鈴木秀美(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

晩年のハイドンが描く壮大な世界と自然の賛美


 鈴木秀美の指揮により、ハイドンの壮大なオラトリオ「天地創造」が聴けるのは大きな喜びだが、期待と同時に不思議な興奮を呼び起こす。旧約聖書の『創世記』で描かれる世界の成立(神による6日間の創造)、ジョン・ミルトンの叙事詩『失楽園』で描かれたアダムとエヴァ(イヴ)の誕生。多くの人が文学として知る一連の流れを、ときおり描写的な手法も交えながら生き生きと音楽で表現し、歌い上げていくのがこのオラトリオだ。
 交響曲などの演奏でハイドンの音楽語法を追究してきた鈴木だが、蓄積されたノウハウを生かして演奏されるだけに、強い作品愛と生命力は期待以上だろう。鈴木は作品の魅力について「確かな信仰と神への感謝が、自然への感謝や生きていることへの感謝になり、聴き手は大きな共感をおぼえるはず。自然への愛着や慈しみも感じられ、雨風や雷、動物など自然の様子を模した表現は聴いていて楽しいものです」と語る。
 天使たちやアダムとエヴァを歌う、中江早希(ソプラノ)、櫻田亮(テノール)、多田羅迪夫(バス)といった声楽ソリストたち。鈴木の薫陶を得た合唱団「コーロ・リベロ・クラシコ・アウメンタート」の充実した響き。そして鈴木もかつて学んだフランス・ブリュッヘンと、2009年に「天地創造」を含むハイドン・シリーズを行った新日本フィル。鈴木は「共通の価値観、美観を見出して音楽作りをする幸せを味わいたい」と期待を表明しており、その充実した音楽が楽しみになってくる。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ 2017年6月号から)

第574回 定期演奏会 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉
6/2(金)19:00、6/3(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
http://www.njp.or.jp/