【CD】田中範康作品集III

 独奏曲からトリオまで多彩な編成の7曲。楽器の特性を生かしつつ、楽曲ごとの課題に対する回答がアイディア豊かに展開される。「Sparkling in the Space IV」はソプラノをエレクトロニクスが妖艶に増幅するのに対し、同「X」ではエレクトロニクスは鋭い器楽の応答に静かに奥行を与える。「無言歌」はフルートとギターが緊張感に満ちた対峙を、「同化の試み 第2番」ではギターと十三絃箏という東西の楽器が意外なブレンドをみせ、「ラメンテーション」ではぽつりぽつりと打ち出されたピアノの単音が慟哭を縁どる。曲によって切り込み方は様々だが、ベースには一貫して古典的な造形感覚があるように感じた。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2025年4月号より)

【information】
CD『田中範康作品集III』

田中範康:無言歌、Sparkling in the Space IV「祈りの時」、同化の試み 第2番、Sparkling in the Space X、ピアノのためのモノローグ第4番「ラメンテーション」 他

木ノ脇道元(フルート) 佐藤紀雄(ギター) 森川栄子(ソプラノ) 原田裕貴(エレクトロニクス) 木村麻耶(十三絃) 松山元(ピアノ) 他

コジマ録音
ALM-136 ¥3300(税込)