南 紫音(ヴァイオリン)

地元・北九州で満を持して挑む弦楽四重奏

(c)Shuichi Tsunoda

 北九州市出身で、ロン=ティボー国際音楽コンクール第2位(パリ、2005年)獲得など活躍を続けている南紫音が「2023北九州国際音楽祭」に出演する。しかも彼女自身初めてとなる弦楽四重奏での出演に踏み切った。

 「学生時代の恩師は原田幸一郎先生ですが、皆さんご存知の通り、原田先生は東京クヮルテットで活躍されていて、かねてからお話はたくさん伺ってきました。それだけに弦楽四重奏の難しさも理解していたつもりで、なかなかそれに向き合う勇気が出なかったというのが本当のところです。でも、今回、響ホール開館30周年に合わせて演奏会を、という依頼をいただいたので、いよいよ『その時』が来たという決意で取り組むことにしました」

信頼するメンバーと大好きな作品に挑む

 彼女がメンバーとして集めたのは、福田悠一郎(ヴァイオリン)、佐々木亮(ヴィオラ)、横坂源(チェロ)という腕利きの3人である。

 「チェロの横坂さんとは、他の演奏会でお目にかかる機会があって、お互い会うたびに、『何か一緒に室内楽をやろうね』と話していた間柄でした。共演したことがないのに、周りの方から『演奏が合いそう』とよく言われていたので、今回共演できるのが楽しみです。
 佐々木さんは、室内楽の演奏会で本当に一音一音を大切に演奏される姿を拝見して、もし一緒に室内楽ができるならぜひお願いしたいと思っていました。福田さんは、同門で以前からその演奏をよく知っていて、何でも言い合える仲です。今回も色々な形で意見を出してくれる存在として、一緒に演奏していただきたいと考えました」

 それぞれがソリストとしても活躍できる実力を持つこの4人による演奏が本当に楽しみだ。演奏曲目はハイドンの弦楽四重奏曲第75番 ト長調、ボロディンの弦楽四重奏曲第2番 ニ長調、そしてベートーヴェンの弦楽四重奏曲第8番 ホ短調「ラズモフスキー第2番」という名曲揃い。選曲の理由も聞いた。

 「ボロディンとベートーヴェンは私から提案しました。もう1曲は、実は皆さんが同じハイドンのこの曲をアイディアとして考えていらして、びっくりしました。ハイドンは弦楽四重奏団の取り上げるベーシックな作品で、お互いの和声感や音楽観がよく分かりますし、音楽に余白があって、色々なことが試せる作品として最初に置くのが良いかなと思いました。
 ボロディンは小さな頃から大好きな作品で、メロディの美しさに憧れがあり、ぜひ取り上げたいと思っていました。ベートーヴェンは一番好きな作曲家ですし、ヴァイオリン・ソナタ全曲にも取り組んだことがあります。もちろんハイドン、ボロディンとはまったく違う世界がありますので、様々な時代で、違った色彩感のある作品を並べることができたのでは、と思います」

未来を見据え、節目のステージへ

 若くして世界的な活躍を始めた南だが、30代半ばを迎える。

 「自分の中でひとつの転換点として、今回の演奏会を捉えています。これからの自分の進むべき方向、音楽への向き合い方を見つめ直す時期だと思っていて、その中で他の方々の音楽への取り組みを感じることができる貴重な機会になると思います」

 素晴らしいアコースティックを持つ響ホールでの弦楽四重奏に期待が高まる。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ2023年8月号より)

2023北九州国際音楽祭
南 紫音(ヴァイオリン) 福田悠一郎(ヴァイオリン)佐々木 亮(ヴィオラ) 横坂 源(チェロ)
2023.10/29(日)15:00 北九州市立響ホール
問:北九州国際音楽祭事務局093-663-6567 
http://www.kimfes.com