2大現代作曲家の対照する世界観
父ネーメ、兄パーヴォはもちろんだが、クリスチャン・ヤルヴィを忘れていただいては困ります。ドイツのMDRライプツィヒ放送交響楽団をはじめ、世界中の主要オーケストラを縦横無尽に指揮しながら刺激的な音楽を生み出している彼の姿は、ときに父や兄よりも過激に、そして現代的に映るかもしれない。
しかし彼もまたヤルヴィ家の一員だった。同じエストニア出身の作曲家であるアルヴォ・ペルトの音楽を愛し、作曲者自身からヒントを与えられながら多くの作品を指揮しているのだ。都響の第807回定期演奏会では、代表作といえる「フラトレス」、そして前衛的な手法から脱却しつつ独自の作風へと向かった初期の作品といえる「交響曲第3番」を取り上げる。息を潜めて感じるようなペルト特有の音楽は、都会の喧噪へのアンチテーゼとしてホールに響くことだろう。
そして、ペルトの曲とはまったく異なる運動性・グルーヴを生み出し、聴いていると身体がリズムをとってしまうスティーヴ・ライヒの音楽も、クリスチャンが得意とする作品だ。特に「フォー・セクションズ」は日本初演であり「弦楽器」「打楽器」「木管&金管楽器」「フル・オーケストラ」という4段階の流れをもつ曲だけに、演奏するオーケストラのスキルが問われる難曲である。ペルトと併せ、都響との演奏によってこそ生み出される現在進行形の音楽は、東京という都市にふさわしい。聴かず嫌いはもったいない一夜なのだ。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)
第807回 定期演奏会 Bシリーズ
5/18(水)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp