CROSS TALK 〜古楽とその先と〜
Vol.1 柴田俊幸 × 鈴木優人

 ベルギーを拠点に活躍するフルート&フラウト・トラヴェルソ奏者で、たかまつ国際古楽祭芸術監督を務める柴田俊幸さんが、毎回話題のゲストを迎えて贈る対談シリーズが始動! モダンとヒストリカル、両方の楽器を演奏するアーティストが増えている昨今、その面白さはどんなところにあるのか、また、実際に古楽の現場でどんな音楽づくりがおこなわれているのか、ヨーロッパの古楽最前線にいる柴田さんが、ゲストともに楽しいトークを展開します。バッハ以前の音楽は未だマイナーな部分もありますが、知られざる名曲は数知れず。その奥深き世界に足を踏み入れれば、きっと新しい景色が広がるはずです。

左:柴田俊幸 右:鈴木優人

 記念すべき最初のゲストは、バッハ・コレギウム・ジャパン首席指揮者、読売日本交響楽団指揮者/クリエイティヴ・パートナーにして、まもなく始まる調布国際音楽祭のエグゼクティブ・プロデューサーでもある、皆さんお馴染みの鈴木優人さん。オランダ・ハーグ王立音楽院に学び、鍵盤楽器奏者としても古楽界を牽引してきた優人さんと柴田さんが、かなり脱線気味に(!)古楽の魅力を語るひとときを、どうぞお楽しみください。

♪Chapter 1 What is Early Music?

柴田 第1回のゲストにお越しいただき、ありがとうございます! 僕は古楽の世界に入ったのがすごく遅いのですが、優人さんは、若いときから、というか生まれたときから、バッハなど昔の音楽に触れてこられたと思います。いま音楽家として、指揮者として活躍されている中で、それってプラスになりましたか? 良かったと思われていますか?

優人 そうですねぇ。そうでなかった人生を生きることはできないので(笑)、ちょっとわからないですけどね。バッハは起源ではないけど大きな節目の人物なので、特にウチの親(注:バッハ・コレギウム・ジャパンを創設した鈴木雅明さん)がバッハに取り組んでいたというのは、いま振り返ってもありがたいことですね。

柴田 僕もよく言ってるんですが、古楽って「古くて新しい」という面があると思うんですけど、そういったところでの良さというのを優人さんのほうからもお話してもらえるかなと・・・。

優人 古楽という言葉自体が翻訳語というか、“Early Music”あるいは“Alte Musik(古い音楽)”という単語から来ている。この間フォルテピアノの友人(重岡麻衣さん)が、学校で「古楽器の献品を募集してます」という案内の一例に「使い古しの鍵盤ハーモニカ」とあったらしく・・・(笑)

柴田 それ、バロック・オーボエの三宮正満さんからも聞いた!(爆笑)

優人 でも、それ文字通り間違ってないからね(笑)。古い楽器という意味での古楽、まぁ古い楽器を使ってどう演奏するか、という。オリジナル楽器で演奏するという発想。たとえば、ストラヴィンスキーにしても矢代秋雄にしても、オリジナル楽器というのは存在すると思うんですよね。それは、たぶん今はまだ近い時代の人だと思っているけど、どんどん変わっていくと思うし。今日もこれから藤倉大さんと打ち合わせするんだけど・・・。

柴田 藤倉大さん、お世話になっております。イギリスからZOOMでですよね?

優人 そう。藤倉さんが使う変なミュートとか、後の時代の人から見たら「あれは何だったんだろう?」って研究対象になるだろうし、そういう意味で古楽というのは、幅広い言葉だなぁと思うんです。やっぱり「作曲家のアイデアに触れたい」という思いですからね。

柴田 藤倉大さん、面白い作曲家ですよね。今度トラヴェルソのための曲を書いてもらえそうで、ずっとご相談させてもらっています。

優人 おお〜!

柴田 それで連絡とってたので、もしよかったらよろしくお伝えください(笑)。

優人 はい、言っておきます。素晴らしい!

♪Chapter 2 古楽とコンテンポラリーは相性良し!

柴田 この前も読響で、ケージとヴィヴァルディの「四季」をやってましたよね。コンテンポラリーとアーリー・ミュージックを組み合わせたプログラムでしたが、現代音楽と古楽って優人さんの中で通ずるものがあるんですか?

優人 そうですね。あれは、モダン楽器のオーケストラでバロックの曲をやろうという企画でした。モダン楽器の場合、逆に簡単に時代を飛び越えることができますから。そういえば、前にアンサンブル・ジェネシスというグループで、2台、3台使って、ヴァイオリンも持ち替えてもらって、やったことがあるんですよ、現代音楽と古楽を。それはそれで非常にやりがいのある楽しいイベントだったんですけど、持ち替えはけっこう大変でね。弦の人にとっても、ピッチも変わるしね。その点で、この前の(読響の)ケージとヴィヴァルディは、あまりアカデミックな接点があるというわけではないけれど、ちょっとぶつけてみて(笑)、何が起こるかなと思ってやってみたら非常に面白かったんですね。必ずしも、同じ場所にいたから、とか、同じ師匠の筋だから、とかいうルーツは関係ないんだけど、そういうのもかえって刺激的だな、と。

柴田 Confrontation(対立)っていうか、何か違うものを突き合わせてっていう・・。

優人 そうそう。ガチャン!(笑)

柴田 きれいにおさまるものだけがアートじゃないですよね。

優人 そう、だから非常にミスマッチだったですよね。対極っていうか。

柴田 それが、逆に言ったら新鮮に感じたんじゃないですか。

優人 そうです、聴いてる側はね。演奏会の初めはそれこそ、まずプリペアド・ピアノで始めた。で、プリペアドのピアノも衝撃だと思うけど、その後にヴィヴァルディを聴くと、プリペアドに慣れた耳には、逆にE durの「春」の出だしがすごく衝撃的に感じるという・・・。

鈴木優人

柴田 新鮮ですよね。

優人 そう、そういう感じで。最後だんだん溶け合っていく・・そういうコンセプトでやりました。

柴田 なるほど。

優人 私はいま読響のクリエイティヴ・パートナーを務めているんですけど、あの公演は「大手町シリーズ」という、オーケストラのレパートリーからは離れた室内楽の企画をできるシリーズで、わりとメンバーもみんなね、企画してやるんですよ。で、今年も「月に憑かれたピエロ」とかやります(注:2021年12月3日 よみうり大手町ホール)。

柴田 それはシェーンベルクだけやるんですか?

優人 いえ、それとまた他の曲をかませて。で、1回目がけっこううまくいき過ぎたので、今回何やろうかって、こないだもすごい議論していたんですけど。

柴田 そういうのは何人かみんなで決めるんですか?

優人 僕はそういうほうが好きですね。人によるので、自分で「うーん」って書斎で考えたりする人もいるけど、僕はなるべくみんなで考えたい。みんなのアイデアを吸収できるっていうのもあるけど、やっぱりいろんな人がいろんな意見を言ってくれると、それに対して生理的な反応がある。「それはいいな」とか「嫌だな」とか、それがアイデアづくりの要かな。

柴田 それは古楽アンサンブルのリハーサルのやりかたに似てますね。民主的っていうか。

優人 そうそう。だから「指揮者の意見は何ですか?」って指揮台で言われると、ちょっと困るんですよね。

柴田 わかります、わかります!

優人 そういうことじゃないんだよって(笑)思ってしまう。個々のプレイヤーの経験とか音楽性が発揮できる環境っていうのは、古楽にインスパイアされて、モダンのオーケストラにももっと広まったらいいなと思ってますね。

柴田 そこらへんは難しい。僕ら古楽界隈の人たちが当たり前って思っていることが、ひょっとしたらモダンのオーケストラで弾いてる方にとっては、当たり前でないかもしれない。そういうのは擦り合せというか、時間かかりますか?

優人 自分のなかではもう、その違いには慣れています。やっぱり社会が違うので。音楽家としてそこにいる社会が。

柴田 そこにリスペクトはあるけど。

優人 もちろん!

柴田 違いがあることを理解した上で歩み寄る。多様性を尊重し、フレンドリーな関係で。

優人 そうですね、そこはレパートリーによっても「この音楽はこういうものを求めている」っていうことをみんなが納得できたら、きっとアンサンブルの仕方も変わってくる。

♪Chapter 3 音楽にジャンルは要らない

柴田 クラシックファンじゃない人、もしくは古楽ファンじゃない人、つまり一般的なクラシックファンの人にも、古楽ってもっと訴えかけられるくらい魅力的な音楽メディアだと思っているんです。そんな中で優人さんなりに・・・あ、優人さんって呼んで大丈夫ですか?今さらなんですけど。

優人 それはNGで(笑)。

柴田 ええーっ、NGですか!?

優人 ウソです(笑)。

柴田 この前もユウジンさんっていう話しましたよね。

優人 あー、そうそう。どっちでもいいです。本名マサトです(笑)。

柴田 でも、みんなはユウジンさんと呼んでいる。えーと、何の話でしたっけ?(笑) 僕的にはクラシック聴いてない人にも、古楽を聴いてほしいんですけど、優人さんなりに「こういう良さがあるんだよ」っていうのを、ひとつふたつ教えて下さい。

優人 音楽を聴いていない人って、そんなにいないと思うんですよね。だからクラシックじゃない音楽を積極的に好きな人と、音楽全般に疎いと思っている人と、まず分かれるのかなと思うんだけど。何か極めている、「このバンドが好き」とかそういうのがある人の場合、いろんなところで繋がってって、要は「作曲家や歌い手が死んじゃった時代の作品」に興味を持つということはありえると思うんですよね。古楽に限らないけど。ビートルズを聴くのとちょっと似てるかもしれないですけどね。そのへんってネットワークみたいに繋がっていくじゃないですか。今なんかアプリでRecommended for Youってすぐオススメが来るから。

柴田 受け身であっても、あっちから来てくれますからね。

優人 そうですね。ただ、そのへんApple Musicとかでも僕が気になっているのは、どうやってアレを選んでいるのか。ジャンルとか入れるでしょ。あれって本当に必要なのか?って思うんですよ。それによってレコメンデーションが変わっちゃうと、せっかくAIなのにもったいないな、と。

柴田 それだけで可能性がすごく低くなっちゃう。

優人 そうそう。だから、いまパッと思いついたから言うけど、エマーソン聴いている人に突然ファルコニエーリのトリオ・ソナタが推薦されてもいいと思うんですよ。たとえばBPM(注:beats-per-minute テンポのこと)が一緒だとか、何かしら興奮のダイナミクスが似ているような曲だったら、もしかしたら直でロックからバロックにつながるっていうのはありえるかもしれない。

柴田 そういうのって、旅行業界と似てるところがあるんじゃないかと思うんです。昔、「ここです」っていう定番の観光スポットがあったじゃないですか。それも“ザ・クラシック”とすごい似てて。でも、いま旅行業界も、そういうものだけじゃなくて「こっちもあります」とマイナーなところも含め提案している。同じようなことが音楽業界全体でもジャンルを超えてやっていけたら、すごく全体が活性化するんじゃないかと。

優人 だからApple Musicの開発者も意外とジャンルというデータを大事にしているのか?っていうのを知りたい。Spotifyにしてもそうですけど。

柴田 それ、優人さんだったら直接Appleに電話したらいいんじゃないですか(笑)。

優人 いや〜、僕ずっと日本のApple Musicでマサトの字が間違ってたんですよ。「正人」になってて、実際そういう名前のミュージシャンもいらっしゃるんで。で、その人の曲とゴッチャになって入っていて。

柴田 あー、それは辛かったですね。

優人 けっこう大変だったんですよ。レーベル通して・・・でもアメリカに言っても、アメリカの人は何のことだかわからないし(笑)。

柴田 そうですよね。僕もね、Apple社にコンタクトとったことあるんですよ。絵文字にうどんがないんですよ!!!

(一同爆笑)

柴田 マジ!ホントに! ラーメンはあるのに、うどんとか蕎麦はない。アレ、作ってほしい!

優人 蕎麦もないよね。だから、ラーメンっていうのがそれだけインターナショナルなアイコンなんだろうなぁ、と・・・。僕もこの前、蕎麦食べながら「蕎麦なう」って書こうと思って。

柴田 そうそう、あるでしょ!

優人 これでラーメンの絵文字入れたらクレームが来そうだなと。

柴田 もしくは、負けた感じになる。僕もイヤだからラーメンの絵文字は使わないようにしている。

優人 じゃあ、うどんの絵文字と蕎麦の絵文字と、どっちが先にできるか・・・!?

柴田 今度、高松市長を通してやっておきます(笑)。

♪Chapter 4 違っていることを恐れない

柴田 先週、とある著名なギタリストと2人でお話ししていたときにも話題になったのですが、演奏法のアップデートがヨーロッパに比べてやや遅れてくるという傾向についてです。その時はベルカント唱法についての話題がメインだったんですが。。。優人さんもヨーロッパに長くいらっしゃったからわかると思いますが、ヨーロッパには、「いろんなものがいて、違っていて全部いい」みたいな文化がある。演奏法だけに限らず、日本って文化的に画一化してしまうところがあるのかもしれないのですけど、芸術家として、何か優人さんが思うこと、あるいは「こうなってくれたらいいのにな」ということはありますか?

優人 歌の場合も器楽も一緒だと思うんですけど、結局先生からの教わるときの教わり方なんですよね。先生はベルカント唱法ですよ、でも私はこう歌いたい。それが先生へのリスペクトと同じレベルであるべきなんですよ。先生にとっても教える対象が、ちゃんと自分のやりたい方向が見えている方が絶対に多くのものを与えられると思う。だから、なんとなくベルカント唱法になっちゃうのは、なんとなく先生に追随していった結果なんだと思うんですよね。藝大なんかでも、教えていらっしゃる方は、信念をもって教えている方が多いと思うんですけど、そこに学生として入って、他のものを追い求める勇気がなかなかencourage(奨励)されない雰囲気はある。だから、留学っていう言葉がrevalation(解放)と同義語になっちゃうのは良くないんじゃないかと思います。別に国内にいたって、いろんなものを模索すべきだと思う。だから10代、20代の大事な時間を「他の先生に習ったら自分の先生の機嫌が良くないかな」とか、そういうことでロスしてほしくない。

柴田 青春はほんと短い時間ですからね。素直に育ってもらいたい。

優人 教える側の勇気っていうか、自分が100%与えるけど、教えてる相手は別な人格だから。いろんなことして多様性が自分のクラスにできたほうが、教えてる側も絶対花開くと。

柴田 それが本当の意味での「先生」かもしれないですね。

優人 そうだと思います。そういう意味でヨーロッパに行くことだけが正解じゃないけど、やっぱりヨーロッパは大陸なので、地続きでいろんなものが共存しなきゃいけない。

柴田 周りと違っていることに慣れている。

優人 そうですね。体に芯がないと隣の人の言うことに流されてると、どんどん全部が“ひとつのローマ帝国”になってしまう(笑)。そういう反省から・・・オランダはオランダ、ベルギーはベルギーっていう、その考え方の芯の持ち方っていうのはヨーロッパの人はうまいというか。イギリス人は(日本と)同じ島国なんだけど、ちょっとやっぱり違うキャラクターを持っている。

柴田 彼らは大英帝国の感覚をまだ引きずって生きているのもあるかも。大陸のヨーロッパ諸国の人とはまた違うキャラクターですよね。

優人 それもそうですけど、アカデミズムによっても守られた国威というか、そういうのがイギリスですよね。

♪ゲスト鈴木優人さんオススメの一曲
アンドレア・ファルコニエーリ:チャッコーナ
Andrea Falconieri (1585-1656): Ciaccona in G

理由:とにかく楽しい!(笑)

♪Chapter 5 ベルギー vs オランダ

柴田 先ほどベルギーとオランダって仰ってたと思うんですけど。ときどき、この話をベルギー、オランダの音楽家の人にするんですけど、どうですか、ベルギーとオランダ、似てますか?違ってますか?

優人 僕は全然違うと思いますよ。オランダ語が違うんで。

柴田 たしかに。

優人 ベルギー内のフラマン語って呼ばれているオランダ語の柔らかさっていうか、フランス語と同じにならないようにしようということから、例えばフランス由来の外来語をベルギーの中では使わないんですよね。ベルギー内のオランダ語において。で、オランダのオランダ語はもう少し発音は汚いし!(笑)

柴田 汚い・・というか、はっきりしている(笑)。

優人 そう、はっきりしてる。ちょっと汚いですよ。

柴田 僕らがしゃべるフラマン語はもう少し柔らかいと思うんで。

優人 (優しく) 「フーデ ミダッハ」(注:Goedemiddag こんにちは)っていう感じじゃないですか。

柴田 そうそう。ベルギーは「フゥイェ ミダァフ」、Gの発音が違う。

優人 僕、(語頭を思い切り強く発音しながら)「フーデミダッハ!!」だから。そのフーーッて言うのが強い。そこに象徴される感じもあるけど、オランダの人たちって面白いくらいオランダの中での細かい違いを気にしていて。オランダ語の方言辞典とかあるんですけど・・・

柴田 へぇー。

優人 じゃがいもっていうのを何ていうかっていうのも、村ごとに全部チャートになってたりして。

柴田 なんかオランダのほうが、オランダは国としてひとつだっていうのが強いんですよね。ベルギーは「言語圏が違うと仲が悪いけど、まぁサッカーやってるときだけ一緒になるよ」みいたいなイメージがありますよね。

優人 で、その2ヶ国語を平等に扱うことへの神経の配り方がものすごい。オランダにおいては、いちおうオランダ語のみが公用語ですから。そういった部分でだいぶ感性が違うのかな、と。

柴田 その結果、ラテンとゲルマンをいっしょくたにした国と、オランダみたいにゲルマンほぼ一色というなかで、文化的違いから演奏にも出てくると思いますか?

優人 まあねぇ。そこは国籍で論じるのは難しいかもしれないけど・・・。オランダ人のEarly Musicのパイオニアたちはたくさんいますが、特に初期の古楽においてはその人たちの個性の違いがけっこうあって。レオンハルトなのか、コープマンなのか、ブリュッヘンなのか。そこでの違いがものすごく僕らには大きく見えてる。でも全員オランダ人じゃないですか。だからオランダ人がどうこうっていうのは言いづらい感じはあります。ただ、その時代に比べると、ドイツでもフランスでも、スペインもイタリアも、Early Musicの人が圧倒的に増えているんで・・・。

柴田 そうですね。昔は後進国って言われてたのに、いまはもうすごい数が。

優人 ただ、増やしたきっかけはオランダにあるかもしれない。僕が卒業したハーグの王立音楽院は、古楽科だけで200人くらいいたんですよ。そんなにいていいのかっていうか、本当に「昨日楽器始めた」みたいな人もいたから、レベルの差はいろいろあったけど、でもラテンの人もたくさんいたし、そういう人たちが何十年も活動することで広まったというのはあるかもしれないですね。

♪Chapter 6 指揮者 鈴木優人の視点

柴田 ところで、優人さんは鍵盤楽器奏者としてのフィルターを通して指揮されているのでしょうか? それとも全く別の角度から? けっこういろんな指揮者いるじゃないですか。トン(コープマン)とか、どう考えても鍵盤楽器の考え方で振っているのをすごく感じるし、フィリップ・ヘレヴェッヘだったら、「あ、この人は合唱ずっとやってきたから、やっぱり歌の人なんだなぁ」と思うこともある。そういった意味で優人さんは?

優人 いろいろ混じってるんですよね。僕はまず作曲家でもあって、作曲家の視点がひとつ。もちろん、鍵盤楽器の視点がひとつ。たとえば、オーケストラでフォーブルドンが出てきたとき、レ‐ファ‐シ、ミ- ソ‐ド、ファ‐ラ‐レとか行くときに、自然に手がこうなって(親指、人差し指、小指を広げる仕草)ますよね。

柴田 ハハハ。おもろいですね。

優人 そういう視点もあるけど、もうひとつは歌い手としての視点。僕は歌手じゃないんですけど、ずっと長年ヴォクス・ルミニス(注:Vox Luminis リオネル・ムニエ率いるベルギーの古楽アンサンブル)とかやってて。

柴田 あー、ヴォクスやってたんですか!

優人 ヴォクスのプリンシパル・オルガニストだったんです。だからベルギーしょっちゅう行ってたんですよ。

柴田 そうなんですか。

優人 だいたいベルギーの村は全部行きました。それで、彼らとやってると、やっぱりオルガン1台と歌手8人とかだから、すごく歌の視点を大事にしますね。で、もうひとつは、僕もトラヴェルソやってたんですよ。

柴田 え? やってはったんですか!

優人 小6からトラヴェルソを始めて・・・。

柴田 小6からトラヴェルソって、どんだけ渋いんだ(笑)。

優人 ほら、鍵盤は小さい頃からいつの間にかやってるわけですよ。でも、トラヴェルソは能動的に「この楽器吹いてみたい」と思って始めた最初の楽器。亡くなった中村忠さんっていう有田門下の先生に大学生くらいまでずっと習ってたんですね。今度ボワモルティエでもやりますか?

柴田 そうですね(笑)。

♪Chapter 7 都心にいちばん近い田舎の音楽祭

柴田 優人さんがエグゼクティブ・プロデューサーを務める調布国際音楽祭が近づいています。ご自身も調布のご出身なんですよね?

優人 調布は、長年育った街です。生まれはオランダなんですけど、基本的に調布はウチがずっと住んでた場所。最近はベッドタウンとして人口がめちゃくちゃ増えているんですよ。

柴田 昨日もちょうど調布にいたんですけど、お蕎麦おいしいし。

優人 深大寺蕎麦ね。すごくいい街ですよ。

柴田 ビックリするくらい近いし。あの近さは何なんだ?

優人 新宿から15分。だから“都心にいちばん近い田舎の音楽祭”を目指してます。調布に来たことがない方にとっては、どんな街だろうというワクワク感もすごくあると思います。グリーンホールもけっこう年季が入った施設なんですけど、素朴な良いホールで気に入っています。もうひとつ500席の響きの良いたづくりホールというホールと、2箇所がメイン会場となっています。昨年はイベント全部中止になって、オンラインでやろうと、クラウドファンディングで資金を集めて・・・。

柴田 そうでしたね。

優人 また、今年はリアルのコンサートをやろうと思っていますが、まぁどうなることやら・・。とてもアットホームで良い音楽祭なので、みなさん来てもらいたいです!

調布国際音楽祭 2021
2021.6/27(日)〜7/4(日)

調布市グリーンホール、調布市文化会館たづくり くすのきホール、深大寺 本堂、調布市せんがわ劇場
エグゼクティブ・プロデューサー 鈴木優人 
出演:森下唯(ピアノ)、鈴木雅明(指揮)、鈴木秀美(チェロ)、村治佳織(ギター)、カルテット・アマービレ、木嶋真優(ヴァイオリン)、バッハ・コレギウム・ジャパン、調布国際音楽祭フェスティバル・オーケストラ、読売日本交響楽団 ほか

♪Chapter 8 狙うは家電指揮者!?

柴田 車好きなんですか?

優人 車、好きですよ。見るのも好きです。

柴田 指揮者の人って、なんか車とか飛行機好きな人多いですよね。

優人 カラヤンみたいにね。

柴田 そうそう。飛行機は?

優人 操縦はできないんですけど、でもやりたいですね。もちろん乗るのは好きで。『管制官になりたい本』とか、『パイロットになる本』とか、ウチにいっぱいあります。

柴田 すぐ落とされるんですよね、試験で。

優人 そう。あと、飛行機乗るときによく持っていくのがフライトマップ。飛行機ってどういうルートで飛び立って、どこのVOR/DME(注:距離・方位を知るための航行支援施設)を通っていくかが全部決まっているので、そのルートを見ながら飛行機に乗って「今日は座間ディパーチャーだな」とか・・・そういうのを見るの好きです。

柴田 音楽以外の趣味ってあるんですか?

優人 あと電車も好きでした、小さい頃から。

柴田 鉄ちゃんじゃない?

優人 鉄ちゃんっていうほどじゃないけど、でも乗り鉄で日本中わりと乗りました、JRは。だから四国もずいぶん乗ったんですよ。

柴田 ああ、仰ってましたね。

優人 あとは、まぁ趣味って言っていいのかわからないけど、だいたい電化製品は好きですね。

柴田 えー、なんで?

優人 “家電芸人”っているじゃないですか。だから、“家電指揮者”!? そういう新しいガジェットになりたいですね(笑)。

柴田 わからないんですけど。家電芸人って何ですか? 僕が日本にいない間にいろんなものが起こってるんですね。

優人 あまり趣味っていうほど時間を費やせないんですけど、あとボードゲームも好きですね。将棋とか囲碁とか。

柴田 ボードゲーム好きな人、めちゃくちゃ増えましたよね。フォルテピアノの小倉貴久子さんのご自宅でも遊ばしてもらいました。最近流行りなんですか?

優人 最近バックギャモンにはまって。やったことあります? 分かる?

柴田 やったことあります。

優人 今度やりましょう。

柴田 ぜひぜひ!

優人 あれは二人でやるので、将棋とかと似てます。昔は麻雀みたいに賭け事だったと思うんですけど、単純に頭脳プレイとしても面白くて。

柴田 ちょうどここのスペースいいですね。

優人 ここは麻雀できそう。雀荘ぶらあぼ(笑)。開催の際は呼んでください!

♪Chapter 9 演奏家の個性が際立つ面白さ

──── 古楽というジャンルは、以前に比べればずいぶん普及しました。音楽としてはシンプルでポップスに近いような面もあるので、クラシックをあまり聴かない人にもむしろとっつきやすいのではないかと思います。でもとくに初期バロック以前の音楽は、クラシック好きのなかでも一部の熱心なファンの楽しみにとどまっている印象もあります。文化的背景などさまざまな要因があると思いますが、いかがですか。

優人 僕、両方大事だと思っています。知らない人にももちろんアクセシブルなほうがいいし、たとえばポップスにしてもロックにしても、プレイヤーとコンポーザーがわりと同一であることが多い。

柴田 まぁ、そうですね。

優人 それとは古楽はちょっと違う面はあるけど、奏者に委ねられている解釈の領域が古い音楽ほど広いので、その部分で個性が際立つ感じがするんだと思うんです。奏者のほうは一生懸命研究して「作曲家の意図は何か」とか「時代のスタイルは何か」とか、わりと考えて古い資料を追究しているんですけど、結果として、演奏家の個性や特徴がすごく出やすいジャンルなのかもしれないです。だからポップスとかから来ても入りやすいのかもしれない。クラシックのほうが“正しい演奏”みたいなのがあるような・・・。

柴田 ザ・クラシック。言葉どおり。

優人 古典ということですよね。そこにおいては、あまり変なスタンドプレイは嫌われるというか、ちょっと入りづらい感じもあるかもしれません。でもね、残っているクラシックの作曲家の人たちって、だいたいぶっ飛んでる人ばかりですよね。

柴田 いや、ホントぶっ飛んでる人ばかりですよ。むしろ、ぶっ飛んでいるというのを言わない教育もちょっと残念だと思いますけどね。パーッとオブラートに包んで、芸術家たちを「素晴らしい人なんですよ」っていう風に学校教育で教えるっていうのも「どうなんや?」ってときどき思いますね。

優人 そうですね。人格なんか全然素晴らしくないかもしれない。

柴田 破綻している人も少なくない。

優人 でもまぁ、一方で音楽をやっている人に悪い人はいない、じゃないけど、やっぱり音楽を愛する気持ちを持っていた人ばかりだとは思いますから、音楽聴くと心が落ち着いたりすることもありうると思います。そういう意味では、全然詳しくない人が聴いても絶対に得るものはあると思います。あと、もうひとつ大事なのは、クラシックを大好きな人たちに、その音楽の「ルーツはこっちから来てるんだよ」っていうのを知ってもらうということですね。

──── いま、古楽器もモダン楽器も両方演奏するプレイヤーが増えていますよね。演奏家がそうなれば、聴衆も変わっていくのかなと。そういうこともあってこういう企画をスタートすることに・・・。

優人 ボーダーレスの時代になってきていますよね。

柴田 僕がこの企画に適任かどうかわからないけど。

優人 とりあえずバナナを・・・(笑)いい演出ですよ。(机の上においてあったバナナを手にとる)バナナシェイプっていうのが古楽の演奏家はよく使うんですよね。

柴田 メッサ・ディ・ヴォーチェ (messa di voce) ですね。

優人 そう。テヌートは音をピーッと保つこと、スタッカートはチョンなんですけど、どっちでもなくて、ワーーンとしゃべるような形をつくる。その「音の形をつくる」っていうのがすごく大事で、たとえばバロック・ボウ(弓)を使ったりとか、あるいはベーム式よりも安定しないトラヴェルソを使う理由もそこにあるのかもしれないけど、音符の中の形って、楽譜に書けないじゃないですか、そこまで。まぁ、松葉 < > でクレッシェンドを書くぐらいが限度。でも、そういうのをこのバナナシェイプっていうのがひとつ象徴するので。これはなかなか象徴的だと思います。

柴田 素晴らしい。僕もそういうことを知ってて持ってきました。・・・ウソですけど(笑)。


🎼 Pause(小休止)🎼 卵かけご飯と釜玉うどん

柴田 この前会ったときに話した、優人さんの卵かけご飯の作り方を、僕、釜玉うどんでやってみたんです。めちゃ美味かった!
優人 あー、釜玉も、カルボナーラもそれが問題。要は、白身と黄身っていうのは全然違うものなのに、溶いて使うもんだから温度ですごい反応してしまう
柴田 まさにベルギーみたいな感じ。
優人 まずワロン(ベルギーのフランス語圏)をかけてから・・・
柴田 フラマン(ベルギーのオランダ語圏)入れてかきまぜる。
優人 それで一滴ドイツ語圏(=醤油)を入れて・・・
柴田 はい、ベルギーサッカーチームのできあがり・・みたいな。
優人 この話、誰にも伝わってない(笑)。(編集部に向かって)おいしい卵かけご飯の作り方で、要は白身を先にご飯と混ぜる。それだけなんですけど。
編集部 へぇー。
優人 それによってめちゃくちゃホモジナイズド(均一化)される。黄身を入れちゃうと温度で固くなっちゃって、混ざる前に。白身を入れてやるとご飯全部が包まれるので、チャーハンもあのやり方で行ける!


♪Chapter 10 古楽もモダンも、ボーダーレスの時代へ

優人 たとえばホルン奏者の福川(伸陽)さんみたいに、モダン奏者だからとシャッター下ろさずにナチュラルホルンにチャレンジしたり、みんなそれできるポテンシャル持ってるんですよ、いま活躍してるプロの奏者は。あとはマインドひとつ。僕、いちばん(古楽に)引きずり込んでいるほうだと思うんだけど。あるオケのリハに行ったら、僕なんにも言ってないのに、ナチュラルトランペット持ってそこに座ってた。モダンオケですよ。逆にこっちが心配になっちゃって。事務局に怒られないかなぁと(笑)。

柴田 いずれはブラームスのシンフォニーで多鍵式フルートが出てくるような時代になったら面白いかもしれないですね。

優人 それはすぐにできると思う。

柴田 そうですね、楽器さえあればね。

────古楽に誘うときには何て言って誘うんですか?

優人 それは企業秘密なんですけど・・・とか言って冗談ですけど(笑)。やっぱり、まず誘う姿勢があることを伝えるのが大事ですよね。「われわれ古楽なんで〜」みたいには絶対しないほうがいいし、そんなことして守れるものもないので。すごく上手な人、優秀な人が興味持って参加してくれたらいいですね。

 学生の頃とかは、友だちに「こんなの弾いてみない?」と言って楽器渡してみたりして、それだけでも得るものはあるんですが、でもやっぱりプロフェッショナルの演奏会をやるには、ちょっとやってみたくらいではできない。モダン楽器もかなぐり捨てて勉強してきた人と同じような自己同一性までは達しない。それも残念なので、やっぱり気長に待つ。

柴田 恋愛と一緒ですね。あんまり知らないですけど(笑)。

優人 まぁ、恋愛と一緒かもね〜。でも、恋愛は二股は良くないけど、演奏家の場合は何股でもかけられる。

柴田 ああ、そうですね。デュオパート、たとえばフルートとチェンバロでやってても、デュオが代わってもいい。そしてそれぞれの結果が違って面白い。

優人 やっぱり音楽の会話っていうのは抽象的な分、そういうのが楽しい。だから、古い楽器に興味を持つ人には、いろんな入口があるんですよ。例えばバッハを弾いてて、本当にバッハの求めていたヴァイオリンの無伴奏はこういうんじゃないんじゃないかっていう疑問からガット弦張ってみたり。ウチの叔父さん(注:バロック・チェロの鈴木秀美さん)も最初はそうだった。最初、ガット弦張って、ヨンイチゴ(a=415Hz)で桐朋の試験を受けたらしいんですよ。当時の桐朋学園で、そんな形でチェロ科の試験受けるのは目をつけられそうなことですけど、興味があって抗えずにそういうことやっていた。今の時代は、そんなことしても誰も怒らないというか、みんな知っているから足を踏み入れやすい。その次のステップである勉強の部分も、最近チャールズ・バーニーが翻訳されたりとか(注:18世紀〜19世紀はじめの音楽史家で、ヨーロッパ各都市を巡った記録を『音楽見聞録』として出版した。当時の音楽事情を知る上で最も重要な著作のひとつ)、重要な文献が日本語訳されていて、今はとても恵まれていますよね。

柴田 いままで外国語で読んでいたものが日本語で手に入る時代になったので。

優人 バルトの本(注:バルトルド・クイケン著『楽譜から音楽へ バロック音楽の演奏法』)を山響に持って行ったら、チェロの子が読みたいって言って、貸してあげたりして。昔だったら英語で読まなきゃいけなかったしね。

柴田 あと、ブルース・ヘインズ(注:2011年に他界したアメリカのオーボエ、リコーダーなどの管楽器奏者にして音楽学者。研究者としては、特に歴史的演奏習慣についての権威だった)訳してほしいですね。

優人 そう、ピッチの話ね。

♪Chapter 11 YouTubeは便利だけれど・・・

──── お二人ともSNSを活用していらっしゃいますが、音楽家はどう発信していったら良いと思いますか?

柴田 ひとつだけ言いたいのは、フルの演奏動画をYouTubeに上げちゃうって、まだ抵抗がある。古いタイプの人間で。

優人 僕もあります。

柴田 演奏会に来る導線になるような、そういう役割をするんだったら、ちょっとくらいは演奏を入れてもいいけど。でも入れるなら、できる限り高音質なものを入れたいし。ただ、無料で、誰でもアクセスできるところで音楽が垂れ流しになってしまうのはちょっと残念に思います。その点はどう思いますか?

優人 私も同感で、昨年の調布の音楽祭は全部無料でやったんですけど、コストは全部クラウンドファンディングでカバーされた、ということが前提でした。去年の6月の段階では、まだメディアを通して音楽を鑑賞するといのが、見る側がまだ慣れてないという時代だったのが、いまやけっこう当たり前のようになってきますけど。ただ、ライブ会場で、音楽をある程度拘束されて聴く環境とは全然違って、早送りできるし、止めてトイレ行けるし(笑)。音楽の聴き方としては非常に集中力を欠いたものだと思うんすよ。だから、あながちオンラインを発展させることだけが今から進むべき道だとは思わないです。ただ、仰る通り、それこそこういった、『ぶらあぼ』みたいなメディアにいろんな繋がり方をどんどん取り入れてもらって、それに僕らを使ってもらうというか・・・。音楽家が最終的にやってることは最終的には目の前で音楽を奏でることでしかないんですけど、それがどういうところに乗っかっていくか。昔はCDもなかったわけですからね。クヴァンツがどんなに偉い人でも、クヴァンツの演奏を知る方法がなかったわけですよ、宮廷に行かない限り。

柴田 そうですね。

優人 でもその時代は、クヴァンツの演奏を聴くっていうのは一般の人にとってはワクワクして寝られない、そういうものだったわけですよね。その感覚は失くさないようにしたいなと思いますね。


【Concert Information】
アフタヌーン・コンサート・シリーズ 2021-2022前期
鈴木優人 オルガン・リサイタル
2021.9/1(水)13:30 東京オペラシティ コンサートホール

たかまつ国際古楽祭芸術監督:柴田俊幸
2021.9/25(土)、9/26(日) 香川県文化会館、穴吹邸、茶室 美藻庵・晴松亭、高松市美術館

鈴木優人(指揮/ピアノ/オルガン/チェンバロ/作曲)

Masato Suzuki (c) Marco Borggreve

東京藝術大学及び同大学院修了。オランダ・ハーグ王立音楽院修了。第18回齋藤秀雄メモリアル基金賞、第18回ホテルオークラ音楽賞、令和2年度(第71回)芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)首席指揮者、読売日本交響楽団指揮者/クリエイティヴ・パートナー、アンサンブル・ジェネシス音楽監督。指揮者としてNHK交響楽団、読売日本交響楽団等と共演。2017、2020年には鈴木優人プロデュース・BCJオペラシリーズを制作、上演。モンテヴェルディ:歌劇「ポッペアの戴冠」(2017)、ヘンデル:歌劇「リナルド」(2020)はバロック・オペラの新機軸として高く評価されるとともに多くの話題を呼んだ。メディアへの露出も多く、NHK-FM「古楽の楽しみ」レギュラー、テレビ朝日「題名のない音楽会」にもゲストとして度々出演している。録音はハルモニア・ムンディよりアントワン・タメスティ(ヴィオラ)との新譜をリリース(2019)。調布国際音楽祭エグゼクティブ・プロデューサー、舞台演出、企画プロデュース、作曲とその活動に垣根はなく各方面から大きな期待が寄せられている。
Twitter / @eugenesuzuki
Facebook / masatosuzukimusic
Instagram / masatosuzukimusic

柴田俊幸(フルート/フラウト・トラヴェルソ)

Toshiyuki Shibata (c) Shiho Kozai

フルート、フラウト・トラヴェルソ奏者。大阪大学外国語学部中退。ニューヨーク州立大学卒業。アントワープ王立音楽院修士課程、ゲント王立音楽院上級修士課程を修了。ブリュッセル・フィルハーモニック、ベルギー室内管弦楽団などで研鑽を積んだ後、古楽の世界に転身。ラ・プティット・バンド、イル・フォンダメント、ヴォクス・ルミニスなど古楽器アンサンブルに参加し欧州各地で演奏。2019年にはB’Rockオーケストラのソリストとして日本ツアーを行った。ユトレヒト古楽祭、バッハ・アカデミー・ブルージュ音楽祭などにソリストとして参加。アントワープ王立音楽院音楽図書館、フランダース音楽研究所にて研究員として勤務した。たかまつ国際古楽祭芸術監督。   『音楽の友』『パイパーズ』『THE FLUTE』Webマガジン『ONTOMO』などに寄稿。

Twitter / @ToshiShibataBE
Instagram / musiqu3fl711
https://www.toshiyuki-shibata.com

✈️ 柴田俊幸のベルギー 🇧🇪 miniレポート

優人さんとの夢のような対談のあと、私はベルギーに飛びました。ベルギー大使館で渡航許可証をいただいた後、すぐにPCR検査を受け翌日成田空港へ。ファイザーのワクチンを日本に運んでいるANAのベルギーの直行便は土曜日にしか飛んでおらず、今回はKLMでアムステルダムまで飛び、そこから陸路でベルギーを目指すことに。空港でKLMのグランドスタッフのお姉さんが本当にヨーロッパの入国審査時に問題がないか、丁寧に何度も何度も調べてくださいました。お姉さん、ほんとうにありがとうございました。そして皆さま、本当にご苦労様です。

アムステルダムに到着後、電車でベルギーに向かいます。陸路では何のチェックもなく、サクッとアントワープ駅に到着。ベルギーに帰ってきての最初の目的はCD録音。鬼才パトリツィア・コパチンスカヤともデュオとして活動している鍵盤楽器奏者アンソニー・ロマニウクと一緒にJ.S.バッハのフルート・ソナタ集+α(まだ秘密)を録音します。

アンソニーは優人さんとのお話の中にも登場したベルギーの古楽アンサンブルのヴォクス・ルミニスで優人さんの後をついでオルガニストとして演奏しています。彼自身、クラシック、古楽だけでなくジャズやロック、電子音楽など全ての音楽に長けているスーパーマンです。そんな彼と一緒に音楽が作れるのが楽しみでなりません。

新型コロナの感染者数もヨーロッパで一番酷かったと言われるベルギーでは、演奏会の中止や延期が続いているわけですが、Live配信とCD録音だけは行われています。一方で、6月9日からは観客を入れての演奏会、またレストランの室内営業が可能になります。早くヨーロッパでも演奏会がしたくてたまりません。同時に食レポも随時行っていければなと思います。

写真・文:柴田俊幸