「24のカプリース」で約100分! 約60分の小品集も加わり、CD限界の収録時間で、まだ20代前半のドゥエニャスが、すでに恐るべきアーティストであることが強烈に示される。カプリースは衝撃。彼女には「超絶技巧」という言葉も過去のもの。テクニックは余裕で完璧、もはやフレーズごとに違う奏法と音色を繰り出し、とにかく“歌う”。実際に歌声のように抑揚は豊かで劇的、緩急・硬軟・攻守、すべて自在。結果として演奏時間はかかるが、1秒たりとも飽きさせない。“音楽的”どころか“音楽のみ”のカプリースがあり得るとは。只管圧巻。ヴァイオリン演奏史に残る盤になるのでは。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年3月号より)
【information】
CD『パガニーニ:24のカプリース 他/マリア・ドゥエニャス』
パガニーニ:24のカプリース/サラサーテ:バスク奇想曲/ガブリエラ・オルティス:De cuerda y madera(縄と木)/ベルリオーズ:夢とカプリッチョ/サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ 他
マリア・ドゥエニャス(ヴァイオリン)
ミハイル・ゲルツ(指揮)
ベルリン・ドイツ交響楽団 他
ユニバーサル ミュージック
UCCG-45112/3(2枚組) ¥4070(税込)