柴田 ダイナミクスをすべて一目盛り上げなくちゃいけない?
川口 そう感じたことがありました。そのときに「バランスどうしようか」とか相談しながらやるんですけど、僕はもう古楽器の世界にどっぷり浸かってるから、サイレンスに喜びを感じる。もし、大ホールでのピアノを演奏することを想定してピアノと向き合っていたとしても、サイレンスの部分にもこだわるような方向性があると、表現力の幅が広がるのかなと思います。僕もやっぱり古楽器を通じてそれを学んだ。やっぱり最初のフォルテピアノのレッスンのときは「もっと大きな音出ないかな」と思っちゃった(笑) 「フォルテッシモで弾いてるのに、なんでこれしか出ないんだろう?」って。それは楽器が悪いんじゃなくて、自分のセンスが合致してなかっただけ。楽器を変えるんじゃなくて、自分の脳みそを変えなきゃなって…
古楽器に触れるときには、それまで自分の中で培ってきた“当たり前”を、1回崩さなきゃいけない。それを崩せるか崩さないかが、たぶん難しいところではある。
柴田 逆にもうプロとして活動を始めちゃった人は、そこからピアノ奏法を崩すのは難しいかもしれないですね。僕もフルートを習って、そこから崩すことをやったら、やっぱり批判もあったし、参加しているモダン・オケでも、けっこう言われました。「Mr. バロック・フルート」って。僕の時代のベルギーでもそういうことがあったから…
小倉 そうなんだねぇ。
柴田 その壁にあるドアを開けるのは、僕たち古楽器奏者の仕事でもあるのかなと思ったりもしますよね。先日、指揮者の山下一史先生と飲む機会があったんです。彼はカラヤンの弟子。「HIP (Historically informed performance)とはまったく縁がない」と仰っていたんですけど、そんな山下さんでも「古楽器奏者から学ぶことは、たくさんあるんだよね」と。「我々は、それを真似はできないのわかってるけど、ただ学ぶことが多いから、耳は傾けようとしている」と語っていましたし、そういう意識はやっぱり皆さんあると思うんですよね。
小倉 最近、それはすごく感じますね。
柴田 あとは、僕たちがそれをどういうふうに広げて、情報提供していくか。それによって、この先10年のクラシック業界の演奏法において、ものすごく大きな波が来るんじゃないかなと僕は思うんです。
小倉 そうね。私も副科レッスンやワークショップでモダン・ピアノの人と接することが多くて、「フォルテピアノで学んだことをモダンの演奏にどう生かすか」というようなこともやるんだけど、なかなか難しいですね〜。やっぱり、発音機構の違いが大きい。フェルトのハンマーだと子音が立たない。もちろん、近似値までは行くけど…本質的には違う。
川口 古い楽器の場合、音の発音ポイントが違う。さっき音の情報量の話したけど、音が鳴る瞬間にものすごく情報が凝縮されているので、モダン・ピアノのワーンっていう響きと情報量に大きな差がある。さっきは音楽的な情報量の話をしたけど、音の情報量もやっぱり全然違う。やっぱりピアノは打弦楽器だから、発音ポイントの情報量を知ってしまうと、モダン・ピアノになったときに、すごく欲求不満になる。
小倉 そうそう。いろいろ工夫してそれっぽくはできるんだけどね。本質的なところはやっぱり違うんだよね。
♪Chapter 10 平行弦と交差弦
柴田 スタインウェイがはじめて1855年に交差弦という仕組みを始めて、そのときに「何じゃ、こりゃ!」ってなったと思うんすけど、やっぱりパラレル(平行弦)と交差弦で、だいぶ音は変わるものなのでしょうか。
川口 違うと思う。クリス・マーネの平行弦ピアノあるでしょ。前に彼の工房まで行ったとき、10秒しか弾けなかった! もっと弾きたかったんだけど。まだ、あの違いがしっかり感じられていない。モダン・ピアノでバレンボイムが弾いた平行弦の楽器と交差弦の違い。バレンボイムの来日のときに、「パラレルの意味がわからない」と言ってる人もいたけど、バレンボイムの演奏が実際どう聞こえたのか、聴きたかったんですけど…。
小倉 良かったよ!
川口 あ、聴きに行きました?
小倉 交差弦の楽器を隣に置いて、それと弾き比べしたわけじゃないから、どのぐらい違いが出るのかわからないけど、でも声部のクリアさみたいなものは明確だったかな。バレンボイム自身がそれを要求している演奏だったし、うまく再現されていた。交差弦だと、どこまでそれができないのか、それはちょっと比較では言えないけれども…
柴田 シュトライヒャーでしたっけ? もうひとつウィーンの工房で、スタインウェイのあと19世紀中に交差弦の楽器を作ったんだけど、ウィーンの観客からブーイングがすごかった。だから、もう一度元に戻した…。
川口 あー、そうなの?
柴田 それはクリス・マーネが言ってました。でも、結局スタインウェイは作り続け、ゲームチェンジャーになった。当初は交差弦の音がショッキングだったっていう記録が残っているぐらい、全声部がわかれて聞こえるのがかつてのピアノの音だった。だから、昔の人が今のモダン・ピアノを聴いたらびっくり仰天するんじゃないかと思う。それぐらいやっぱり違う楽器だった。
川口 均質美を目指してる。美的センスっていろいろあるじゃない。でもモダン・ピアノに求められたのは均質美。ここにある楽器のほうがすごく音のアイデンティティが強いから、多様性っていうか…
柴田 今の社会みたい。
川口 そうそう! 今の社会って「多様性」とよく言うじゃないですか。このあいだ面白い写真を見たんですけど、1970年代の日本の新入社員の入社式の写真と今の入社式の写真を比べたら、50年前はみんな好きな服を着て、一人ひとりが個性豊かだった。でも、現代の入社式はみんなリクルートスーツで、ロボットがいっぱいいるみたい。そういう時代に限って、「多様性、多様性」ってみんな言う。だから、多様性が求められる時代ということは、いまつまり多様性が失われてる時代だということ。だから、ピアノの場合も、今のモダン・ピアノの時代はある意味、音の多様性がちょっと乏しい時代なのかなと僕は思っているんです。現代の人は今あるピアノに着眼しがちだけど、本来はピアノという楽器にはもっとたくさんの選択肢があって、多様性を楽しんでいいと思ってる。
柴田 フルートもそうだもんね。結局、全部ベーム式で、どこのフルート吹いてもまったく同じスケールで、ほぼ同じ内径で、まったく同じ指使いで。そんなこと、1800年、1850年頃にはなかったことですからね。すべての楽器が違うスケールで、違う音律、違う内径で、キーの数も全部違って…あの多様性はどこに行ったんでしょう?と思う。
小倉 そうだね。
柴田 だから、僕たちが見つけないといけないですよね。
小倉 確かに、音楽を離れても、現代の「成功のレールに乗れなかった人は不幸だ」みたいな雰囲気…がんじがらめで生きづらさを抱えている、ちょっと病んでる社会なのかもね、今ね。そういうなかで、もっと自由さをみんなが求めているという意味で、古楽からの発信によって癒されたりする人たちがたくさんいるというのはわかる気がするね。
川口 いやぁ、そうですね。
♪Chapter 11 フォルテピアノを始めるには?
柴田 ところで、フォルテピアノに興味を持った人が始めるためには、どういう道を通ったらいいのでしょうか? 実は、僕の周りでは、モダン・ピアノをやらずに、チェンバロから始めてフォルテピアノに進んだという人のほうが多いんですよね。ベルギーやフランスでは。特にフランスは今すごくそういうパターンが多くて。クラヴサン・スクールがすごく発達しているから、小さいときからチェンバロだけやり始めて…
小倉 レオンハルトがそうだったっていうもんね。
柴田 そうそう。レオンハルトのお弟子さんがそれを勧めていて、けっこうそういう始め方が多いんですよね。鍵盤奏法も、クープラン『クラヴサン奏法』とかC.P.E.バッハ『正しいクラヴィーア奏法』を読んで、そこからフォルテピアノに進む人が増えている。でも日本では、なかなか難しいじゃないですか。そうなったときにどういう道を通るのが良いのか、アドバイスいただけたら嬉しいです。
川口 うーん…
小倉 難しいね、楽器の問題がね。ヨーロッパとそこが大きく違う。本来は、身近に楽器があるということが必要になってくるよね。いま、私の弟子でフォルテピアノ専攻で頑張ってる人でも、やっぱり楽器を持っていない人はいます。モダン・ピアノで練習しているとイメージが変わってしまうから、それだったら机の上でイメージしてやるほうがまだいいとも言える。でも、いくらなんでもそればかりじゃダメだから、楽器が身近にあるということが日本では求められる。5オクターブの楽器はレプリカが多いじゃない? もっとフォルテピアノ製作者が増えてきて、購入するハードルが下がるといいですね。
柴田 幸運なことに、日本からフォルテピアノ奏者、たくさん出てるじゃないですか。平井千絵さん、オランダの七條恵子さん、羽賀美歩さんもいらっしゃるし。そういった方にまずはコンタクトとってみたりするのもいいかもしれませんよね。
川口 フォルテピアノは楽器ごとにまったく違うから、プレイエル弾きたいっていう人が最近けっこう多いんだけど…。
柴田 そうなんだ。なんで?
川口 「ショパンを当時の楽器で弾いてみたいんですけど」って相談を受けるときに、どのぐらいのレベルで弾きたいかというのがすごく重要。本気で弾きたいんだったら、まずヴァルター Anton Walter を知ってから、時代を下っていくのがすごい理想的。楽器に触れる環境がないと厳しいけれども、フォルテピアノを始めたい人は、まずいちばんデリケートな18世紀の楽器に触れることによって、指のベーシックな部分を知ることができる。そしたら、あとは19世紀の楽器は、ある程度その応用編で…もちろん楽器ごとにいろいろ変わってくるけれども。いちばん難しいのは18世紀の楽器なので、漠然と「フォルテピアノやりたい」という人がいたら、「まず18世紀の楽器に触れてみてください」って僕は言いたいです。「プレイエルでショパンを弾きたい!それだけなんです」っていう人はね、また話が変わってくるけれども…。本気で弾きたい人は18世紀からやるべきだと思う。
僕は、フォルテピアノの練習として電子ピアノも活用しています。1万円くらいのすごく簡易的な電子ピアノなんだけども、モダン・ピアノで練習するよりヴァルターに近い(笑) でも、それは本物の楽器をしっかりやった上でなければ…
柴田 それは本物のフォルテピアノのタッチを知ってるからでしょ?
川口 知ってるから対応できる。モダン・ピアノで練習するよりは、この電子ピアノでやってるほうが指の感覚としてはいいなと。つまり鍵盤の浅さがね。電子ピアノが非常に浅いから。その浅い中でのコントロールの練習ができるのはいい。でも、何も知らないで電子ピアノだけで練習してても、やっぱり難しいかもしれない。
柴田 カシオさんに小倉貴久子&川口成彦監修の電子ピアノを作ってもらおう。
川口 (笑)
小倉 でもね、やっぱり電子ピアノって倍音の感覚がないじゃない?
川口 そうそう、そこがねぇ。
小倉 それで音楽つくっていくとねぇ。サブ楽器としてならいいんだけど、電子ピアノだけというわけにはちょっといかない。
柴田 それ、わかる! プラスチックのトラヴェルソもそうなんですよ、倍音がないんですよ。それだけが残念で。
小倉 まぁ、クラヴィコードだよね。一番手頃なのはね。
柴田 大好き。ヴィブラートかけられるしね。ぐいぐいぐいぐい!って。
川口 あとはスクエアピアノ。ヴァルターのタッチとはまた違うんだけれども、現代のピアノとまったく違う繊細さというのはわかるかな。あと最近、三重県の菰野町(こものちょう)に楽器博物館がオープンしたんですよ。お客さんもみんな触れるので、鍵盤の浅さを体験するとか、そういう場としてはいいんじゃないかと僕は思っています。演奏法でいちばん難しいのって指先のコントロールだから…
柴田 手首使っちゃダメなんでしょ?
小倉 そう。指先でね。
川口 最後は指だけを動かす…。
小倉 第一関節がね。
柴田 あ、第一関節なんだ?
川口 僕の場合、4年はかかった。どうしても最初、手首を動かしちゃう。
柴田 演奏するときにワカメみたいになっちゃう。フルートも(似たようなことが)あるよ。
川口 音色をピアニッシモからフォルテッシモまで全部コントロールして演奏するというのは職人芸の世界と言ってもいいくらいだから…
柴田 職人ですからね、僕たちね。
川口 まだ、そのレベルには達していないかもしれないけど(笑)、ものすごく繊細だから、その繊細さを知るという意味ではそういう楽器に触れられる場があるのはいいですね。
♪Chapter 12 貴重なフォルテピアノ・アカデミーの試み
小倉 私は、「フォルテピアノ・アカデミーSACLA」というのを毎年やっていて。今度、7月に川口くんにもゲスト講師を務めてもらう予定です。そういう場は日本にまだ他にないし、練習してレッスンを受けるということが重要だと思うので、練習室で練習もできるようにしてます。それで他の人のレッスンも聴いてもらう。たった3日間でも、けっこうみなさん変わるんです。なんか人生を持ってくる人たちが多くて…(笑)
柴田&川口 人生を持ってくるって…???(笑)
小倉 ただ弾くだけではなくて、気持ちの面でも変化が起こる。アカデミーでは、タンゲンテンフリューゲル(タンジェント・ピアノ)、クラヴィコード、クリストフォリとかいろんな楽器があるんだけど、ふだんはモダン・ピアノだけ弾いている人も、18世紀から19世紀初頭までの打弦システムの楽器の中で、3日間練習して、レッスンも受けて、人の演奏を聴くという経験をすると、すごく変わるよね。
川口 0が1になるときですね。
小倉 弾き方のポイントみたいなものを教えると、一生懸命みんなそれを練習するのね。3日間だけでは全部を知ることはもちろんできないけれども、きっかけにはなる。そこからどうやって自分で研究していくのかが難しいんですけどね。
川口 地方の音大の人が、けっこう迷ってる人が多くて。とある大学も学生が練習したあとに調整する人がいないから、「触らないでください」ってなっちゃってるそうです。おそらく練習用に開放してないと思う。学校運営の話になってしまうけど、そこに調整ができる人が呼べるくらいの予算が…
柴田 それってまったく箱物行政と同じで、ハードがあってソフトがないという日本の昔からの大問題。ものじゃなくて人にお金を使ってほしい。
川口 せっかく楽器があるので、「とりあえず音大生は触れます」という状態になるといいですね。
小倉 そうやっていくと、状況も変わるよね。
柴田 製作やメンテナンスする人がどんどん増えていってくれたらいいですね。
第4回フォルテピアノ・アカデミーSACLA
2022.7/22(金)〜7/24(日)さいたま市 プラザウエスト さくらホール
講師:小倉貴久子、川口成彦
https://fortepianoacademy.jimdofree.com
♪Chapter 13 東京春祭でフォルテピアノと共演
柴田 そういえば、僕、東京・春・音楽祭でフォルテピアノと一緒にバッハをやるので、聴きに来てください! 4月18日、月曜日の夜です。チェンバロとジルバーマンのフォルテピアノ、両方置いて。
小倉 久保田さんの?
柴田 両方とも久保田彰さんの楽器を持ってきて。アンソニー・ロマニウクとあれをやるの、フェンダー・ローズ。坂本龍一とかが弾いてた電子ピアノ。60年代に流行ったのかな。
川口 アンソニーがよくやってるヤツね。普通の電子ピアノとは違うんだ。
柴田 まったく違う。ああいう音はいま作れない。浜松市楽器博物館に2、3台あるくらい。それを全部a=400Hzにして、3台。
小倉 え! 400!? え〜、面白い。
柴田 僕の使ってる楽器が400 Hzだから。クヴァンツも、アイヒェントップフ Johann Heinrich Eichentopf というライプツィヒのバッハの時代の楽器も、両方とも400にします。僕はバッハとフィリップ・グラスを吹くんですけど、彼はたぶんリゲティもやる。
川口 面白そう!
柴田 ジルバーマンもフォルテピアノだし、バロック時代のフォルテピアノも面白いからね。どんどんピアノの人たちがフォルテピアノを弾いてくれるようになったらいいなと思いますので、お二方、これからも“布教活動”をよろしくお願いします!
♪Chapter 14 ショパン・コンクールと古楽
柴田 ところで、10月のショパン・コンクールは、ご覧になりましたか? あれに関して話したいことがあるんですけど、牛田(智大)くん本人が語っていた、右手と左手の分離の話ってありましたよね。
川口 ずらすヤツ?
柴田 そう。モーツァルトが手紙に書いてたやつ。ガチ古楽奏法ですよね。それについて審査員がNOって言ったというのが、あっちでもすごく話題になっていて。
小倉 そうなの? それが(3次に進むことができなかった)理由?
柴田 それが嫌だって言った人がいたと言われています。それですごく審査が荒れたっていうのがあって… まぁ、それはともかく、ショパン・コンクール、どう感じましたか?
川口 全員をしっかり聴いたわけではないけど、僕から言えるのは、反田(恭平)くんとか(小林)愛実さんとか、牛田くんもそうだけど、みんなすごいキャリアを積んでるのに、ああやってコンクールに出るのはプレッシャーだったろうなと。カッコいいなと思いました。あと、全員を聴いたわけではないからなんとも言えないけど、ピリオド楽器のショパン・コンクールができたからなのか、本家のショパン・コンクールが「スターを見つける場」となったのかな…と。第2回のピリオド楽器のコンクールも開催されるなら今年には情報が出そうですね。まだ分かりませんが。もし今後モダン楽器とピリオド楽器の2つのショパン・コンクールが開催され続けるとしたら、両者の役割が同じになってはいけませんよね。
柴田 棲み分けがうまくできていないとね。
編集部 ぶらあぼでもシュクレネルさんに取材をする機会があって、やっぱりそこをぶつけたんですよ。「ピリオド楽器のコンクールもできた今、審査の基準についてどのように考えていますか?」というような主旨の質問をしたんですけど、政治的な感じの答えが返ってきて…(笑)
一同 かわされた(笑)
川口 アカデミックなショパンをピリオド楽器に求めるんだったら、モダンのショパン・コンクールはすごいスター性のある人を見つける場というのでも面白いのかなと思うけど。演奏をそんなに聴いていないから、みんながどれくらい楽譜を読み込んでいたかまではわからない…。ピリオド楽器のコンクールで僕と一緒に2位なったアレクサンドラさん(アレクサンドラ・シフィグット Aleksandra Świgut)は聴きました。1次予選でダメだったんですが。でも、彼女の演奏を聴いたら、「この人はプレイエルを知っているな」と感じたし、僕は彼女の演奏もやはり好きでした。音楽って最終的には“人間”だなと思います。それぞれ違う人間なので、みんなの音楽が魅力的で、あとは審査員の好みに合うか合わないか、なのかなと思うけど。あのレベルになると、みんなうまいじゃないですか(笑)
小倉 好みの問題になってくるよね。
柴田 コンクールは僕は一度も出たことなくて、まったく語れない人間なのでね(笑) みなさん、出場するだけでも素晴らしいことです。今後ショパン・コンクールがどう展開していくのか、ピリオド楽器を演奏する我々も注目していきたいと思います。
【Concert Information】
■小倉貴久子《フォルテピアノの世界》第5回
エラール・ピアノで聴くドビュッシー
2022.2/4(金)17:00 豊洲文化センター ホール
クロード・ドビュッシー:
〔ピアノソロ〕〈ベルガマスク組曲〉 喜びの島 夢 〈ピアノのために〉
〔歌曲〕星の夜 〈二つのロマンス〉 マンドリン 月の光 〈忘れられし小唄〉より
〔連弾〕〈4手のための小組曲〉
フォルテピアノ:小倉貴久子
ソプラノ:野々下由香里
フォルテピアノ連弾:羽賀美歩
使用楽器:エラール Erard(1890年 パリ)85鍵 ※ナトリピアノ所蔵・修復
https://www.mdf-ks.com/concerts/mondo5/
■江口玲 & 川口成彦 ピアノリサイタル
プレイエル(1843年)・スタインウェイ(1887年)によるショパン&ショパン
2022.3/10(木)18:30 行徳文化ホール I & I
ショパン:
春Op.74-2
2つのポロネーズOp.26
エチュードOp.10-3, 9, 12
エチュードOp.25-1, 5, 10
ラルゲット (《ピアノ協奏曲第2番》より) ほか
使用楽器:プレイエル(1843年製)、ローズウッドスタインウェイ(1887年製) ※タカギクラヴィア所蔵
https://www.tekona.net/kiuchi/event_detail.php?id=1478
■紀尾井レジデント・シリーズII
川口成彦(第1回)“プロムナード〜with エラール(1890年)”
2022.4/6(水)19:00 紀尾井ホール
バッハ:主よ、人の望みの喜びよ(マイラ・ヘス編曲)
グリーグ:ホルベルク組曲 op.40
グリーグ:ピアノ・ソナタ ホ短調 op.7
チャイコフスキー:哀歌 op.72-14
ムソルグスキー:展覧会の絵
使用楽器:エラール Erard(1890年 パリ)85鍵 ※ナトリピアノ所蔵・修復
https://kioihall.jp/20220406k1900.html
■東京・春・音楽祭
柴田俊幸(フラウト・トラヴェルソ)&アンソニー・ロマニウク(チェンバロ/フォルテピアノ)
2022.4/18(月)19:00 東京文化会館(小)
J.S.バッハ:無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013 より 第3曲 サラバンド(フルートとチェンバロ版)
即興(鍵盤楽器独奏)
J.S.バッハ:
フルート・ソナタ ハ長調 BWV1033
イギリス組曲 第2番 イ短調 BWV807 より 第1曲 前奏曲
フルート・ソナタ ロ短調 BWV1030
P.グラス:ファサード
J.S.バッハ:フルート・ソナタ ホ短調 BWV1034
即興(鍵盤楽器独奏)
J.S.バッハ:
音楽の捧げ物 BWV1079 より 第7曲 上方五度のカノン風フーガ
フルート・ソナタ ホ長調 BWV1035
https://www.tokyo-harusai.com/program_info/2022_toshiyuki_shibata_anthony_romaniuk/
小倉貴久子 Kikuko Ogura, fortepiano
東京藝術大学を経て同大学大学院修了。アムステルダム音楽院を首席卒業。ブルージュ国際古楽コンクール、アンサンブル部門およびフォルテピアノ部門で第1 位と聴衆賞を受賞。50 点以上リリースのCDの多くが各新聞紙上や「レコード芸術」誌等で推薦盤や特選盤に選出されている。文化庁芸術祭レコード部門〈大賞〉、ミュージック・ペンクラブ音楽賞やJXTG音楽賞を受賞。シリーズコンサート「小倉貴久子の《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》」全40回を2019年に完結。北とぴあでシリーズ「小倉貴久子と巡るクラシックの旅」を開催中。フォルテピアノ・アカデミーSACLA主宰。東京藝術大学古楽科及び東京音楽大学非常勤講師。
Twitter / @omoklahe
https://www.mdf-ks.com
川口成彦 Naruhiko Kawaguchi, fortepiano
1989年に岩手県盛岡市で生まれ、横浜で育つ。第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール第2位(2018)、ブルージュ国際古楽コンクール・フォルテピアノ部門最高位(2016)、第1回ローマ・フォルテピアノ国際コンクール〈M. クレメンティ賞〉優勝(2013)。フィレンツェ五月音楽祭など欧州の音楽祭にも数多く出演を重ねる。協奏曲では18世紀オーケストラなどと共演。2019年のワルシャワの音楽祭『ショパンと彼のヨーロッパ』ではポーランドの古楽オーケストラ {oh!} Orkiestra Historycznaと共演。東京藝術大学大学院およびアムステルダム音楽院の古楽科修士課程をいずれも首席修了。
録音は『ゴヤの生きたスペインより』(MUSIS, レコード芸術および朝日新聞特選盤)など。最新アルバムはポーランドでソプラノのアルドナ・バルツニクと録音した『A few words about love…』(2021年)。
Twitter / @NaruhikoK
https://naru-fortepiano.jimdofree.com
柴田俊幸 Toshiyuki Shibata, flute/flauto traverso
フルート、フラウト・トラヴェルソ奏者。大阪大学外国語学部中退。ニューヨーク州立大学卒業。アントワープ王立音楽院修士課程、ゲント王立音楽院上級修士課程を修了。ブリュッセル・フィルハーモニック、ベルギー室内管弦楽団などで研鑽を積んだ後、古楽の世界に転身。ラ・プティット・バンド、イル・フォンダメント、ヴォクス・ルミニスなど古楽器アンサンブルに参加し欧州各地で演奏。2019年にはB’Rockオーケストラのソリストとして日本ツアーを行った。ユトレヒト古楽祭、バッハ・アカデミー・ブルージュ音楽祭などにソリストとして参加。アントワープ王立音楽院音楽図書館、フランダース音楽研究所にて研究員として勤務した。たかまつ国際古楽祭芸術監督。 『音楽の友』『パイパーズ』『THE FLUTE』Webマガジン『ONTOMO』などに寄稿。
Twitter / @ToshiShibataBE
Instagram / musiqu3fl711
https://www.toshiyuki-shibata.com