萩原隆(サクソフォン) 大井健(ピアノ)
ライブ配信が仕事になる オンラインで生まれる演奏家の新たなステージ Vol.3

Pocochaで実感!演奏する喜び

ライブ配信を通じてライバー(配信者)とリスナー(視聴者)が交流するライブコミュニケーションアプリ「Pococha」は、演奏家たちにとって新たなパフォーマンスの場としても注目を集めている。この企画では全6回シリーズとして、ぶらあぼでもお馴染みのアーティストをインタビュアーに迎え、ライバーとして生きる演奏家との対談が実現!
今回はテレビ・CM出演や著書も出版するなど幅広く活動するピアニスト大井健が、Pocochaライバーで「めちゃモテ・サックス」楽譜シリーズでおなじみのジャズ・サックスプレイヤー萩原隆と対談。〈演奏 × 配信〉にはいったいどんな可能性が秘められているのか。配信の世界を徹底解剖します!
左: 大井健  右: 萩原隆

サックスとの出会い

大井 楽器を始められたきっかけは?

萩原 “王道”ですが吹奏楽部の出身です。中学時代は身体が大きかったのでテューバ担当でした…。でも正直、掛け持ちしていたバドミントン部の方が楽しくて。高校では体育会系として生きていくつもりが、吹奏楽部のオトナな演奏っぷりに感激して入部。サックスに持ち替えたら、もう最初の1週間で一生の付き合いになることを確信したくらいハマってしまいました。それで、大学でも吹き続けようと思って入部したのが、実はビッグバンド部だったことを後で知ります。これがジャズとの出会い。全くの未経験でアドリブも何も知らないところから始めたので最初はキツかったけれど、だんだんスイングのこととか、グルーヴ感をどうやって出すかがわかってきたら楽しくなった。しかもビッグバンドって、パーティーで演奏したり歌手のバックで伴奏したり、学生でもお金になる仕事がいっぱいあったんです。それで毎週末、ほとんどプロのミュージシャンのように稼いでいました。

大井 じゃあそのまま、自然とプロの道に…

萩原 はい、在学中に山野楽器主催の「ヤマノ・ビッグバンド・ジャズ・コンテスト」で優秀ソリスト賞をいただいたのも大きかったです。

萩原 大井さんの場合は? やはり小さい頃から…

大井 そうですね。母親がピアノ教師で楽器が家にあったので、自ら興味をもって習い始めて。その後、小学6年生の時、父親の仕事の都合でドイツに渡ってから、単身イギリスの日本人学校に通うようになるんですが、その学校の音楽の先生が、かのメンデルスゾーン の子孫という方で。教わっているうちにどんどんピアノが好きになって、コンクールにも出るようになりました。そして中2の時にコンサートホールで初めてピアノ・リサイタルを聴いてすごく感動して、自分もあんな風になりたいと思ったのが、プロを目指すようになったきっかけです。

萩原 なんだかとってもキラキラしたお話ですね(笑)。

大井 でも、それからがかなり大変でした。高校から日本に戻って、親の反対を押し切って音楽高校に入学したらピアノ専攻の子たちは本当に上手くて。自分のように単にずっと楽しくて弾いてきただけの人とはレベルが違う。それなのに“帰国子女”ということで持ち上げられてしまって、理想と現実の狭間でもがく日々でした。テクニックのなさを補うために文献を読みあさって必死に勉強もして、大学に進んでからも頑張りました。そして大学卒業と同時にオペラ・ユニットの専属ピアニストとして演奏活動を開始。2015年にデビューさせていただきました。

プロの道へ

大井 プロになってからはどんな活動を?

萩原 自分の場合、入り口には恵まれまして…知り合いのツテでホーン・セクションのあるバンドがメンバー募集していたのを知って、そのロックバンド「JANGO」に参加。勢いでメジャー・デビューしたら、TV番組のエンディング・テーマやCMの曲などタイアップもたくさんいただいて。各地のFM曲でヘビーローテーションされて、すごく恵まれていました。その後バンドの活動休止を経て地元である山梨に戻って、ソロ・プレイヤーとしての活動にシフト。ステージに立つ機会は減りましたが、レッスンの講師などをして人に教えることに喜びを見出していました。

大井 ターニング・ポイントになったのは?

萩原 2012年に吹奏楽系の大手楽譜出版Winds Scoreからソロ用アレンジ譜「めちゃモテ・サックス」シリーズを監修して出版したことです。アルト、テナー・サックスの楽譜アレンジとデモ演奏を担当して、デモ演奏動画もYouTubeで話題になりました。

大井 順風満帆じゃないですか。そこからどうPocochaに繋がるの?

萩原 コロナ禍になって、巣ごもり需要で楽譜も売れるかと思ったら、全国の音楽教室で発表会などが中止になって、ものすごい減収に。

大井 自分も作曲家とピアニストによるデュオ「鍵盤男子」(2020年勇退)のツアーが軒並み中止になって、何しろ連弾が“密になる”と御法度だから二人では何もできなかった。

萩原  なるほど。鍵盤が繋がってますしね。

大井 そうなんです。

萩原 そんな時、僕のレッスンをオンラインで受講してくれていた北海道の生徒さんがPocochaのライバーで。「先生も絶対これやるべき」って勧めてくれたんです。ただ、最初はとても自分にはできる気がしませんでした。でも実際に始めてみたら結構、音楽を求めているリスナーがいることに気がついたんです。繁華街のちょっと裏手にある隠れ家のようなライブハウスにお客さんが集まっているみたいに。しかも若いライバーさんが多いからリスナーも若者ばかりだと思っていたら、全然そんなことなかった。

大井  そうなんですね。人気度が数字で見えるシビアな世界なのでは?

萩原 確かに「ランク」(*1)は報酬アップとも結びつく重要なものですが、本来なら自分の配信を楽しみに見にきてくれるリスナーのことを第一に考えるべき。上のランクを目指して勝負することもファンとの一体感を高める意味で必要ですが、まずは今いるリスナーさんに喜んでもらって、自分はこのくらいの「ランク」だと受け入れることも大切だと思うのです。数字に振り回されてばかりいると楽しめません。

*1 ランク
ライバーの人気度(どれだけ応援されているか)を「応援ランク」として導入。
ランクは E1~S6 までの19段階で区切られており、Eランク1つ、D~Aまでが3段階ずつ、最高ランク帯のSは6段階に分かれている。毎日の配信の結果でランクは上下する仕組み。

Pocochaで実現できること

大井 萩原さんにとって、報酬を得る以外でのPocochaのメリットや魅力って何ですか?

萩原 生のコンサートはいろいろと準備が必要ですがPocochaはひとりでできるし、カラオケ配信の機能もあるので(著作権の許諾を得た)様々な楽曲を自由に使用できる。実験的なことにチャレンジもできてリクエストにもその場ですぐ対応できる…メリットを挙げたら尽きません。そして、始める前は、大勢の人がただ視聴している一方通行のプラットフォームだと思っていたのが、双方向のコミュニケーションが活発に行われるプラットフォームで、お互いの交流がとても親密だとわかりました。 しかもリスナー同士もやりとりできるので、うまくいっているところはどこも、集う人みんなの仲が良い。うちでもコロナ禍で誰とも自由に会えなかった頃に「毎日ここにくることで救われた」って言ってくれた方がいて、とても嬉しかった。それが最大の魅力ですね。

大井 僕も実は既に、ファンの方向けにオンラインのサロンを開設して3年目なんです。オフ会をしたりもしますが、演奏を流してコメントをいただいたりと、結構Pocochaに近いことをやっていますね。以前、コンサート前にリハーサル動画を配信したら、面白がってくれた。公演プログラムに関するご意見も寄せられて、すごく参考になりました。

萩原 知識が豊富なお客さんが多いので勉強になる。僕もリクエストで知らない曲を教えてもらうことがよくあります。

大井 それに恐らくPocochaをやることで演奏技術も向上しますよね。萩原さんは今、多いときどのくらい配信を?

萩原 多いときは7~8時間やってます。自分の予定と合わせながらお昼どき、夕方、深夜の3回に分けて配信する時もあります 。

大井 なるほど! 3回あればリスナーにとって都合のいい時間帯を選べるので、観てもらえるチャンスが広がりますもんね。

萩原 まさに! 大井さんは配信のことがわかっていらっしゃる。

大井 今日お話を伺って、共感できることが多かった。やはりPocochaは魅力的ですね。一見さんが気軽に入ってこられるのも刺激になるし。オンライン・サロンだとどうしても閉じられた世界になりがちだから。Pocochaで演奏を聴いて、リアルなライブに足を運んでくださる方もいらっしゃるでしょうし。

萩原 そう、街角に置かれたピアノを演奏するストリート・ピアノに近いかもしれません。

大井 普段あまりクラシック・ピアノを聴かない人にも届けられますね。

萩原 実際、僕のリスナーでサクソフォンに興味をもって自分でも演奏を始めた方もいます。あと、ミュージシャンを長くやっているとだんだん感覚が麻痺してきて、「なんでこの曲を」もっと言えば音楽をやっている意味が自分でもわからなくなることってありませんか? 自分の感情とは無関係に音は出せるから。たとえそんな感覚に陥ったとしてもPocochaでリスナーが楽しんでくれているのを見て、音楽をやっててよかったなと思う。

大井 わかる~これってこういう曲だったんだって、お客さんの反応で改めて理解できるというか。

大井 自分はPocochaに向いているのかな…

萩原 上手く演奏したいとかではなく、お客さんを楽しませたいという気持ちがあれば大丈夫ですよ、きっと。

大井 何から始めましょうか?

萩原 とりあえずやってみる。わからないところをリスナーさんに教えてもらいながら始めるのがPocochaっぽくて良いのではないでしょうか。楽しみにしています。

大井 では次は、Pocochaで会いましょう!

協力:Pococha
構成:東端哲也
撮影:吉田タカユキ

萩原隆(サクソフォン)

高校の吹奏楽部でサックスを始め、大学時代にビッグバンドジャズの部で経験を積む。
山野BIGBAND JAZZ CONTESTに於いて優秀ソリスト賞を受賞。卒業後”THE JANGO”のメンバーとしてFUN HOUSEよりメジャーデビュー。
「平成教育委員会」、「サークルK」TVCM曲、コカコーラ社CM、各地のFM局でチャート1位を獲得。ソロ転向後、アレンジ譜面「めちゃモテ・サックス」シリーズを監修し出版。
YouTubeチャンネル累計再生数は4100万回を越え、譜面の出荷数も8万部を越えるヒット。各地でのレッスンもこなしながらライブ活動、pocochaではトップライバーとしても活動している。

大井健(ピアノ)

幼少期に渡欧しメンデルスゾーンの子孫の下で研鑽を積む。
2015年『Piano Love』(キングレコード)でメジャーデビュー。セカンドアルバムでビルボードランキング1位を記録。
ソニー『Xperia』のTVCMに出演。2020年『Piano man』(集英社)を発表。2021年に最新アルバム『reBUILD』をリリース。
演奏の他、執筆、講座など活動は多岐にわたる。
(株)イープラスパートナーアーティスト。オンラインサロン「PianoLabo」主宰。ピアノスクール「PianoRoom」代表。
https://www.takeshioi.com/

ライブコミュニケーションアプリ「Pococha」

ポコチャ(Pococha)とは、株式会社ディー・エヌ・エーが運営するライブコミュニケーションアプリです。一般の方からモデル、歌手まで、様々な個性溢れるライバーたちが毎日配信中。いつでも気軽に視聴・配信を楽しむことができます。
熱く応援してくれるファンに出会える、アットホームなコミュニティ・プラットフォームとして、ライバー・リスナーの両者にとって居心地のよい場を提供しています。
2022年12月末時点で日本国内で累計456万以上ダウンロードされています。

https://www.pococha.com/ja-JP