INTERVIEW 飯森範親(群馬交響楽団 常任指揮者)&伊藤文乃(ソロ・コンサートマスター)

最高の環境を得て躍進するオーケストラを率いて

 群馬交響楽団が元気がいい。今年7月に第600回定期演奏会、2025年度には創立80周年を迎える群響の2024-25シーズン、今後の展望などについて、3月に記者懇談会が行われた。特筆すべきは会見場所が東京だったこと。地元・高崎でいかに充実した活動ができているのか、それを広く伝えたいという意識の強い表れだ。

左:伊藤文乃 右:飯森範親

 そこに象徴される変化は、2019年開館の高崎芸術劇場というすばらしいホールを得たこと、そして飯森範親が常任指揮者に就任してから1年というタイミングであることが大きい。演奏面の充実に加えて、新シリーズの開催、豪華な客演アーティスト、演目の充実など、活動全般に変化が見られるのである。懇談会の直後、飯森とソロ・コンサートマスター伊藤文乃が、群響の変化と充実、展望を語った。

──高崎芸術劇場は本当に評判が良いですね。飯森さんの就任にも影響が?

飯森 正直申し上げて、群響のお話を受けたのは、新しい会場ができたことが間違いなく大きいです。あれだけのポテンシャルがあるオーケストラだし、ちゃんと演奏の箱が用意できれば、いろんな可能性が出てきて、面白いことになるだろうなと。群響の皆さんが私に白羽の矢を立ててくださったタイミングと、高崎芸術劇場っていう屈指のホールの存在、そして私の気持ち、すべてが合致しました。

伊藤 オーケストラが演奏する「大劇場」もいいんですが、「音楽ホール」の音響も最高なんです。ここで室内楽をやりたいとみんなが思ったことで、「室内楽演奏会」シリーズが実現しています。また、飯森さんは雰囲気を良くしてくださる。リハーサルはいい感じで進みますし、公開リハーサルやお客様とお話できる食事会など、様々なことをやっておられて、お客様も嬉しいんじゃないかなと思います。

本拠地・高崎芸術劇場 大劇場での演奏会には、多くの群響ファンが詰めかける
写真提供:群馬交響楽団

──高崎の芸術劇場は、文化施設としても最高の成功例の一つのようですね。

飯森 レストランも美味しいし、施設としてもすばらしい。大きな公共のスペースがあるんですが、学生服の子たちがたくさん来て、勉強しているんですよ。劇場が市民の方々に普通に入っていただける場所になっているのは、本当に画期的なことです。

伊藤 高崎芸術劇場ができたおかげで、群馬のイメージすらも良くなっている感覚があります(笑)。劇場ができたことで駅の周辺もかなり活性化してきました。ちょっと歩けばすぐ駅ですし、生活するにはすごくいい。劇場のおかげで本当に家の周りが明るくなり、気持ちがいいですね。

── 2024-25シーズンのラインナップについて。名曲とチャレンジングな曲がバランスよく組まれていると思います。なかでも第600回という大きな節目があります。まず、マルク・ブシュコフとのコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲が目を引きます。

飯森 ブシュコフは今回どうしても呼びたいソリストでした。とにかくびっくりしたのが、以前聴いた彼の無伴奏リサイタル。もう立てないぐらいすごかったです、本当に。すぐに彼と「日本でコンチェルトやろうよ」と話して、彼も「絶対行くから」と言ってくれて、ついに実現できます。彼は本当に正統的で、ものすごいバッハの無伴奏を聴かせる。こういうヴァイオリニストが今この現代にいるんだな、と知ることができたのは、自分にとって幸福でした。だから彼とコルンゴルトでご一緒できるのは、彼もこの曲が十八番らしいし、すごく楽しみなんです。“激推し”なんて言葉でも足りないくらいです。

──第600回のメインはR.シュトラウス「家庭交響曲」。飯森さんはこの曲をコンスタントに取り上げられていますね。

飯森 原題は「シンフォニア・ドメスティカ」ですが、バイエルンの歌劇場で勉強させてもらっているときに、サヴァリッシュ先生がオーケストラの定期演奏会でこの曲を取り上げて、作品のエッセンス、その歴史、シュトラウス家の家庭環境のこととか、いろいろなことをお話しされて、こんなに面白い曲があるんだなと。細かく分析していくとめちゃくちゃ面白いし、勉強したことが次の芸術的なステップに連れていってくれるような作品だと思います。この曲が高崎の芸術劇場で響いたら、聴いてくださった方はそれを感じて、まさしく本当に群響の“ファミリー”になってくれるんじゃないかなと思っているんですよ。群馬初演だと思いますし、600回という記念の回に挑戦する価値がある作品です。

伊藤 私も「家庭」は弾いたことがないのですが、この記念すべき回に、群響で演奏できるというのはすごく嬉しいですね。

──シーズン全体で、群響初登場という海外の指揮者やソリストが多いとのこと。そういう意味でもチャレンジのシーズンですね。

飯森 もしかしたらプログラミングでは少し大変なことを強いているかもしれません。でもそれが明らかに結果として出てきています。次のステップは、初めての指揮者との出会いというときにも、群響のポテンシャルを発揮できるということです。それが一流オーケストラの証だと思うので、ぜひ実現してほしい。また、「GTシンフォニック・コンサート」という、クラシックとポピュラーをすばらしい演奏家で楽しめるシリーズも始まります。

第587回定期演奏会より 写真提供:群馬交響楽団

伊藤 本当にバラエティに富んだプログラムと指揮者ばかりだと思います。新しい海外からの指揮者たちとご一緒できる、それも新しい良いホールで。そこから別の何かが生まれていくんじゃないかと期待しています。楽員も昔のホールでやっていたときとは雰囲気が違う。芸術劇場ができて5年経ち、ようやく演奏法などが固まりつつあるところに飯森さんがいらしてくださって、いろんなことを提案してくださる。それに乗っていけばいいものが生まれていくんだろうな、という期待もあるし、みんなのモチベーションも上がっていると思います。これからどういう進化をしていくのかなとすごく楽しみです。

──飯森さんは多くのオーケストラでもポストに就いて成果を挙げています。秘訣のようなものはありますか?

飯森 音楽家である以前に、人間としての信頼関係をとにかく一番大事にしてきました。オーケストラと関わるのであれば、まずオーケストラを愛すること、それからオーケストラを支持してくださるお客様たちを大切にするっていう気持ち。あとは健康でいることじゃないでしょうか。様々なことをしていますし、運動するのも大好きで、自己投資は惜しまないようにはしています。今欲しいものは特にありませんが、10年後とか20年後に健康でいられたら、ブルックナーで評価していただけるような指揮者になることが目標です!

取材・文:林昌英

Information
◎2024/25シーズン前期の主な公演

第597回定期演奏会
2024.4/20(土)16:00 高崎芸術劇場

ミシェル・タバシュニク(指揮) ティル・フェルナー(ピアノ)

第48回県民芸術祭参加事業 第45回 森とオーケストラ
4/29(月・祝)12:00 群馬の森 大芝生広場特設ステージ

飯森範親(指揮)

GTシンフォニック・コンサート vol.1『大友直人のチャイコフスキー・セレクション』
5/2(木)18:30 高崎芸術劇場

大友直人(指揮) 東亮汰(ヴァイオリン) 柴田花音(チェロ)

第12回 室内楽演奏会「ファゴット三昧!30年来の旧友と奏でるハーモニー」
5/18(土)15:00 高崎芸術劇場 音楽ホール
奈波和美、夏山朋子、東口泰之、石川了一、西岡千里(以上ファゴット)

第598回定期演奏会
5/25(土)16:00 高崎芸術劇場
原田慶太楼(指揮) ティボー・ガルシア(ギター) 加藤のぞみ(メゾソプラノ)

第599回定期演奏会
6/15(土)16:00 高崎芸術劇場
第54回東毛定期演奏会
6/16(日)15:00 太田市民会館
パスカル・ロフェ(指揮) アレクセイ・ヴォロディン(ピアノ)

GTシンフォニック・コンサート vol.2 大河のテーマ曲傑作選
7/13(土)14:00 高崎芸術劇場

下野竜也(指揮) 池辺晋一郎(ゲスト) 三浦文彰(ヴァイオリン) 原田節(オンド・マルトノ)

Meet the オーケストラ! 群響ふらっとコンサート
7/23(火)10:30 高崎芸術劇場


第600回定期演奏会
7/27(土)16:00  高崎芸術劇場

上田定期演奏会 -2024夏-
7/28(日)15:00 上田市交流文化芸術センター サントミューゼ

飯森範親(指揮) マルク・ブシュコフ(ヴァイオリン)

群馬交響楽団
https://www.gunkyo.com