【CD】シューベルト:冬の旅/小森輝彦

 日本人初のドイツ宮廷歌手の称号を得るなど、長きにわたり欧州で活躍し、現在は日本のオペラ界を牽引する存在となっている小森輝彦。歌曲の領域でも圧倒的な存在感を放つ彼が、デビュー盤のR.シュトラウスに続いてリリースしたのはシューベルトの「冬の旅」である。ドイツ語の発音そのものの美しさと立体感はもちろん、そこからさまざまな色と香りすら感じさせる歌唱は、楽曲の世界観を鮮やかに届けてくれる。前回に続き伴奏を担当する井出德彦のピアノがそれをさらに深く掘り下げ、聴く者に主人公の見ている景色を追体験させるかのようだ。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2025年3月号より)

【information】
CD『シューベルト:冬の旅/小森輝彦』

シューベルト:冬の旅

小森輝彦(バリトン)
井出德彦(ピアノ)

日本アコースティックレコーズ
NARD-5085 ¥3080(税込)