十人十色の作曲家像が浮かび上がる5日間
今年も表参道でショパン・フェスティバルが開催される。期間は5月28日から6月1日までの5日間。2022年は「ポロネーズ」、昨年は「バラードとスケルツォ」という具合に、ショパンの作品のジャンルがテーマとなっていたが、今回は違ったアプローチである。ショパンが影響を受けた作曲家の作品から、彼が独自の世界観を音楽に表現するまでの流れ、その後の影響が描かれ、魅力溢れるプログラムが並ぶ。
お昼12時からのランチタイムコンサートでは、来年開催のショパン国際ピアノコンクールへの出場が期待されるピアニストが名を連ねる。初日の今井理子はショパンと同世代のシューマンとリスト、そしてショパンの作品を取り上げ、「サロン」という場に焦点をあてている。三井柚乃はヘンデルからバルトークまでの幅広い時代の音楽から、点と点を線で結ぶようなプログラムである。重松良卓は「前奏曲」をテーマに、J.S.バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパンの作品を演奏する。佐川和冴は「英雄像」をテーマにショパンとベートーヴェンに絞り込んだ。
オール・ショパン・プログラムは最終日のエリク・パルハンスキのみ。彼は昨年12月に開催された第52回ポーランド全国ショパン・ピアノコンクールで優勝しており、特に注目されるピアニストである。
18時半開演のイブニングコンサートの初日はポーランドのエヴァ・ポブウォツカ。まず、バッハ、モーツァルト、シューベルトと並べることで、バロックからロマン派までを提示する。続いて、フィールド、ベッリーニからショパンの作品への緩やかな時代の流れが体感できるだろう。2015年のロン=ティボー国際コンクール第3位入賞の實川風は、バッハの「平均律クラヴィーア曲集 第1巻」とショパンのノクターンを調性のつながりを意識して交互に弾くという試み。第17回、第18回のショパン・コンクールでディプロマを得た竹田理琴乃は、モーツァルトとショパンの変奏曲を交互に演奏し、ショパンの新境地であるバラードの作曲に至る過程を物語る。
フェスティバルの最後を飾るのは岡田博美。前半はベートーヴェンのピアノ・ソナタから「月光」と「テンペスト」。後半のショパンはマズルカ op.56とピアノ・ソナタ第2番 op.35で、全体的に重厚なプログラムとなっている。2日目、29日の夜はショパン研究の加藤一郎によりレクチャーが行われる。
ランチタイムコンサートの後にオープンテラスで優雅に過ごしたり、夜のリサイタルやレクチャーの前後で食事しながら音楽談話に花を咲かせるなど、表参道という場所ならではの楽しみ方で、ショパンに浸るフェスティバルを味わおう。
文:多田純一
(ぶらあぼ2024年5月号より)
2024.5/28(火)〜6/1(土) カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
問:日本ショパン協会 03-6718-4239
http://chopin-society-japan.com/chopin-festival2024/
※フェスティバルの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。