
文:編集部
2月3日、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と首都圏6つのオーケストラのメンバーたちが輪島市で能登半島復興支援公演を行なった。企画したのは全国40のプロオーケストラが加盟する日本オーケストラ連盟。これまでも東日本大震災や熊本地震の際にも被災地を訪ねチャリティコンサートを開催してきた。今回の能登半島地震でも多くのオーケストラから支援の申し出があったが、今も被災地では大規模なコンサートの開催が難しいことから、各団体から希望者を募って、その選抜メンバーでコンサートを開くという形になった。参加したのは、以下の12名。
ヴァイオリン
大和 加奈(東京都交響楽団)
梶野 絵奈(東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団)
ヴィオラ
林 康夫 (東京都交響楽団)
磯 多賀子(東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団)
榎戸 崇浩(読売日本交響楽団)
正田 響子(読売日本交響楽団)
チェロ
海老澤 洋三(千葉交響楽団)
コントラバス
ダニエリス・ルビナス(オーケストラ・アンサンブル金沢)
フルート
立住 若菜(パシフィックフィルハーモニア東京)
クラリネット
遠藤 文江 (オーケストラ・アンサンブル金沢)
坂本 由美子(東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団)
ホルン
アンジェラ・フィオリーニ(オーケストラ・アンサンブル金沢)
曲目は、「サウンド・オブ・ミュージック」メドレーや「花は咲く」、YOASOBIの「アイドル」、葉加瀬太郎作曲の「情熱大陸」など親しみやすい曲に、J.シュトラウスⅡ世の 「クラップフェンの森で」や「美しく青きドナウ」などクラシックの曲も並び、バリエーション豊なプログラムが用意された。

最初の演奏会場は、 輪島市立門前中学校。市内3つの小中学校の生徒が招待された。なかなか生演奏に触れる機会が少ない生徒たちからは次のような感想が寄せられた。
「演奏を聴いて鳥肌がたった。オーケストラの魅力がわかった」
「『クラップフェンの森で』の小鳥のさえずりが頭から離れなかった」
「なぜか心がとてもゆったりとした感覚になった」
「オーケストラの演奏は圧巻でした。楽器の音が美しく、音楽の深さに改めて感動して心が引き込まれました」
またアンコールでは、3校の校歌をメドレーで演奏するというサプライズが設けられた。生徒たちは、生演奏に合わせて歌うという贅沢な体験に感激し、会場には笑顔がこぼれた。
「オーケストラの人達がめちゃくちゃ感動的な前奏をつけてくれるなんて思いもしなかったのでびっくりしました!」
「いつも歌っている校歌より豪華で楽しみながら歌うことができました」

次の演奏会場は門前町道下第一団地という仮設住宅の集会所。客席はすぐに満員となり演奏後には、
「元気をもらえました!」
「遠くからよくここまで来てくれました、来てくれて本当にありがとう!」
と多くの喜びの声があがった。
今回の被災地訪問コンサートに参加したOEKのクラリネット奏者 遠藤文江さんに感想を尋ねた。

「学校でのコンサートでは、校歌メドレーの演奏に先生方は涙を流してくださりました。中学生は母校である小学校の校歌も思い出しながらみんな大きな声で歌ってくれて、歌は人の結びつきを強めるものなんだと改めて感じ、私達も感動をいただきました。
仮設住宅を訪ねてのコンサートは今回が初めてでした。自宅で不自由なく暮らしている自分が訪問して演奏することを、被災者の皆さまは受け入れてくださるのだろうか?と心配もしましたが、皆さま『よくここまで来てくれたねえ』と、笑顔で迎えてくださり心配は吹き飛びました」

「会場には、手を伸ばせば届きそうなところまでたくさんの方が集まってくださり『どんな人たちが来てくれたんだろう?』『どんな音が聴けるんだろう?』と興味津々なご様子でした。終演後は多くの人が声をかけに来てくれて、お別れするのがとても名残惜しかったです。
被災者の皆さまが『自分たちの所まで来てくれたこと』をとても喜んでくださったと感じ、皆さまにお聴きいただける『音楽』というものが自分にあって良かった、と強く思いました。
『また聴きたい、またぜひ来てくださいね』とおっしゃってくださり、『バラが咲く頃にバラ園で計画しているコンサートがあるからその時にまた会いましょう』と約束しました。
出発する時には、何人もの方が見送りをしてくださり『ありがとう!また来てね、また会いましょう』と帰る私たちに手を振ってくださいました」
