エリソ・ヴィルサラーゼ(ピアノ)

若い集団との初共演にもうワクワクしています

C)Nikolai Puschilin

 ジョージア(旧グルジア)出身で、ゲンリフ・ネイガウス、ヤコフ・ザークという歴史に名を残す名ピアニストに師事したエリソ・ヴィルサラーゼは、ロシア・ピアニズムの真の継承者として、来日のたびに深い印象をもたらす演奏を披露している。その彼女が、以前にショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全15曲を1日で演奏するという快挙を成し遂げたロシア出身のアトリウム弦楽四重奏団と共演することになった。ヴィルサラーゼと彼らは初共演である。
「アトリウム弦楽四重奏団の録音は聴いています。とても生命力にあふれた演奏をするクァルテットで、若くはつらつとして音楽に自信がみなぎっています。共演するのが非常に楽しみで、ワクワクする思いを抑えきれません」
 ヴィルサラーゼは、自身が彼らと演奏したいと願うモーツァルトのピアノ四重奏曲第1番をプログラムのオープニングに選んだ。
「モーツァルトで演奏を始めるのはとてもいいでしょう?その後ショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲が控えていますから、バランスを考えたのです。ショスタコーヴィチはアトリウム弦楽四重奏団が十八番としている作曲家。私も大好きな作曲家ですから、ここでじっくりと私たちのアンサンブルを聴いていただきます」
 ヴィルサラーゼがこの作品を初めて演奏したのはかなり前のことで、フィンランドのクフモ音楽祭でのこと。その後、ロンドンのウィグモア・ホールでボロディン弦楽四重奏団と共演した。このときは高熱に見舞われたが、キャンセルしたくなかったため出演し、幸いなことに演奏は成功した。
「私は長いキャリアのなかでほとんどキャンセルはしていません。ちょっと具合が悪くても、演奏が始まれば忘れてしまいます」
 シューベルトの弦楽四重奏曲第12番をはさみ、最後はシューマンのピアノ五重奏曲で幕を閉じる。
「シューマンの曲はジョージア国立弦楽四重奏団、ボロディン弦楽四重奏団と共演したことが印象に残っています。シューマンは大好きな作曲家ですが、この曲は非常に難しい。小規模な交響曲のようで、多彩で音に厚みがある。細部まで神経を張り巡らさねばなりません。アトリウムQとの共演で何か新たな発見があるのではないかと期待しています。私はいろいろな人と共演するたびに、弾き慣れた作品でも新たな面を見出す。二度と同じ演奏はしませんし、常に新鮮な演奏を心がけています。それが演奏家の使命ですから。だって、同じことをくりかえしていたら行き詰まるでしょう」
 ヴィルサラーゼの新機軸に期待したい!
取材・文:伊熊よし子
(ぶらあぼ 2017年8月号から)

エリソ・ヴィルサラーゼ & アトリウム弦楽四重奏団
2017.11/28(火)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 
http://www.kioi-hall.or.jp/

他公演
エリソ・ヴィルサラーゼ & 新日本フィルハーモニー交響楽団
2017.11/23(木・祝)すみだトリフォニーホール(03-5608-1212)