
250年以上の歴史を誇るバレエの殿堂、ロシアのボリショイ・バレエ団に2012年、アメリカ人女性として初めて入団したバレリーナがいた。その人物ジョイ・ウーマックの実話を基に映画化したのが本作『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』だ。
ボリショイ・バレエ団のプリマになるという夢を持ち、期待に胸を膨らませて入学したバレエ団付属のボリショイ・アカデミー。そこでは言葉の壁や壮絶な訓練、ライバルを蹴落とすことに容赦がない激しい競争が15歳のジョイ(タリア・ライダー)を待っていた。アメリカ人のジョイは同級生に良く思われず、陰湿ないじめに遭う。そんな彼女をアカデミーのディレクター、ヴォルコワは厳しくも手塩にかけて育てていく。ジョイは男性クラスも受講する並外れた努力の末、卒業公演で主役に抜擢され最優秀の成績で卒業するが、ボリショイ・バレエ団の入団者リストに彼女の名前はなかった。華麗なバレエ界の闇に直面しパワハラに遭い挫折を経ながらもジョイのバレエへの想いは潰えることはなかった。果たしてジョイはボリショイ・バレエ団のプリマになれるのか…?! そんな彼女の戦いがスリリングに展開する。


リアルに描かれる当時のボリショイ・バレエ団
ロシア・バレエは伝統的に師弟の絆が強く、実の親子に近しい関係となる。本作でも、ロイヤル・バレエスクールで学んでいたダイアン・クルーガー演じるヴォルコワが、母のような愛情でジョイを育て叱咤激励し、自分のキャリアも犠牲にしてまでピンチを救う。バレエ界の頂点であるボリショイの伝統、究極の美が長い年月の中で守られてきた秘密、ひたむきな努力だけでは得られないもの——過酷な世界の光と闇がクールな映像美の中で描かれる。共演のダンサーたちも、世界トップのバレエ団で活躍する現役ダンサーたちだ。


ストーリーのキーポイントとなる“コンクール”
一度はバレエの道をあきらめようとしたジョイは、ヴォルコワの勧めで世界三大バレエコンクールの一つ、ヴァルナ国際バレエコンクールに挑む。3次審査まであり、多数の課題曲を野外のステージで踊らなければならない厳しい戦いだ。憧れの世界的なバレリーナ、ナタリア・オシポワ(現英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル、本人役で出演)とコンクールで邂逅し、持てるすべてを捧げてきたバレエから離れないと決意したジョイ。作中において、アクシデントも情熱で乗り越える彼女の姿は、夢に向かって頑張る人たちを励ましてくれるに違いない。


映画の基となったジョイ・ウーマック本人は、今もバレエ界で活躍を続けており、2025年のローザンヌ国際バレエコンクールでは審査員を務め、バレエダンサーを目指す若者たちを暖かく見守る姿が印象的だった。
文:森菜穂美
『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』
4月25日(金)よりTOHOシネマズシャンテ他にて全国公開
キャスト:タリア・ライダー、ダイアン・クルーガー、オレグ・イヴェンコ 他
監督・脚本:ジェームス・ネイピア・ロバートソン
配給:ショウゲート
公式サイト:joika-movie.jp
公式X:@showgate_youga
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