神奈川フィルの2025-26シーズン コンサートプログラム記者会見に沼尻竜典が登場

音楽監督の任期を2028年3月末まで延長

沼尻竜典

 神奈川フィルハーモニー管弦楽団が9月11日、横浜市内で記者会見を行い、2025-2026シーズンのプログラムを発表した。登壇者は音楽監督の沼尻竜典ら4名。

 会見ではまず、24年度末からの神奈川県民ホールの休館に伴い「ミューザ川崎シリーズ」(全3回)を新設することが発表された。「Beethoven Ring」をテーマにベートーヴェンと周辺の作曲家を特集する。これに横浜みなとみらいホールで行う「みなとみらいシリーズ定期演奏会」(全9回)、神奈川県立音楽堂での「音楽堂シリーズ」(全4回)をあわせた計3シリーズが柱となる。

 来季で就任4年目となる沼尻は「みなとみらいシリーズ定期演奏会」に3回登場。新シーズンの幕開けとなる4月は、来年が没後50年で、就任以来継続して取り上げているショスタコーヴィチからチェロ協奏曲(独奏:上森祥平[首席奏者])と交響曲第12番「1917年」を披露。10月には今季の第5番に続きブルックナーの交響曲第8番(ノヴァーク版)を、翌年2月にはレスピーギのローマ三部作などを振る。

「ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲は、ずいぶん昔にロストロポーヴィチと共演した思い出の曲。交響曲第12番は、この作曲家の後期作品の中では出来が良くないと言う人もいますが、いろんなアイディアに満ちた作品です。
 “ブルックナー振り”としては後発の私ですが、ブルックナーの交響曲は死ぬまでに全曲演奏したい。8番は大曲なので今からプレッシャーを感じています。
 ショスタコーヴィチ、ブルックナーとくるとマーラーへの期待が高まるところですが、あえてレスピーギを選曲しました。今勢いに乗る神奈川フィルの高度な演奏技術、オーケストラとしての性能をいかんなく発揮できると思います」

 「ミューザ川崎シリーズ」には、ブラームスのピアノ協奏曲第2番(独奏:清水和音)、ベートーヴェンの「田園」を演奏する5月と、12月の「第九」の2回に登場する。「音楽堂シリーズ」では、吹奏楽の分野でも活躍する作曲家・長生淳の委嘱作品を初演する26年2月の演奏会でタクトをとる。
 セミステージ形式のオペラ公演「Dramatic Series」は来季も継続。今年4月、團伊玖磨の代表作《夕鶴》を作曲家生誕100年の誕生日当日に上演し好評を博したが、来季は、沼尻がびわ湖ホール芸術監督時代に主要10作品すべてを指揮して注目を集めたワーグナーから《ラインの黄金》を上演する。

「今回、びわ湖ホールで上演した時の歌手たちを中心に集まってもらいます。当時もかなり練習しましたが、さらに磨き上げた音楽がお届けできればと思います」

 客演陣では、昨年の「幻想交響曲」、今年のラフマニノフ交響曲第2番で同楽団と抜群の相性の良さを見せた大植英次、昨年9月の初共演が楽団員からも大好評だったというドイツの名匠ゲオルク・フリッチュ、ピアニストで沼尻の後任としてリューベック歌劇場の音楽総監督を務めるシュテファン・ヴラダーなど、ドイツ・オーストリアで活躍するマエストロが登壇する。また、2019年から22年まで札響の指揮者を務め、沼尻もその才能を高く評価する若手・松本宗利音も見逃せない。特別客演指揮者の小泉和裕も、10月&26年3月の2回、指揮台に立つ。

 会見では沼尻の音楽監督の契約期間が延長されることも発表になった。25年3月末までの任期が3年間延長され、28年3月末まで現在のポストを担うことになる。
 沼尻とともに進化を続ける神奈川フィル。4年目のシーズンにも期待したい。

神奈川フィルハーモニー管弦楽団
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