昨年10月の上岡敏之と新日本フィル公演が早くもCD化。幸いこの場に居合わせられたが、同コンビとしてばかりか、近年のモーツァルト演奏全般の中でも出色のものだった。この録音でも全編にわたる細密なニュアンス、その積み重ねが生み出す雄渾な響きがしっかり聴きとれる。アーティキュレーションは細部まで徹底的に洗い直され、内声部の動きを巧みに聴かせて、各セクションが鮮明に浮かび上がる立体感も抜群。ときに見せるユニークなバランスも楽しく、発見と喜びがあふれる。特に各曲の両端楽章の鮮烈な構築のインパクトは大きく、拍手と歓声が会場の興奮を伝える。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年4月号より)
【information】
SACD『モーツァルト:交響曲第39番、第40番、第41番「ジュピター」/上岡敏之&新日本フィル』
モーツァルト:交響曲第39番、同第40番、同第41番「ジュピター」
上岡敏之(指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団
収録:2024年10月、すみだトリフォニーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00872 ¥3850(税込)