【CD】フランスいにしえの吐息/藍原ゆき&渡邊温子

 フランス・バロックの二巨匠、マラン・マレとフランソワ・クープランのヴィオル音楽を組み合わせ、後者のクラヴサン曲を挿入。幻想的なマレに対し、雅な見かけに詩情を託したクープランと作風は対照的で、両者を組み合わせたアルバムは意外に少ない。本盤は2枚組で各盤に両者を振り分けている。しかし演奏は対比を強調するよりも、奏者のキャラクターで共通する要素を探り出す印象だ。キーワードは「情念」だろう。細部の微細な配慮や安定性よりも太い描線で貫く。倍音渦巻くマレからは鬼気が立ち上り、クープランは苦し気な高音部が吐息というよりほとんど呻き声のよう。異色の演奏だ。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2025年3月号より)

【information】
CD『フランスいにしえの吐息/藍原ゆき&渡邊温子』

マレ:1台もしくは2台のヴィオルのための曲集、ヴィオルと通奏低音のための曲集 第2巻/クープラン:クラヴサン曲集第4巻より第27オルドル、ヴィオルと通奏低音のための曲集第2巻

藍原ゆき(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
渡邊温子(チェンバロ)

Fiammetta
FMOE-003(2枚組) ¥3000(税込)