日本フィルハーモニー交響楽団は10月25日、来年5月18日、19日に行われる第700回東京定期演奏会についての記者懇談会を開いた。上演機会の希少なストラヴィンスキーの大作「ペルセフォーヌ」が日本初演されることが話題となっており、指揮のアレクサンドル・ラザレフ、ナレーションを務めるドルニオク綾乃が本作について語った。
(2017.10/25 都内 取材・文:林昌英 Photo:I.Sugimura/Tokyo MDE)
ラザレフは「日本ではストラヴィンスキーといえば『春の祭典』が人気だと思いますが、私はあえて取り上げていません。『ペルセフォーヌ』はいい曲です。難しいのは、演奏者がたくさんいることで、人が多すぎて、指揮台まで通る場所がありません!」とユーモアをまじえながら、本作を委嘱したロシア出身のバレリーナ、イダ・ルビンシュタインについて話を続けた。
「『ペルセフォーヌ』の誕生に重要な役割を果たしたのがイダ・ルビンシュタインです。とても美しい女性でしたが、踊りの教育を受けておらず、踊りは下手だっただろうと私は思います(笑)。ストラヴィンスキーはスコアの最初のページに、イダ・ルビンシュタインの注文で作曲し、初演にも参加した、などと書いていて、スコアに彼女の名前はしっかり刻まれています」
本作には、オーケストラ、合唱、児童合唱のほか、テノール独唱とナレーションが必要となる。ストーリー上の主役であるナレーションは、すべてフランス語で、演劇的な表現や、音楽的能力も求められるが、これらを満たせる存在がドルニオク綾乃である。ベルリン在住で、フランス語、ドイツ語、日本語ができ、舞台でも活躍中のドルニオクは、「日本初演の本作でペルセフォーヌ役を務めさせていただけることを光栄に思い、同時にとても責任を感じています。ギリシャ神話による内容で、セリフと歌と音楽が一体になったユニークな作品ですが、フランス語でペルセフォーヌの気持ちをどれだけ伝えることができるか、頑張りたいと思います」と意気込みを語った。
続いてラザレフは、「『ペルセフォーヌ』の音楽はシンプル。レトロ調というか・・・そういう音楽を書かせたらストラヴィンスキーは天下一品です。ストラヴィンスキーにバッハのかつらを被せるイメージです。私自身は以前ロンドンで演奏したことがあり、今回と同じようにコンサート形式でした」と述べた。
本公演では、テノールは本作の演奏経験豊かな名歌手ポール・グローヴス、合唱はラザレフの信頼厚い晋友会合唱団、児童合唱は山田和樹指揮のマーラー交響曲第8番で名唱を披露した東京少年少女合唱隊と、日本初演にふさわしい顔ぶれがそろった。
なお、この会見の直前には第694回東京定期演奏会のリハーサルがあり、ショスタコーヴィチ交響曲第1番での念入りで厳しい練習ぶりに、見学者も驚き、感嘆していた。常に真摯なリハーサルを積み重ねるラザレフと日本フィルで、知られざる大作の真価が明らかにされる日が楽しみだ。
日本フィルハーモニー交響楽団
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