クァルテット・インテグラ(弦楽四重奏団)

躍進著しい精鋭たちが挑む新シリーズの幕開け

©Abby Mahler

 クァルテット・インテグラが日本トップ級の技量を持つのは誰しも認めるところだ。2015年に桐朋学園在学中の4人で結成された同グループは、22年ARDミュンヘン国際音楽コンクール第2位受賞で大きく飛躍。以後、研ぎ澄まされた集中力と強靭なアンサンブルで、絶大な賞賛を博している。中でもトッパンホールでは、23年のリゲティ・プロジェクトで緻密にして鮮烈な快演を、開館23周年バースデーコンサートの「死と乙女」でロマンティシズム濃厚な熱演を展開。キャパシティの広さを印象付けた。

 今年彼らは、チェロにパク・イェウンを迎え、まさにその室内楽の殿堂で活動の核となる年1回のシリーズを開始。5月の第1回では、ドビュッシーの弦楽四重奏曲、バルトークの同第5番、ベートーヴェンの「ラズモフスキー第3番」が並んだ本格派のプログラムを披露する。ドビュッシーは、結成年に取り組み、最初に人前で弾いた曲、バルトークは21年の同名コンクールで第1位を獲得した彼らの主軸をなす作曲家で、5番はコンクールでも弾いた「自分たちの強みが一番活かせる作品」との由。これに当然「コアとなる」ベートーヴェンの代表作を加えた内容は、新プロジェクトの開始に相応しい。

 特に洗練された作風で円熟路線への一歩を記したバルトークの5番は、リゲティの凄演からも期待大。加えて同曲とラズモフスキー3番は、フーガが重要な鍵を握る(後者の終楽章の快速フレーズも要注目)という共通点もある。また、ベートーヴェンが中期の明快な作品だけに、全体のメリハリも申し分ない。今後への期待が膨らむこの周到な幕開けを、皆で見届けたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年5月号より)

2024.5/30(木)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com