったけど3月以降は(コロナの影響で演奏会が)なくなったから、とりあえず1年ってなったけど11月に終わって。それで12月から入団。

白井 その前にも、日本フィルハーモニー交響楽団でご活躍でしたね。

辻本 日本フィルで4年くらい。

白井 その前にも、どこかのオーケストラに乗っていたということは?

辻本 学生の頃、けっこうみんなエキストラで、(大学同期で同僚の)市くんとかすごい行っていたけど、俺全然そういう話なくて。

白井 呼ばれなかった。

辻本 呼ばれなかった。

一同 (笑)

白井 学生時代にまったくオーケストラに行かなかったというのは、首席じゃなくてトゥッティとしても全然行かなかった?

辻本 そうそう。最初はもちろん、たまにねトゥッティで、それこそN響も…ちょっと色々あったから(笑)、何回か来たことあったけど。首席とかじゃなくて、トラもほんとになくて。

白井 「オーケストラで弾く」というのは、学生時代に勉強しているものとまったく違うものを求められたりするわけでしょ?

辻本 学生の頃は、ただただ面倒。朝早いし。

早川 (笑)

白井 オーケストラの授業がね。

辻本 オーケストラそんなに好きじゃなくて、正直。

白井 今でもってこと?

一同 (爆笑)

辻本 (当時は!)あんまり本当に好きじゃなくて、割とコンチェルトとか一人の華やかさみたいなのが好きだったから、演奏会を聴いてもシンフォニーは…

白井 添え物みたいな。

辻本 みたいなイメージがあった、学生時代は。留学中に、僕フィンランドとスイスにいて、フィンランドもすごい良いオーケストラがあるんだけど、いわゆるトップのベルリン・フィルとかウィーン・フィルがあんまり来ることがなくて、そういうオーケストラを聴く機会がなくて、それでちょうど「留学終わるんです」って先生に言ったら「お前そんなのも聴いてねえの?」って言われて、急いでイージージェット(格安航空会社)でベルリン行って、聴いて。その時ね「新世界」で、めちゃ良くて。

白井 ベルリン・フィル?

辻本 ベルリン・フィル。その前にツィンマーマンがコンチェルトを弾いてた。

白井 へ~。フランク・ペーター?

辻本 フランク・ペーター。俺からしたらそっちがメインやけど、そんなの吹っ飛ぶくらいオーケストラの表現の幅。やっぱすごいんだな。

白井 そこで魅せられたと。指揮者は誰だった?

辻本 ヤンソンス。

白井 ふぅん。それでオーケストラも良いなと思って?

辻本 やっぱりオーケストラは表現の幅がね、全然違う。

白井 さっきの話にもありましたね。

辻本 楽器がたくさんあるっていうのもあるだろうし。

白井 どの楽器をやっていても、オーケストラにしかできない音楽というか表現方法はありますよね。

♪音楽の流れを信じて!

白井 チェロの首席の仕事というのはどういう感じの仕事をしているんですか? 中にソロも出てきたりするけれど。

辻本 入って初めて思ったけど「こんだけソロあるんや」と思って、チェロ・ソロって。オーケストラを聴いてへんからあんまり知らなかったんけど「チェロ、こんなに美味しいんや」みたいな。ヴァイオリンってけっこう速いやつとか、けっこうトリッキーなのが多いけど、チェロのやつは割と朗々と(自分が)得意な「チェロォ〜ゥ!」みたいな感じで弾いている。それは一つの仕事であって、他には、セクションを束ねるであったりとか、オーケストラの流れを作ったり。

白井 コントラバスとはだいたい同じような動きをしていて、でも距離があれだけ離れているでしょ? そういうのって慣れちゃうものなんですか? 遠いけど近く感じるとか? 基本的に後ろは見ないわけだから、相手からは見られているけど自分はそんなに見れない。

辻本 カルテットとかピアノと一緒と弾くと、打点がわりとシャープ。でもオーケストラに初めて行った時にほんまに訳がわからんかった。初めて本当にちゃんとオーケストラに行ったのがサイトウ・キネンのバルトークの歌劇「青ひげ公の城」の時で、大混乱。やっぱり打点の広さ、あるやん。それに自分が順応するのがけっこう大変だった、最初は。

白井 たしかに、「ポン」とは出ないですもんね、オーケストラはね。

辻本 それが、オーケストラの重量であって慣れるのが大変だった。こないだ打楽器の人が、「けっこう距離がある」っていう話で、練習場で実験をしたらすごいズレていてっていうのをTwitterにあげていて…

早川 この練習場ってすごい時差あるんですよ。ハープのところで自分が気持ちよく演奏していたら絶対遅れているから、いつも録音してどれくらいの…

辻本 修正して?

早川 そう。けっこう難しいっていうか。ホールに行くと少し楽になったりするんですけど、ここは特に難しい。

白井 ホールだと、あんまり早くやらなきゃという意識はなくなるんですか?それとも多少は?

早川 多少はあります。

白井 そういう時というのは、聴いて合わせるわけじゃないから、予想して? どういう気持ちでちょっと前に?

早川 弦楽器の弓のスピードとか、「ここ前に行きたそうだな」と思ったら自分もそこにワープして、自分の体だけそこに飛んでそこに一緒にいるような気になって、これに合わせて弾くみたいな。

白井 それはストレスではないんですか? 結局、自分の耳にはとてもズレちゃう。

早川 そうなんですよ。そのズレは仕事だからしょうがない(笑)仕事だからというか、私だけが気持ちが良いとみんなは気持ち悪いから、と思うと、やっぱりそっちに寄せたほうが良いかと。

白井 なるほど。

早川 すごいそれは難しいですよ。やっぱり指揮者によっても違うし、その時のスピード感によっても違うし、メンバーの面子によっても違うし。だから毎回毎回新鮮。
お二人は、真ん中にいらっしゃるじゃないですか。指揮者のアクションにダイレクトに直結して弾けると思うんですよね。意外と、何メートルか後ろの人たちがそこについて行くのがハードっていうのはちょっとわかっていてもらえると…

一同 (笑)

早川 いや、わかっていないっていう意味じゃなくて。このオーケストラに限らずどこでもほんの少しイライラが減るかもっていうか、「なんで遅いんだろう」って思っていたとしたらね。

白井 あ〜、いやいやいや、それはね、僕も後ろで弾くことだってありましたし分かってますよ。一番後ろのプルトで弾くのってめちゃくちゃ難しいんですよ。だって、後ろから自分のやっている音は聞こえてこない。真ん中だったらまだ良いけどさ、前の音についていかないといけないっていうか。指揮者もよく見えないし。自信なくなっちゃうよね、どこで入ればいいか。

辻本 神戸で「1000人のチェロ」っていうイベントがあって、一番後ろに座って、そしたら音が前の方からダアアアアッて来るの。

白井・早川 (爆笑)

早川 ウェーブ!

辻本 ウェーブで。どうなってんのって。

早川 何を信じて弾いていいのかわからないですよね。

白井 たしかに。ハープは一人で離れたところにいて、周りとは違うことをやっているわけだけど。

早川 それこそ打楽器と同じで、出したところがもう点なんですよね、ハープも。だから責任重大というか。「ポンッ」がけっこうシビアにプレッシャーだったりするというか。

白井 今日のお二人はどちらもバスを担当、ハープも伴奏でバスを担当しますよね? どっちかと言うと、そっち(バスの動き)に上(メロディ)が乗っかって合わせていけばいいのかもしれないんだけど、「そっちが遅い」と思うよりもね。どうなんだろう、そういうふうには感じてないですか? 「メロディについていかなきゃ」っていうふうに思いますか?

早川 うん、(メロディが)動きたい方に、こっちがサポートして。

白井 ついていこうって?

早川 うん、乗っかる。乗っかるっていうか、それを引き出すようにうまく運べばいいなとは思っているんだけど。

白井 そうそうそうそう。そうすれば、時差というのもね、本当は減ってくるはず。

早川 そうですよね。

白井 (辻本に)メロディに合わせようとしている? バスに合わさせようとしている?

辻本 最初オーケストラをやり出した時、やっぱりメロディが一応主だから、ズレることがすごく怖かったし。でも途中から、時差と言っても、ここ(練習場)でも、ヴァイオリンとチェロで、ヴァイオリンは楽器があっち向いているし、音も速いし、もう既にそこで時差があるから。ずっと聴いていると後追いになっちゃうから「もういいや」って。

白井 (笑)

辻本 流れを信じるほうが大事かなと。

早川 たしかに。

白井 そうだと思う。今はどちらかというと聴いて合わせるというよりも自分がリードしていくという感じ?

辻本 というつもりで、一応。それでもズレちゃうときあるけど。

白井 最初はね。長くやっている人たちの集まりだからね。

辻本 空気感とかね。

白井 まあ、ほんとズレて良いんですよね、たぶんね。ズレていて面白いほうが、ズレていなくて面白くないよりも。

早川 うん、そうですよね。

白井 それを演奏会までにだんだん修正して研いでいって。もしかしたら「次の演奏会までに!」となっちゃうかもしれないけれど(笑)まあ、チャレンジングな姿勢というのはそういうものかもしれない。

♪N響のミライ

白井 チェロのグループは今どんな感じなんですか? 何人いる?

辻本 何人いるんだろう? 桑田さんと銅銀さんがお辞めになって、僕と新しい人が2人入ったから、たぶんけっこう雰囲気は違うかな。エキストラで来たときとか「大人の集団」って感じやったけど、今は自分とか小畠も入って。そうね、ちょっとこう、「やんちゃ」っていう感じなのかなと。

白井 そろそろ我々も40になるけど?

辻本 若手やないか(笑)

白井 いまのN響は、在京オケの中でも若い楽員が多い方みたいですよ。

早川 けっこうお辞めになった方が多いしね。

白井 どんどん変わっていって雰囲気も変わっていますか?

早川 全然違いますね。今ちょっとおっしゃった、少し若返ってキャピキャピ…うまいことおっしゃってましたよね。なんておっしゃってましたっけ?

白井 「やんちゃ」って。

早川 「やんちゃ」って言ったか、うんうん、そういう感じがしている。良い意味でね。

辻本 ありがとうございます。

早川 今までこう…良い意味で歴史がありすぎるせいか、ちょっとそれを動かす勇気をもたないと重かったですよね。う〜ん、表現が難しいな。

白井 なんとなくわかるけど。

早川 ちょっときっかけがないと動かないようなオーケストラだったけれど、今は良い意味で新しいやんちゃな血が入ってきっかけがあるとポーンとみんながそっちを向くような感じの、少し軽さが出てきたというか、そこが新しい魅力になるんじゃないかなという気はしていますけど。

白井 N響は、日本のオーケストラの中では伝統のあるオーケストラになりますもんね。

早川 長いからね。

白井 そういうのが好きなお客さんもいたら、どう思われるんでしょうね。ちょっとキャラクターが変わっていって、それこそ「N響は真面目であんまり面白くない」と思っていた人は新しいお客さんになってくれるかもしれないけれど、「伝統を守っているオーケストラが良かったのに」という人もやっぱりいるのかしら。

早川 ん〜、いるかもしれないですけど、でもやっぱり時代は変わってきているし、指揮者もどんどん若返っているじゃないですか。30年前とは違う空気になってきているような気もするから。もし昔のものがよければ昔の映像もあるし。

白井 全部録ってあるしね(笑)

早川 そこをなんとか守ろうとするよりは、新しい面白さを模索していくほうがたぶん楽しいんじゃないかなと思うんですけど。

白井 なるほどね。プレイヤーもだいたいそうやって思っているのかな。どうなんでしょう。どうですか、普段みんなと話していて、みんなもそうやって思っていそう?

早川 若い人はたぶんそういう感じだと思います。もうそろそろ世代交代で昔の方もだいぶ変わってきたので、私は良い意味で新鮮な雰囲気になっているような気がしますけどね。

辻本 昔のN響って音がある意味すごくて、ギラッとした…

白井 そうそうそう。

辻本 そういう感じは、やっぱり昔を体験している人は「今は薄い」と思われるんじゃないかなというふうに思う。

白井 20年前はどんな感じでした? 音って。もっとギラギラしていた?

早川 ギラギラというよりシビアな感じ。ものすごく細いところにみんながそこに目がけて矢を射っているような感じっていうのかな。それがうまくいった時は素晴らしいんだけど、ちょっと的からズレた時に違う魅力を持ってくるのが大変っていう感じだった。

白井 (以前のN響は)すごい厳しい音がしていた。僕も(田中)千香士先生がソロをやっている音源を聴かせていただいたことがあるんだけど、オーケストラがね、ロシアのオケなんじゃないかという、「ザーーーッ」という音をしていて。「こんな音出るのかなあ、日本のオケで」というような感じでしたけどね。すごい研ぎ澄まされていたのかも。

早川 そう、研ぎ澄まされるっていう意味!

白井 なんの曲でも合うのか? といったら、合わないかもしれないけれど(笑)

♪ハーピスト、人生三分の一は…

白井 早川さんは留学なさっていたんですか?

早川 留学はアメリカに。でも1年行っていないくらいだったので行ったと言えるかどうかですけどね。

白井 なんだかハープというとフランスの楽器という感じがしますけど。

早川 そう、フランスですごく発達したので、やっぱりフランスの作曲家が書くハープのパートというのはすごく魅力的に書かれているとは思いますね。

白井 レパートリーがフランス系だから「フランスの音楽はこうしたいな」というのは出てくるんですか?

早川 そうですね。ハープの魅力って「残り香」みたいなところがあると思うんですよね。みんなが弾き終わったところでモワンと和音が残ってるとか、ふっと香りが立つような感じ。そういうところがフランスの作品にはめちゃくちゃ楽しく描かれている。ラヴェルとかドビュッシーとか。

白井 ふ〜ん。やっぱり響くところと響かないところで演奏はずいぶん変わるんですか? 残り香っていうのを作るためにはある程度残響がないと。

早川 残響はもちろんあったほうがね、いいですけど。楽器自体が割合響くというか、中が空洞になっていて響くので、すごく残響が無いホールでもある程度は響く。

白井 いつも出番のときにはかなり早くにもう舞台の上で、ね? やってらっしゃいますよね。

早川 やっぱりチューニングがものすごい大変な楽器だなって思います。

白井 どのくらい時間かかるんですか?

早川 時と場合によって、梅雨時はずーっとやっています。ハーピストは人生の三分の一はチューニングしてるって言われてるくらい、休憩時間はあってないようなものですね。

白井 休憩時間にチューニングしなきゃいけない。

早川 そうそうそう。みなさんお茶飲みに行っている間に…

白井 確かに! ひどい話ですよね(笑)

一同 (笑)

早川 ひどい話ひどい話! ホントそうですよ。

白井 ハープ用の休憩時間をプラスアルファで作らなきゃいけない。5分延長とか。

早川 (笑)

辻本 それでちょっとオーボエが高かったらどうするの?

一同 (笑)

白井 でもそれ思ったんですけど、ピッチがだんだんズレてっちゃったりしてもハープは演奏中に直せないでしょ?

早川 直せないですね。時々、上の方が「あぁ今日はみんな高めだなあ」と思ったときは上に合わせてたりとか、弾いてない小節で。50小節休みか、ってときに合わせて。

白井 そんなことしてるんだ。へえ〜。

早川 メンバーによって違うんですよね、管楽器の。ちょっと高めに取られる方だってときは、ユニゾンがあったりするとちょっと高めにしたりと工夫したり…

白井 すごいね。そんなのオケに入らないとやらないことですよね。

早川 そうですね(笑)

白井 でもチューニングされた後に、いつもなにか確認されるみたいになんかやってらっしゃるんでしょう? あれはなにを?

早川 時と場合によるんですけど、ドミソってときに、みなさんはやっぱりミの音をちょっと低めにしたりするわけじゃないですか。でもピアノと同じように調律してると、みなさんがこだわってる真ん中の音にハモらなかったりするから、すごく目立つところは意識的に低めにしようかなとか。例えばEs-durで、調がかわらず進む「アルルの女」のメヌエットとかのときは、Es-durにしてミソシがきれいにハモるようにとか。

白井・辻本 ふ〜ん。

早川 あとは楽器の調子によっては、ペダルをこう動かす度に変わってしまうこともあるんですね。そのときには、今日は一番目立つ音がCisで出てくるからCisにしようとか。けっこう細かく、オタクっぽい感じでやっています。

白井 でも大変ね。やっぱり弾く(はじく)強さによっても変わってきますよね?

早川 そう、するどい、そうなんです。特に低弦とかはフォルテで出てくるかピアノで出てくるかで音程が変わってきちゃうので…

白井 それによっても調整しておくんですか? 先に。

早川 どっちが目立つかっていうね。コントラバスと一緒にフォルテだったら、ちょっと低めにしておくと…

白井 コントラバスとずっと一緒にピッチカートだったりしますものね。

早川 そうなんです。マーラーとかけっこう一緒に弾くところが多くて。

白井 低めにしておくと?

早川 フォルテで弾く場合はちょっと低めに合わせておくと、合うんです。

白井 ふ〜ん。そういうのは現場に行ってから、リハーサル中に修正していくものなんですか?

早川 リハーサルが始まっちゃうとどうしようもないし、実はこれだけ神経を研ぎ澄ましてチューニングしているけれども、チューニングしている瞬間に下がり始めてるんですよね。あまり意味がないといえば意味がない。47本あるから1本目から始めて47本目をやったときには1本目はもう狂っている。

白井・辻本 あ〜(苦笑)

早川 でも、みなさんが自分たちの音程をすごくこだわってとっているでしょう? 管楽器の人も。だから申し訳なくて。そこまで練習して、すごい頑張ってるのに、ハープがゆるい音程だと…

一同 (爆笑)

早川 ごめんなさーーーいって思うので、できるベストは尽くすという感じです。

白井 先に練習の前にスコアとか見たり、色々作戦は練っておくんですか? じゃあ、ここはコントラバスと一緒のピッチカートのフォルテがあるからとか、ここで何調になってこうなるから全体ではこういう調弦にしておこうとか。

早川 そうですね。

白井 すごいですね。

早川 現代曲とかわからない曲以外は、最初のリハーサルの前に一応作戦は練ってはいます。

白井 早川さんの前にもハーピストっていらしたんですか?

早川 私が入る10年前までは、オケの方いらっしゃいましたけど…

白井 しばらくいらっしゃらなかった?

早川 そう。10年間はいろんな方が来ている時期がありました。

白井 あ、そうなんですか。なんかこう伝承されたやり方とか楽譜に書いてあるのかなとか思ったんだけども。この曲はこの音を低く、とか…

早川 あぁ、それはないですね。

辻本 自分の譜面を使ってる?

早川 そうですね、コピーしてやりやすいように。ペダル記号も書かないといけないし。

白井 ペダル(の組み合わせ)ってのはいろんな方法があるんですか? 人によって違う?

早川 いや、もう出す音によって決まっているので。

白井 ということは、書いてあったほうが次の人が助かるかもしれないとか、あんまりそういうことは考えないんですか?

早川 そういう場合もあるんですけど、みんな癖があって。ペダルを踏むタイミングが、「えぇ、この人が踏むタイミングだとノイズがしちゃうじゃない」っていうところで書いてあったりするんですよ。

白井 なるほどねえ。

早川 「前の人これ気にしないでやってたのかな」とか。だけど私がそれを消して、ちょっと後ろめのほうがノイズがしにくいよとか。やっぱりみんな人それぞれ、百人いれば百通りのやりかたがある。

白井 弦楽器でもほら、指とか書いてあったり。でもチェロはあんまりないですか?

辻本 ほんとにたまに。で、二人いるから、ちょっと確認して、「ここ1の指だよね」とか。いちおう二人とも同じだったらそれを書く。でも滅多にない。

白井 でもヴァイオリンの難しいパッセージで、使い古されている楽譜のひとついいところはすごく考えられた指使いが書いてある。

早川・辻本 へえ〜

白井 そうすると自分では考えつかなかったけれども、「これはいいなあ、採用!」ってのがたまにある。そうじゃないので邪魔になる指ももちろんあるけどね(笑)

早川 消して新しく書き直したりとかは?

白井 そういう場合もあるし、もうそこは伝統の楽譜にメスをいれないで、放置しとくときもあります(笑)

♪コンサートマスターのお仕事

早川 コンマスならではの悩みってありますか?

白井 コンマスならではの悩み…。弓付けかなぁ? ボウイング一つでもやっぱり全然メッセージがね、違ったりもするから…。でもあまりにも弾きにくい弓をつけると嫌がられるだろうし。でも最初になんとなく決めなきゃいけないじゃない。それは、悩みというか…

早川 責任重大なお仕事の一つ?

白井 うーん。それで結局全部変更になる場合もありますけどね(笑)指揮者の考えによっては全然それがそぐわなかったりもするから。

早川 時々みんな消しゴムで消してるのは。

白井 そうそう。指揮者のテンポだったり、フレージングで僕が思っていたのとまったく違うアプローチだったりするとまた変えなきゃいけない。だから本当は指揮者が弓付きのパート譜を持ってきてくれれば一番いい。

辻本 すごい古い譜面があるやん。もう破れてセロハンテープで貼ったり。そういう譜面の弓変えるのって結構勇気いらへんの?

白井 そんなにねぇ、それは最初に(N響に)来たときにみんなが「弓、全然変えていいと思うよ」と言ってくれたから「あ、いいんだ、変えて」って思ったことはあるかも。練習が一回のときに変えたりしたらちょっと顰蹙(ひんしゅく)だと思うけど。それこそ新しい時代のっていうお話もあったけど、いろんなアプローチを試していった方が引き出しも多くなるような気がするし。

早川 発見する楽しさもある。

白井 うん、そうね。誰もやらない、例えば今度やるシューマンも普通はたぶんターンタタッタッタン(Π Π V V ボウイング記号:ダウンダウンアップアップ)って弾くでしょう? でもヤーンタタッタってやるかダーッダダッダっとかさ、本当はラーンタタッタッタン(Π V Π V)でしょう。でも何人くらいがそのこだわりに気づいてくれるかはわからない。

一同 (笑)

♪他の楽器への憧れ

白井 オケをやっていてすごく楽しかったなあ〜、やってよかったな、って、さっき二人ともいろんなレパートリーというか、作品の表現がすごいって話があったけれども。これはソリストじゃなくてオケをやってよかったなあって、辻本さんありますか?

辻本 一つは、金管とかとぶっちぎった音量で弾いているときがすごい気持ちいい。

白井 あ〜ユニゾンとか?

辻本 ぶわぁーーーっみたいな。なんていうか、その芳醇な音というか。ショスタコとか。それはそれで楽しくて、やっぱ大勢いる中での静寂。オケならではのかな、そういうのは楽しいけど。でもやっぱりいろんな楽器があるっちゅうのは、今までソロで勉強してたらそういうことはなかった。

白井 オーケストラの中で特に好きな楽器ってのはありますか?

辻本 クラが好き。パンデミック中クラ教わってた。

白井 そうなの!?

早川 ええ〜! すごい持ってたんですか? 楽器

辻本 ええとね、奥さんの実家に楽器があって。山本正治先生がなんかちょっとオンラインレッスンしてくれてて。

白井・早川 ええ〜〜〜!(笑)

辻本がクラリネットを演奏している動画鑑賞中

辻本 先生の誕生日だったの。(曲/♪ハッピーバースデー)

早川 すごーーい!

白井 結構いい音してる。

早川 うんうん。おお〜すごい! じゃあなんか吹きながら…

白井 ちょっと無理でしょう(笑)指が足りない(笑)もとから好きだったんですか?

辻本 もともと音が好きで。ええなあ〜っと思って。

白井 じゃあピアノも練習すればブラームスのクラリネット・トリオがそのうち弾けるようになるね。

一同 (爆笑)

辻本 でも、もうやってへん…

白井 なんで?

辻本 忙しくて…。楽器持つときも痛いし唇も痛くなるし、(マウスピースを)噛まなあかんから結構痛い。

白井 噛む?

辻本 下手くそなんだろうけども、なんか噛んでここにあてるからけっこう痛い。

白井 今忙しいからって言ってたけど、オーケストラはじまって準備は家でも時間かかりますか?

辻本 最初は全部わかってないと不安で。ほんとにスコア見まくって。それに俺ソルフェージュが得意じゃないから、一回譜面で見てないと聴いただけじゃあんまりわからんところがあって。最近は指揮者をうまいこと使えるようになるというか。あんまりわかってなくても棒の一振りで、例えば次のリズムがわかるとかだったり。

白井 逆に言えば今までは指揮者はほとんど関係なかったっていうこと?(笑)

辻本 いや、そういうわけでは…(笑)

一同 (笑)

辻本 わかってないと不安だった。ほんとに時間がかかったし、あとはやっぱりパターンみたいなのがあるやん。音楽の作りのパターン。オケ入ったら触れる曲の数が尋常じゃない量増えてくるから、譜面の見方っちゅうもんが変わる。

白井 (早川に)他に好きな楽器ありますか?

辻本 チェロ以外に。

白井 なんでチェロ以外(笑)

早川 トランペットね、もしすっごい上手になれますよーっていう、魔法をもらったらトランペットを吹いてみたいかな。

白井 また全然違うキャラクターの楽器だと思うけど、それはなぜ?

早川 すごくこう、みんなの空気をバシっと、すごくうまく吹くと一つになる、集中させる音がするじゃないですか。研ぎ澄まされたカッコいい、野球でいったら走るボールみたいな感じの。なんて言うんでしょうか、語彙が少なくてすみません(笑)かっこいいんです。

白井 すごく説得力がある。

早川 一吹きで「参りました!」っていう。

白井 そういう楽器ですよね。今までそういう楽器に触れるチャンスはなかったんですか?

早川 なかったんです。

白井 ハープを始めたきっかけっていうのは? 今さらですけども(笑)

早川 もともと小さい頃からピアノをやらされていたパターンだったんですね。気づいた頃には親にピアノを習わされていた、通わされていて。それをなんとかやめたくてやめたくて、なにかいい理由がないかなと思ってたら、母がやっていたので家に楽器はあったんですよ、ハープが。

白井 ふーん。

早川 母は私を産んでから弾いていないので、隅の方にあるなっていう意識があって。「ハープやるからピアノやめていい?」っていう不純な動機ではじめました。

一同 (笑)

白井 なるほど。ちなみにチェロを始めたきっかけはありますか?

辻本 幼少期はフィラデルフィアにいたから、そのときにはカーティス音楽院があって、そこのチェロの発表会を聴きに行った。姉がヴァイオリンやってたから同じ弦楽器つながりでチェロをやることに。

白井 自分であれやりたいって言ったとかは?

辻本 それやるかぁくらいの感じだった。ちょうどヨーヨー・マがロココを弾く映像が放送されていて、チャイコフスキー・ガラみたいなのが。そのときにやっぱりヨーヨー・マがかっこよすぎて火がついた。

早川 向こうで習い始めた?

辻本 向こうで。

白井 けっこう長かった?

辻本 長かった。11年いた。

早川 そうなんだ!へえ〜

♪こんなオーケストラが好き!

白井 二人はこんなオーケストラが好きだなとか、今あるオケでこんなオーケストラになりたいなあっていうのはありますか? さっきベルリン・フィルの話がちらっと出ましたけれども。

辻本 ベルリン・フィルの好きなところは、みんなの弓の返しが聞こえる。

白井 弓の返しが聞こえる?

辻本 うーーーーにゅーーーん! みたいなのが。それが波っていうか、なんかみんなが返しに吸い付きまくってる音みたいなのが、そういうオケになれたらいいなって。

白井 N響でね。

辻本 表現とか組み立て方とかあるけど、さっきのトランペットの話じゃないけど、音聴いて、「おおお!」みたいな。音だけで圧倒させるみたいなオケになれたらいいなと。

白井 早川さんは?

早川 私はこういうオケになりたいなっていう風にあんまり考えたことがなかったので、今の質問が斬新というか。みなさんはあのオケを目指して! みたいな感じに?

白井 漠然とですね。でも僕なんかはやっぱり聴いてワクワクして楽しい、全部が全部そうじゃなくてもいいのかもしれないけど。でもそうね、心が躍るような音楽をするオケだったら楽しいだろうなあと。弾いてる方もね。皆がのびのびとやって。

早川 好きなのは、ウィーン・フィルの音の密集具合が素敵だなって思いますね。あと昔コンセルトヘボウを聴いたときに上空でみんなが集合するような響きも面白いなと思った記憶もあります。

白井 でもどうなんでしょうね、それこそいま出た、ベルリン・フィルだコンセルトヘボウだウィーン・フィルだと、自分たちのスタイルがかなり定まってるから、あれがやりたくてこのオケに入っているという感じでみんな受けに来るんだろうけど、N響の場合どうなんでしょうね。

早川 どうでしょうね…受けられたきっかけは…?

白井 僕は別に受けてはいない(笑)

早川 頼まれた?

辻本 頼まれたからやっている?(笑)

白井 いや違う違う(笑)最初に来たときに、やっぱりすごいと思いましたよ。一番最初にN響のリハーサルで、あのときだよ、バーバーのシェリーのあれ(「シェリーによる一場面のための音楽」 作品7)でリハーサルが始まって、ヴィオラセクションからこう始まって、やっぱり彼らがすごい世界を作っていたから、「ああ、すごくいいオケなんだ」と思って、失礼だけど(笑)すごいよかったんですよ。だからいいなあと。

早川 むしろあれですね、私はずっといるからわからないけど、新しく外から入ったときの気持ちっていうのを、きっとまだフレッシュなときに持ち続けていただくと、たぶんいい方向に向かうね。

白井 やっぱりまあ得意不得意があるのか、そういった雰囲気に特化しているような曲だとなんだかすごい出てたんだけども、そうじゃない、なんてことないところにはメッセージが何もなくなっちゃったりとかね。そういうことはあるかもしれないけど。まあそうね、みんな好きな曲嫌いな曲とあるから…(笑)

早川 あと慣れてる曲慣れてない曲とかね。

白井 慣れてるも何も、あの曲はみんな初めて弾いてたと思うんですけど。アンサンブル、あのときのホルンのカルテットもすごかったしね。バーバーの最初、ホルン四人で下に降りてくるところ。うまいオケだなあって思いました。

♪5月の公演の聴きどころ

白井 5月の公演の紹介を読者のみなさんにしなくちゃいけない(笑)それを含めてN響ってこんなところだよとか、N響の演奏会を聴きに来たときにはこういうところをちょっと気にして観ると面白いですよとか教えてください。二人はソリストですね。15日、16日サントリーホール尾高さん。このドビュッシーの曲(「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」)というのはやっぱりハープのソロとしてすごく有名?

早川 そうですね。ハーピストにとってはマストな曲。

白井 しょっちゅう演奏されるんですか?

早川 しょっちゅうでもないけれど、大作曲家が書いてくれた数少ないハープ作品。すごく大事にしている曲ではある。

白井 N響ではもう共演なさったんですか?

早川 いえ初めてです。

白井 初めて! ああそうなんだ。じゃあちょっと最初のボウイング、もらった楽譜が一小節ずつ返してたんだけど、本当は返さないほうがいいですよね、たぶんね。

早川 ごめんなさい、わかんないです(笑)そうなんですね。

白井 僕(その日)コンマスなんです。

早川 あ〜そうなんですか、よろしくお願いいたします。

白井 本当は3小節間スラーなんだけれども、それを1小節ずつきって…じゃああれは相当昔にやった楽譜なんですね。

早川 たぶん…。私はやってないですね…

白井 20年間はやってないってことですよね。

早川 そうですね。

白井 他の2公演はお二人はじゃあ乗らないってこと?

辻本 26日は乗ってた。圭くんがコンチェルトのときには俺乗っていた気が…お邪魔するんじゃなかったかな…。

早川 私は21日に乗っています。

白井 僕は全公演乗っています、この月は(笑)

辻本 マジ? やば!(驚)

早川 大変! 最後がこれ(コンチェルト)?

白井 最後コンチェルト(笑)

早川 ええ〜

辻本 コンマスも? 流石に違う?

白井 それはさすがに(笑)

早川 すごいね〜

白井 チェロ・コンチェルトはカデンツァ自作とかそういう…

辻本 自作じゃない。

白井 でも誰かのなんか、というのもない?

辻本 それはあるよ。ゆうた方がいいの?

白井 それがもし売りだったら。あまり演奏されないとか。

辻本 あまり演奏されない。ケラスのヤツ。

早川 チェリストの?

辻本 CDがあってそれはフライブルクのバロックオケで弾いてる、その録音がめっちゃ好きで、そのカデンツァがすごいキレイで。超絶技巧ってわけではないんだけど。

白井 それは楽譜として出ているの?

辻本 出てない。で、耳コピしてもらって、いちおう本人にも確認したから大丈夫。

白井 本人にも確認した? ケラスお墨付きのケラス版。

辻本 「弾いていいよ」って言うから「ありがとう」って。

一同 (笑)

白井 まあでも今回のおふたりはなんせ一番最初の演奏会はイチオシですよね? しかもみんなソリスト祭りですよね。一人100人ずつ連れて来てくれれば、それで1,000人。

早川 そういうことか(笑)

一同 (笑)

早川 でもなんか仲間とできるっていうのはいいですよね? コンチェルトやるときって大抵、他のオケにゲストで行って知らない人じゃないですか?でもここ(N響)だと普段、どういう風に音楽を創っているか分かる人ばっかりだし、どこかちょっと安心してできるというか、そういう意味ではとても楽しみ。

白井 (辻本に向かって)安心してできるかな? われわれ?

一同 (笑)

早川 できます!

白井 やっぱり20年間いる人とね、4ヶ月…

一同 (笑)

早川 言い合える仲の人が多いっていうか、そういうのは環境としてたぶん楽しくできる一つの要素ではあるんじゃないかなと思うんですけど、どうですか?

辻本 日フィルの時に何回かコンチェルト弾かせてくれて、やっぱり安心、みんな知ってるっていうのは安心感あるし。

早川 味方感がね。アウェイじゃない感じ。

辻本 「どれくらい彼弾けんの?」みたいな感じで見るやん、やっぱり。

白井 なるほどねー。

白井 バンドネオン・コンチェルトっていうのがその後あったりしますけど。

早川 どんな曲なんでしょうね。

白井 僕は一回聴いたことあるけど忘れちゃった(笑)今年はピアソラ生誕100年だそうです。バンドネオンはなかなかN響の演奏会に登場しないので、ぜひこの機会に観ていただきたいですね、それに少しジャンルの違う音楽のファンがN響に出会うきっかけになったら嬉しいですね。

早川 ヒナステラはすごく面白いですよ。

白井 この曲? やったことあります?

早川 かなり昔ですけど…。

白井 けっこう頭の人たちが難しいって。

辻本 ソロが。チェロもソロがある。

早川 そうそう。最初がチェロとハープで始まって、ちょっと思い出したころにコントラバスとハープが同じことをやったりとか。

白井 ま、だからこれもそれぞれの見せ場がある感じなのかしら。

早川 そう、魅力的な曲。

白井 いつごろ演奏されたんですか?

早川 20年くらい前。

白井 入りたての時じゃん。

一同 (笑)

早川 相当昔の記憶。なのでたぶんそれくらいかと思うんですけど。

白井 でまあ、最後はサン=サーンス。

辻本 サン=サーンスの聴きどころを。

白井 サン=サーンスはさっき言った千香士先生の録音っていうのが、サン=サーンスを演奏してたの、3番を。で、オケすごい音してたから、どういう音するかな、と思って。

早川 それは白井さんのご自分のリクエストっていうか…

白井 そう、ちょうどサン=サーンスは没後100年のアニヴァーサリーイヤーなんですって。それで他、何曲か(候補が)あったんだけどちょうどいいからサン=サーンスにしましょうって。あとは、広上さんが先日お亡くなりになった尾高惇忠さんの作品を。尾高さん、前に日フィルで作品を演奏したときにリハーサルでお会いして、とても素敵な方でした。ある箇所について質問したら、諦めないでなるべく(作品を)良くしてよって。

♪オーディション

白井 ハイドンのチェロ協奏曲第2番はオーディションで弾きました?

辻本 そう、コンクールとかオーディションでは絶対。すごく難しくて。難しいけどやっぱりその軽々しく弾かないといけない。

白井 難しい〜って見せちゃいけない。

辻本 そういう曲じゃないから。でもなんかハイドンかボッケリーニといわれて、ベルリン・フィルに若いチェロの首席のブルーノ・なんちゃらくんが入ったんだけど、彼がベルリン・フィルで弾いてる映像がめちゃうまくて、俺も弾こうと。
ブリュノ・ドルプレール(ベルリン・フィル 首席チェリスト)

一同 (笑)

白井 ちょっと対抗心というかライバル心?

辻本 逃げずに頑張ろうやという気持ち(笑)

白井 オーケストラと演奏会で弾いたことありますか?

辻本 うん、2回くらいある。わりかしまあまあ弾いてる。

白井 オーディションでなんでこんな難しい曲を弾くんでしょうかね?

辻本 オーディションの曲選びってすごく難しい。これで例えばオーディションでぐちゃぐちゃになって、やっぱだめになっちゃうやん。でもオケの曲は素晴らしいかもしれないし、曲選びは難しい。

早川 いや、そうだなと思って。おっしゃる通りだなって。

白井 せめてC-durにすればいいのにね。

辻本 それで大体わかるしね、その人がどれくらい弾けるか。やっぱりハイドンでぐちゃぐちゃになってたら彼や彼女がどれくらい弾けるのかちょっとわからへん、さすがに。テンパってるし。

白井・早川 うーん

辻本 曲選びというのはね…もちろんオケスタとかがあるから…。

白井 ハイドンのD-durのコンチェルトを弾く能力はオーケストラのチェロパートに入った時にどのくらい役に立つ?

辻本 だって基本この辺(とても高いポジション)で弾いてるから(笑)ま、もちろん様式感であったりとか、そういうこと…でもそういうことは他の曲でもあるし。やっぱりそのソロでやった時はすごく緊張する子だったとしたら、でも別にオケだったら、やっぱり別やん、その緊張が。一人だったら緊張するけど、みんなだったらそんなに緊張しないとか。難しいなあと思う。

白井 ちなみにハープのオーディションというのはどういう曲を弾かされるんですか?

早川 オーディションは一通りカデンツァが目立つものが多いですよね。

白井 オケスタ?

早川 オケスタかな。

辻本 それ、誰が審査する?

早川 楽員が? ハーピストいないから。

辻本 っていうことですよね。

早川 ハープ以外のメンバーが。

辻本 誰が曲決めるん?

早川 事務局?

一同 (笑)

早川 私が入った時は、課題曲は事務局とたぶん首席奏者たちが話し合ったのかな? 10年間ハーピストいなかったから。

白井 で、その後20年間オーディションしていないからちょっとわからない。

一同 (笑)

♪お願い! そして舞台人として

辻本 なんせいっぱい(お客さん)来て欲しい。やっぱり舞台出てきたときにガラガラってすごい寂しい。

白井 今ね。

辻本 N響って今まで絶対いっぱいだったじゃないですか。ゲストとかで行ったときにやっぱりびっしりいたのが今はホントにガラガラ…寂しいからみんなきて欲しいです。

白井 そんなちっちゃい声で言わなくてもいいのに

一同 (笑)

早川 声を大にしなきゃいけないところ。

白井 じゃあ、どうしたらお客さんがもっといっぱい来ると思う? なんかそれをもうちょっと考えてもいいような気がする。

辻本 なんか敬遠してるような…

白井 近寄りがたい?

辻本 アンチとかいる? 巨人みたいな。

白井・早川 あー

辻本 意地でも好きちゃう、みたいな。

白井 そういう人も含めても、「これはもうしょうがないよ。(N響)いいもん。行こうよ」っていうような、ね、演奏になるといいですよね。

早川 若い人たちにも面白いなって思ってもらえるように、足を運んでもらえるような雰囲気作りができるといいですよね。

白井 それは何なんだろう? プログラムなのかそれともソリストだったり指揮者だったりするのか。

早川 私、これホントにオフレコで言うんですけど。私はずうーーーっと思ってるのは、みんな、あのー、本番終わった後に真面目な顔しすぎるんですよ。

白井 そうなの!

早川 だってすごい楽しかったのに何であんなに怖い顔してるの?

白井 そうなの! これもう採用しますけど、僕もね、本当にそれはね、変えた方がいいと思うんですよ。僕、終わった後に見るの、こうやって(左右を見る仕草)、みんな笑ってるかなって。でもほとんどの人が笑ってないの。

早川 そうでしょう! 私も一人でこうやってニコニコしてるのバカみたいで(笑)おっかしいなっと思って。

一同 (笑)

白井 よっぽどね、失敗したとかっていうんだったら笑いたくない気持ちももちろんわかるけど、そうじゃなかったらもうちょっとね、にこやかでもいいですよね? 拍手してくれているわけなんだから。

早川 そうそう、舞台人であるべきだと思うんですよ。舞台に出た瞬間から袖に引っ込むまでお客さまが楽しい気持ちになれるような振る舞いで。

白井 僕もそうしようとは思ってるんですけどね…

早川 でもね、白井さんやってらっしゃるっていうか、割合やってる。そこはね、たぶん若いやんちゃな人たちが入ってきて、そういう方向に向けば…

白井 やんちゃな人たちも結構おとなしいんですよ。そういうことに関しては、ね?(辻本に対し)

辻本 自分で動画とか見るとびっくりするくらいのしかめっ面で弾いてるときある。

白井・早川 いや、弾いてるときはいいよ!(笑)

辻本 オンライン配信とかたくさんあるじゃないですか、そんときにずーっとしかめっ面でdur(長調)の曲弾いてて、どうしたん? みたいな。

白井・早川 (爆笑)

辻本 別にそのときは怒っているわけじゃなくて…

白井 いや、それは真面目に弾いてるんだから。

辻本 終わったらね。

白井 終わったり、始まる前とか。やっぱり来てくれてありがとうっていうのをまずね。特に今こういう時代で、われわれお客さんいなくて困っているのに。だから僕本当にやりたいのは、休憩の後も入っていって拍手があったら、一目散に自分の椅子を目掛けて座りに行くんじゃなくて、もうちょっとこうコミュニケーションをとった方がいいと思うんだけど。

早川 そう思う。

白井 なんか全然関係ないんですよね。自分の行く先は、椅子。みたいな。

一同 (笑)

白井 世界がどうなっていようが関係ないっていう感じがちょっと見えちゃうから。もちろん座って「よし、やるぞ!」というのも良くわかるし、管楽器の方たちは次の準備もしなきゃいけないのもよくわかるんだけども、なんかいい方法がねぇ。

早川 せめて笑顔でお客さまの方を向く、とか、最低限終わったあとはにこやかに。あと、全方面というか、サントリーとかは正面だけじゃなくて左右、後ろもいるじゃないですか?だから後ろの方を…

白井 何となく意識する?

早川 そうそうそう。ちょっと会釈するとか。誰かに言われたんだけど「N響だけですよ、こっち(正面)だけっていうのは」海外の人だったかな。一応、全方面にいるお客さまに平等に。やりすぎも良くないけど。

白井 そうなんだよね…。その辺が難しい。でも少なくともしかめっ面して立っているのは止めるようにしましょう、こう、雰囲気を。とりあえず今日3人で共有して(笑)

早川 でもハープのところ寂しいんですよ。いないじゃないですか。

白井 そうねぇ。

早川 後ろの打楽器は後ろで盛り上がっていて、せめてピアノ。

白井 でもその目の前で弾いている弦楽器のヴァイオリンの後ろの方の人たちとなんかこう「ブラボー」とかそういうのもない?

早川 あ、そうか、弦楽器との交流は…ないかな(笑)

白井 ないの?(笑)べちゃべちゃおしゃべりするのも良くないとは思うんだけども、さっき舞台人っておっしゃいましたけど、それがなかなか難しいかもね。

早川 プロであれって感じ。

白井 リラックスしすぎちゃうのもねぇ。

早川 私がオケを聴きに行ったときに「あーよかった!」って思ったときに、同じ感情を共有しているなって思える表情なら別に笑ってなくてもいいというか。なんか真面目! ってなっちゃうと、「あれ? 私は楽しかったけどそうでもないのかな?」って拍手しながら思っちゃう。ちょっとずつ変われると…

白井 これだけ演奏会あるんだから、トレーニングはいくらでもできるんだけどね(笑)

♪ちょっとホールに行ってみよう

白井 なんか他に伝えたいことありますか?

辻本 そんなに行かへんけど、ちっちゃいころ野球観に行くときに、やっと球場に入った瞬間の感動ってわかる? テレビで観ていた球場が…

白井 目の前に広がる。

辻本 それが、その感動がすごくて。そういう意味でサントリーホールとか、ホールの雰囲気。そういう意味ではNHKホールとかちょっと寂しいけど。NHKホールは遠いから。おーいみたいな感じ。入った時にまず一つ目の感動がそのホールの美しさ。サントリーとかはすごくキレイやし。

白井 やっぱりあそこは魅せるホールだもんね。

早川 それがあるからやっぱり配信ではなくてライブに行きたいって思ってくれるところですよね。会場に足を運びたくなるのはスペースの楽しさ。

白井 そうねー、文化ですからね、そこがね。

辻本 またベルリン・フィルの話やけど、動画で見ていて初めてホール行ったら「おおー」みたいな。N響はそれが強いはず。テレビで流してるからその現場で、生で観たいやん、人間って。それでも来てくれないんだよなぁ。

一同 (笑)

早川 でも今回のこういう取り組みってすごくいいと思うんですよね。どっか敷居が高いなって思っていた人たちに「意外とみんな普通の人じゃん」って思ってもらえる一歩な気がするから。できるだけその敷居が低くなるようにフレンドリーな感覚が伝われば「じゃ、ちょっと行ってみようかな」と思うかも。

白井 そうそうそう。「ちょっと行ってみようかな」って思ってもらえるだけで。来てくれた人はまた来てくれるようにすればいいんだよね。「楽しかったな」って。

辻本 チェロ背負って帰るときにお客さんがいて、なんかその自分から「いえーい」って言うのもなんやけど(笑)だからそうするとしかめっ面で歩いちゃうけど、「みんな声かけてね」って。

一同 (笑)

辻本 たまに気づいて拍手してくれる人も。

早川 チェロ持っているとね、わかるから。

白井 ヨーロッパのオーケストラのような地域密着性とかは無いもんね。向こうでは定期会員のおじさんおばさんとはさ、もう友達のように話したりもしてね。定期会員というかサポーターズクラブみたいなのがあるわけ。そういう人たちの集まりに団員もよく出ているみたいだし、終演後ファーストネームで呼び合って「よかったよ!」とかさ、まーそういう時代がいつやってくるかわからないけど。それが自然にね、健康的にできればいいんだけど。

早川 確かに。

白井 たくさんお客さんが来てくれることを祈って。とりあえず5月の最初のコンサートは満席になるでしょう。

早川 だといいですね(笑)

【Information】
2021.5/15(土)18:00、16(日)14:00 サントリーホール
指揮:尾高忠明
チェロ:辻本 玲(ハイドン/N響チェロ首席奏者)
オーボエ:吉村結実(モーツァルト/N響オーボエ首席奏者)
クラリネット:伊藤 圭(モーツァルト/N響クラリネット首席奏者)
ファゴット:水谷上総(モーツァルト/N響ファゴット首席奏者)
ホルン:福川伸陽(モーツァルト/N響ホルン首席奏者)
ハープ:早川りさこ(ドビュッシー/N響ハープ奏者)
トランペット:菊本和昭、長谷川智之、安藤友樹、山本英司(パヌフニク/N響トランペット・セクション)
〈曲目〉
ハイドン/チェロ協奏曲 第2番 ニ長調 作品101 Hob.VIIb-2
モーツァルト/4つの管楽器と管弦楽のための協奏交響曲 変ホ長調 K. 297b
ドビュッシー/神聖な舞曲と世俗的な舞曲
パヌフニク/交響曲 第3番「神聖な交響曲」

2021.5/21(金)19:00、22(土)14:00 東京芸術劇場
指揮:原田慶太楼
バンドネオン:三浦一馬
〈曲目〉
グアルニエーリ/弦楽器と打楽器のための協奏曲[日本初演]
ピアソラ/バンドネオン協奏曲「アコンカグア」
ヒナステラ/協奏的変奏曲 作品23
ファリャ/バレエ組曲「三角帽子」— 第1番

2021.5/26(水)19:00、27(木)19:00 サントリーホール
指揮:広上淳一
ヴァイオリン:白井 圭(N響ゲスト・コンサートマスター)
〈曲目〉
チャイコフスキー(マカリスター編)/弦楽四重奏曲 第1番 作品11—第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」(弦楽合奏版)
サン・サーンス/ヴァイオリン協奏曲 第3番 ロ短調 作品61
尾高惇忠/交響曲 ~時の彼方へ~

NHK交響楽団
https://www.nhkso.or.jp

 

【Profile】白井圭 Kei Shirai

1983年、トリニダード・トバゴ共和国に生まれる。東京藝術大学卒業。徳永二男、大谷康子、故田中千香士、堀正文、故ゴールドベルク山根美代子の各氏に師事。2007年文化庁の奨学生として留学。ウィーン国立音楽演劇大学室内楽科にてヨハネス・マイスル氏に師事する他、ヴェスナ・スタンコービッチ氏の指導も受ける。日本音楽コンクール(第2位及び増沢賞)、ARDミュンヘン国際コンクール(第2位及び聴衆賞)、ハイドン国際室内楽コンクール(第1位及び聴衆賞)を始めとしたコンクールで受賞歴をもち、ソリストとしてチェコフィル、ミュンヘン室内管、新日本フィル、東京フィルなどと共演。ウィーン楽友協会や、ウィグモアホール(ロンドン)、コンツェルトハウス(ベルリン)等で演奏。2011年9月より半年間、ウィーン国立歌劇場管弦楽団及びウィーン・フィルの契約団員として活躍。現在もウィーンに拠点を置きながら、セイジ・オザワ松本フェスティバル、木曽音楽祭など数多く参加している。
Stefan Zweig Trio、ルートヴィッヒ・チェンバー・プレイヤーズ、トリオ・アコード各メンバー。田中千香士レボリューション・アンサンブル音楽監督。
Fontecより「シューマン:ヴァイオリンとピアノのための作品集(ピアノ=伊藤恵)」、「ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲(トリオ・アコード)をリリース。
現在、NHK交響楽団ゲスト・コンサートマスター。
www.stefanzweigtrio.com
www.ludwigchamberplayers.com

 

早川りさこ Risako Hayakawa

東京藝術大学卒業。〈第3回日本ハープコンクール〉及び〈第2回アルピスタ・ルドヴィコ・スペイン国際ハープコンクール〉にて優勝後、国際ハープ・フェスティバルでの招待演奏、パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)への講師としての参加、国内主要オーケストラとの共演などで活動の場を広げる。
2001年NHK交響楽団に入団。
協奏曲の日本初演、世界初演の演奏の機会も数多く、ヒンデミット「木管楽器、ハープとオーケストラのための協奏曲」、アルウィン「ハープ協奏曲」、リーバーマン「フルートとハープの為の協奏曲」を日本初演する。
また、2013年にはタン・ドゥン『13のマイクロフィルムとハープの為の協奏曲』を作曲者自身の指揮でNHK交響楽団と世界初演した。(NHK交響楽団、フィラデルフィア管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の共同委嘱作品)
2006~2019年母校の東京藝術大学にて非常勤講師を務め、現在は国立音楽大学にて後進の指導にあたっている。

 

辻本玲 Rei Tsujimoto

東京藝術大学音楽学部器楽科を首席で卒業。その後シベリウス・アカデミー、ベルン芸術大学に留学。第72回日本音楽コンクール第2位。2007年度青山音楽賞新人賞受賞。2009年ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール第3位入賞(日本人最高位)。2011年に東京サントリーホール他5大都市でデビュー・リサイタルを開催。2013年齋藤秀雄メモリアル基金賞を受賞。サイトウ・キネン・オーケストラに毎年参加するほか、アルカス佐世保レジデンス・カルテットなど室内楽でも活動。2015年6月から2019年12月まで日本フィルハーモニー交響楽団ソロ・チェロ奏者を務める。使用楽器はNPO法人イエロー・エンジェルより1730年製作のアントニオ・ストラディヴァリウスを、弓は匿名のコレクターよりTourteを特別に貸与されている。
2020年12月よりNHK交響楽団首席チェロ奏者。

公式サイト http://www.rei-tsujimoto.com

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