京都市交響楽団は3月11日、2025-26ラインナップおよび70周年記念事業に関する記者発表を開催。常任指揮者を務める沖澤のどか、楽団長の松井孝治(京都市長)らが登壇した。

©京都市交響楽団
2026年に創立70周年を迎える京響。一つの大きな節目にあたり、25年から27年の3年間にわたって70周年記念事業を展開していくことが明らかになった。事業の実施方針として、「市民と共にある」「京都の音楽芸術文化をつくる」「ワールドクラスの」オーケストラを目指し、活動を行っていくという。松井は「日本初の自治体直営のオーケストラとして1956年に創立して以来、財政難などの困難に何度も見舞われました。それでも京響がここまで育つことができたのは、ひとえに市民の皆さまのお力添えがあってこそ。楽団の今後の発展には様々な物事を整備していく必要がありますが、市民の理解をしっかりと得て、音楽家の皆さんが活動に集中できる環境をつくっていきたい」と、楽団長としての抱負を語った。

プレ期間に位置づけられる2025年は、楽団の認知度を高める目的で国内ツアーを開催。プログラムは9月に行われる沖澤指揮の定期公演と同一の、ルイーズ・ファランクの交響曲第3番&リムスキー=コルサコフ「シェエラザード」(ヴァイオリン・ソロ:石田泰尚)だ。兵庫県立芸術文化センターでの兵庫公演を皮切りに、サントリーホールでの東京公演、そして福井、長野、八戸、青森と東日本を中心とした各都市でコンサートを開く。
沖澤「旅をすると『列車が遅れた』『誰かが忘れ物をした』といった出来事が起こることもありますが、そうした一つひとつの経験が積み重なることで、『家族になっていく』感覚とでもいうような関係性の変化が起こると思っています。オーケストラも“人間”ですので、一緒に演奏旅行をすることで、きっと何かが変わるはず。故郷である青森に京響を連れていくことは何年も前からの悲願だったので、それが叶い本当に嬉しく思っています」

2025-26シーズン(25年4月~26年3月)のラインナップは昨年11月に発表済みだが、今回の会見で改めて沖澤からプログラムに関する説明がなされた。6月の公演は、タイユフェール、ラヴェル、デュカスと十八番のフランス音楽に、アラベラ・美歩・シュタインバッハー独奏によるジョルジュ・レンツのヴァイオリン協奏曲「…to beam in distant heavens…」を組み合わせる(6/20, 6/21)。
沖澤「シュタインバッハーさんとはドイツで何度か共演しましたが、素晴らしいヴァイオリニスト。彼女のために書かれたこのコンチェルトは、日本初演ということで『とんでもなく難解な曲なのでは……』と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、まったくそんなことはありません。舞台上だけではなく客席からの仕掛けもあり、生でしか味わえない立体感を持った“音響体験”としてもお楽しみいただけると思います」
9月には先述の国内ツアーを含む公演で登壇、さらに年末には「第九」も指揮(12/27, 12/28)。意外にも、沖澤が日本でこの曲を全楽章披露するのは初だという。そして、シーズン最後の26年3月には演奏会形式でモーツァルトの傑作オペラ《コジ・ファン・トゥッテ》を上演(26.3/20)。隠岐彩夏(フィオルディリージ)、大西宇宙(グリエルモ)、宮本益光(ドン・アルフォンソ)ら第一線で活躍する歌い手が集結する。
沖澤「2022年のセイジ・オザワ 松本フェスティバルで《フィガロの結婚》の指揮を終えた後、小澤征爾さんから直接『モーツァルトのオペラを続けてください』とお言葉をいただいていましたので、京都でやらない手はないと。《コジ・ファン・トゥッテ》は、ストーリーに関しては女性として少しムッとする内容もあるのですが(笑)、なにしろ音楽が素晴らしい。演奏会形式でこそ、この作品の本質に迫れるのではないかと思います。歌手陣も日本で叶う最高のキャストが揃いました」

©京都市交響楽団
今後は本拠地・京都コンサートホールでの練習回数を増やし、市民へのホールリハーサル公開(申込制、有料)がされることもあわせて発表された。沖澤は「私自身も学生時代、よくオケのリハーサルに潜り込んでいました。映画などでもメイキング映像を観ると作品の見方がより深まったりしますが、リハーサル見学には同じような楽しみがあると思います。音楽が出来上がる過程に立ち会った上で、さらに本番にもお越しいただければ」とコメント。
さらに、2025年度からの楽団員体制も公開。特別客演コンサートマスター、石田泰尚と会田莉凡のポスト名が「ソロコンサートマスター」に変更となるのに加え、反田恭平率いるジャパン・ナショナル・オーケストラのチェロ奏者・森田啓介が特別首席チェロ奏者に就任する(山本裕康との2名体制)。70周年を控え、着実に新たな歩みを進める京響から目が離せない。
文:編集部
写真提供:京都市交響楽団
◎2025年度国内ツアー(指揮:沖澤のどか)
9/21(日)兵庫県立芸術文化センター
9/23(火・祝)サントリーホール
9/24(水)ハーモニーホールふくい
9/25(木)長野市芸術館
9/27(土)八戸市公会堂
9/28(日)リンクステーションホール青森
〇曲目
L.ファランク:交響曲第3番 ト短調 op.36
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」op.35[ヴァイオリン:石田泰尚(京響ソロコンサートマスター)]
◎ホールリハーサル公開
〇概要
申込制
対象:小学生以上
定員:200名
申込方法:往復はがきまたはグーグルフォーム
料金:¥500
支払方法:当日現金払い
〇公開日
6月定期 [6/20(金)、6/21(土)]:6/18(水)
10月定期 [10/11(土)]:10/9(木)
第九公演 [12/27(土)、12/28(日)]:12/26(金)
26.2月定期 [2/13(金)、2/14(土)]:2/11(水・祝)
26.3月定期 [3/20(金・祝)]:3/18(水)