優しく、深く、爽やかに——そんな響きで惹きつけるのは、近現代音楽の語法に精通するピアニスト高橋絵里子がフィンランド音楽を集めたアルバムだ。若き日のコッコネンが残した愛らしく瑞々しい「ピエラヴェシ組曲」、シベリウスの弟子であったマデトヤの静謐な死生観を伝える「死の庭園」、日本文化の影響も受けているというロンパネンの「エラキス」(世界初録音)などを通じ、20世紀から現代に至るフィンランドのピアノ曲の諸相を描き出す。透明感がありつつも温かみのある高橋の音色は、洗練の極み。作品それぞれの持ち味を精緻に伝える。何度も聴き返したい一枚だ。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2025年4月号より)
【information】
CD『ノルディック・ヴィジョンズ―フィンランドの ピアノ音楽―/高橋絵里子』
ヨーナス・コッコネン:ピエラヴェシ組曲/レーヴィ・マデトヤ:死の庭園/カイ・ニエミネン:華やかな翼の微笑み/アリ・ロンパネン:エラキス、アルマクの砂場/セリム・パルムグレン:3つの情景による夜想曲
高橋絵里子(ピアノ)
コジマ録音
ALM-145 ¥3300(税込)