INTERVIEW 反田恭平

時代の寵児が語る盟友、そしてJNOの未来

 反田恭平が自身の事務所である株式会社NEXUSを立ち上げたのは2018年。Japan National Orchestra(以下JNO)を株式会社として設立してから、間もなく3年を迎える。演奏活動と併行して経営者としての視点を培い、音楽家仲間との絆を深め育てている反田。NEXUS所属のアーティストや、JNOの展望について伺った。

取材・文:飯田有抄
写真:編集部

——反田さんの会社NEXUSに所属し、レーベル「NOVA Record」からアルバムをリリースしているアーティストについてお聞かせください。ヴァイオリンの岡本誠司さんは、近年のご活躍が目覚ましいですね。

 そうですね、岡本は4月29日にNHK交響楽団の演奏会でエッシェンバッハと共演しました。曲はシューマンのヴァイオリン協奏曲。彼は昨年もエッシェンバッハと共演しています。現在はベルリンのハンス・アイスラー音楽大学で指導もしていて、ほぼ同世代の学生たちに教えているんです。彼が日本のクラシック音楽界を牽引していく人だということは、もう何年も前から確信していますが、JNOのコンサートマスターとしても視野が年々広がっているのを感じています。
 僕と岡本のデュオもやっていきたいですね。昨年はバンベルクの大ホールで二人で演奏しました。R.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタをやりましたが、あれは大変な作品でした。水野優也と演奏したショパンのチェロ・ソナタもトリッキーで難しい曲でしたが、R.シュトラウスは大変だったなぁ(笑)。

——務川慧悟さんのソロ活動はもちろん、反田さんとの2台ピアノも今後の展開が楽しみです。

 務川は「自分はこうありたい」というのを人に多くは語らないけれど、とても芯がしっかりとした音楽家です。ヨーロッパのエージェントとの契約の話も進みつつあって、これからますます向こうでの活動も充実していくのだと思います。2台ピアノはもちろんこれからも続けていきたいです。

Kyohei Sorita

——JNOは今年5月で3年目を迎えますね。全国ツアーや海外ツアー、メンバーのリサイタル・シリーズや拠点とする奈良県・奈良市との連携活動など、ますます充実の活動を展開されています。

 JNOは昨年度初めて黒字化を達成しました。まずは3年スパンで見据えていたので、好調な滑り出しだったと思います。コンサートの数は少し減らしましたが、収益が増えていたのはありがたいことですね。

——JNOでは団員募集のオーディションを行うことになったそうですね。

 そうですね。オーディションという言葉よりは選考会と自分たちは考えています。従来のオーディションとも少し違うニュアンスです。
 現在はコアメンバーが20名ほどいます。JNOで得た給与は研鑽を積むための留学費用などに役立ててほしいですし、ダブルワークもOKにしようと考えています。若い奏者から「入りたい」という声も聞こえつつあるので、応募数はある程度見込まれるのではないかと思っています。

3月、Japan National Orchestra 記者懇親会の様子

 ただ断言できるのは、審査は相当に厳しいものになるということ。僕はこのオーケストラを、ベルリン・フィルに並ぶようなものに育てたいし、各国の音楽祭から呼ばれるような存在にしたいと思っています。この30年40年じゃなくて、100年先まで続くようなオーケストラにしたいですから、その伝統を今から作っていきたいと考えています。

 その時に重視したいのが、やはりメンバー一人ひとりの人間性です。うまければ入れるわけでもありません。僕だけで決めることもしません。具体的な審査方法についてはこれから詰めていくところですが、おそらくはコアメンバー全員のYesがないと入れないといった形を取ると思います。人間として、社会人として、しっかりしていて、教養があってコミュニケーション力があり、音楽を一緒に共有できて、向上心を持ったプレーヤー。どんなに緊張していても自分のパフォーマンスを発揮できる、そうした肝のすわった音楽家にぜひ来ていただきたい。狭き門かもしれません。せっかくオーディションを開催しても、合格者ゼロということだってあり得ます。でもやるからには、こちらも真摯に審査するつもりです。

——さらに強力で生き生きとしたJNOの成長が期待できますね。

 これからも素晴らしいメンバーたちとともに、日本一“食えるオケ”にJNOを育てたい。どこの会場でも、コンサートに来てくださったお客様は喜んでくださるし、僕らも本番を通じて音楽家としての修行ができているわけだから、みんなwin-winですよね。僕はいつかこのオーケストラをワールドワイドなメジャーレーベルと契約させたい。これまでもずっと有言実行でやってきましたから、いつかきっと叶えようと思っています。


【Profile】
2012年第81回日本音楽コンクールにて第1位。16年1月にサントリーホールにて本格的なデビュー・リサイタルを開催、チケットが即完し大型アーティストの登場に国内で大きな注目を集めた。21年第18回ショパン国際ピアノ・コンクールにて、日本では半世紀ぶりの第2位を受賞。コンクールの模様は配信され、以来世界中のピアノ・ファンの注目を集めている。ピアノの務川慧悟、ヴァイオリンの岡本誠司が所属する株式会社NEXUSおよびJapan National Orchestra株式会社代表。現在は活動の拠点をウィーンへ移し、指揮の勉強と合わせて海外での演奏活動にも力を入れている。

【Information】

反田恭平さん 今後の予定

反田恭平(ピアノ) × A. オッテンザマー(指揮) 
バーゼル室内管弦楽団 日本ツアー2024
2024.6/28(金)19:00 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
6/30(日)15:00 静岡/富士市文化会館ロゼシアター
7/1(月)19:00 サントリーホール
7/2(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
7/3(水)19:00 大阪/フェスティバルホール
7/4(木)19:00 広島/上野学園ホール
出演
アンドレアス・オッテンザマー(指揮)
バーゼル室内管弦楽団
反田恭平(ピアノ)
曲目
ストラヴィンスキー:オペラ《放蕩児の遍歴》よりファンファーレ
オネゲル:交響詩「夏の牧歌」
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 op.58
ウィンケルマン:ジンメリバーグ組曲
メンデルスゾーン:交響曲 第4番 イ長調 op.90「イタリア」
問:りゅーとぴあチケット専用ダイヤル025-224-5521(新潟)
  静岡朝日テレビ satv-event@satv.co.jp(静岡)
  東京公演事務局0570-00-9989(東京)
  ABCチケットインフォメーション06-6453-6000(大阪)
  HOMEイベントセンター082-221-7116(広島)
https://kyoheisorita.com

岡本誠司さん 今後の予定

〇センチュリー豊中名曲シリーズVol.30 「美しい足跡」
6/9(日)15:00 大阪/豊中市立文化芸術センター
出演
出口大地(指揮)
日本センチュリー交響楽団
岡本誠司(ヴァイオリン)
曲目
ドヴォルザーク:序曲「謝肉祭」op.92
        ヴァイオリン協奏曲 イ短調 op.53
        交響曲第8番 ト長調 op.88
問:豊中市立文化芸術センターチケットオフィス06-6864-5000
https://www.toyonaka-hall.jp

〇反田恭平プロデュース JNO Presents リサイタルシリーズ
ヴァイオリン岡本誠司の世界 2024

6/13(木)19:00 なら100年会館(中)
出演
岡本誠司(ヴァイオリン)
北村朋幹(ピアノ)
曲目
シューマン:おとぎの絵本 op.113、ヴァイオリンソナタ第3番 イ短調 WoO 2
ブラームス:クラリネット(ヴィオラ)ソナタ 第1番 ヘ短調 op.120-1、同第2番 変ホ長調 op.120-2
問:Japan National Orchestra info@jno.co.jp
https://www.jno.co.jp

〇岡本誠司リサイタルシリーズ Vol.4 “最後の言葉”
6/14(金)19:00浜離宮朝日ホール
出演
岡本誠司(ヴァイオリン)
北村朋幹(ピアノ)
曲目
シューマン:おとぎの絵本 op.113、ヴァイオリンソナタ第3番 イ短調 WoO 2
ブラームス:クラリネット(ヴィオラ)ソナタ 第1番 ヘ短調 op.120-1、同第2番 変ホ長調 op.120-2
問:NEXUS info@nexus18.co.jp
https://seijiokamoto.net

〇ヤマハホール・コンサート・シリーズ
仲道郁代 ベートーヴェン “ピアノ室内楽” 全曲演奏会 Vol.4

6/30(日)15:00 ヤマハホール
出演
仲道郁代(ピアノ)
岡本誠司(ヴァイオリン)
平野昭(音楽学者)
曲目
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第4番 イ短調 op.23
        同第5番「春」へ長調 op.24
        同第6番 イ長調 op.30-1
        同第7番 ハ短調 op.30-2
        同第8番 ト長調 op.30-3
問:ヤマハ銀座店インフォメーション03-3572-3171
https://retailing.jp.yamaha.com/shop/ginza/hall

務川慧悟さん 今後の予定

〇務川慧悟×ナターリア・ミルステイン 2台ピアノ
6/14(金)19:00 なら100年会館(中)
出演
務川慧悟、ナターリア・ミルステイン(以上ピアノ)
曲目
<オール・ストラヴィンスキー・プログラム>
春の祭典、ペトルーシュカ、火の鳥
問:NEXUS info@nexus.jpn.com
https://keigomukawa.com

〇東京芸術劇場リサイタル・シリーズ「VS」Vol.9
務川慧悟×ナターリア・ミルステイン

6/18(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
出演
務川慧悟、ナターリア・ミルステイン(以上ピアノ)
曲目
<オール・ストラヴィンスキー・プログラム>
春の祭典、ペトルーシュカ、火の鳥
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296
https://www.geigeki.jp

〇東京フィルハーモニー交響楽団
第1000回 オーチャード定期演奏会

6/23(日)15:00 オーチャードホール
第1001回 サントリー定期シリーズ
6/24(月)19:00 サントリーホール
第162回 オペラシティ定期シリーズ
6/26(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
出演
チョン・ミョンフン(指揮)
務川慧悟(ピアノ)
原田節(オンド・マルトノ)
曲目
メシアン:トゥランガリーラ交響曲
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522 
https://www.tpo.or.jp

Japan National Orchestra
https://www.jno.co.jp