20世紀の古典から“自作”まで披露する意欲的なステージ
イェルク・ヴィトマンはドイツ作曲界の中堅世代にあって、最も重要な作曲家の一人である。オペラから弦楽四重奏まで創意あふれる作品を次々に発表し、その多くがレパートリー化している。と同時に彼は、現代を代表するクラリネット奏者でもある。自作はもちろん著名作曲家の新作初演などでも大向こうをうならせる一方で、モーツァルトやブラームスの名曲にもウィットの効いたチャーミングな録音を残し、今や世界中でひっぱりだこ。片方が主でもう一方が従ではなく、一流の作曲家で、なおかつ一流のクラリネット奏者なのだ。近年は指揮にも活動を広げているという。
この1月にトッパンホールで行われるリサイタルはクラリネット無伴奏。専業クラリネッティストでもソロ公演は珍しいから、いかにトッパンホールがヴィトマンの才能を“買っている”かがうかがえる。期待に応えるべくヴィトマンが立てたプログラムも、20世紀の古典から自作に至る多彩なもの。ベリオのどこか瞑想的な「リート」で始まり、初期の自作「幻想曲」に近作「3つの影の踊り」を続ける。後者は微分音、多重音、キーを叩く音、絶叫などが即興的に組み合わされたアイディアの宝庫で、その作風の一端が自身の演奏で味わえる。メシアン「世の終わりのための四重奏曲」からクラリネット独奏の楽章(鳥たちの深淵)、ストラヴィンスキー「パブロ・ピカソのために」と現代の古典に目配りした後、ヴィトマンが初演したホリガー「レシャント」、ルジツカ「3つの小品」の2作品へとつなげ、最後は師匠リームから献呈された「4つのしるし」で締める。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年1月号より)
2018.1/14(日)17:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
http://www.toppanhall.com/