
原田幸一郎80歳記念コンサートが6月15日に日本製鉄紀尾井ホールで開催される。多数の原田門下生たちが参加する盛り沢山の内容だ。第1部で原田は、ブラームスとベートーヴェンの弦楽四重奏を演奏する。共演は、元東京クヮルテットの池田菊衛と磯村和英、そしてチェロの毛利伯郎。
「ブラームスの第2番は、ミュンヘン国際コンクールの課題曲で、優勝後すぐにドイツ・グラモフォンに録音しました。今回は、サントリーホール室内楽アカデミーでよく一緒に演奏している仲間たちと弾きます。ベートーヴェンの第16番は齋藤秀雄先生が大好きだった曲。先生のことを思い出します。
東京クヮルテットには12年ほどいました。ミュンヘンで優勝した次の年から1年間に100回以上のコンサートで演奏し、ありとあらゆるレパートリーに取り組みました。そんな弦楽四重奏団は日本では初めてでしたし、今もありません。旅行ばかりの日々でした」
そして第2部では門下生たちがブラームスの弦楽六重奏曲第1番、チャイコフスキーの弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲など大きめの編成の室内楽曲を演奏する。
「神尾真由子さんと神谷美千子さんが(門下生たちに)声をかけて、誰が何を弾くかも考えてくれました」
神尾、神谷のほか、南紫音、辻彩奈、正戸里佳、MINAMI、外村理紗、前田妃奈、竹内鴻史郎、周防亮介ら、オールスター・キャストである。
「東京クヮルテットを辞めてから、クリーヴランド音楽院、東京音楽大学、桐朋学園で教えてきました。教える立場として、才能豊かな人たちが来てくれて、幸運だったと思います。芸術的には完璧を求めますが、なるべく型にはめないで、それぞれの持ち味を活かし自由に弾かせるようにしています。
室内楽では具体的にどうアプローチすればよいかを教えています。日本はソロばかりに目が行って、室内楽に関しては遅れていますね。ニューヨークに行くとヴァイオリンのリサイタルは少なくなっていますが、室内楽は盛んなことがわかります。また今は、オーケストラに入るのもたいへんです。学校でもっとオーケストラで演奏するための勉強をしなくてはなりません。時代が変わってきているので、そろそろ日本も変わらないと。MINAMIさんのベルリン・フィルでのトライアル開始を聞いて、本当にうれしかったです」
第3部ではさらに、小川響子、﨑谷直人、東條太河、林悠介、毛利文香、吉江美桜らも加わった弦楽オーケストラを相手に、チャイコフスキーの弦楽セレナードで指揮を執る。
「最後に全員でチャイコフスキーの弦楽セレナードを演奏します。弦楽合奏曲では一番有名な作品。みんな弾いたことがあるでしょうし、僕も桐朋学園時代、さんざん弾きました。ヴァイオリンは全員、ヴィオラも大半を教えました。上手な人ばかりですので、良いアンサンブルになると思います。きっと楽しい演奏会になりますので、ぜひ、たくさんのお客様に来ていただきたいですね」
取材・文:山田治生
(ぶらあぼ2025年4月号より)
原田幸一郎80歳記念コンサート
2025.6/15(日)13:30 日本製鉄紀尾井ホール
問:アスペン03-5467-0081
https://www.aspen.jp