東京二期会《リゴレット》GPレポートその2

 東京二期会が2月19日から22日まで東京文化会館で、そして25日には大分のiichikoグランシアタで上演する、パルマ王立歌劇場との提携公演、ヴェルディ《リゴレット》。16日に行われたオーケストラ付き舞台リハーサル(20日・22日・25日のキャスト:リゴレット成田博之組)全幕と、17日に行われたGP(ゲネラルプローベ、19日・21日のキャスト:リゴレット上江隼人組)の一部を見学した。
 今回最大の注目は、指揮者のアンドレア・バッティストーニ。2012年2月の東京二期会《ナブッコ》に初登場。あまりに鮮烈な演奏で序曲から会場を熱狂させて大評判になり、一気にその名を知らしめたが、今年4月には東京フィルハーモニー交響楽団の首席客演指揮者に就任することでも注目を集めている。
 そのバッティストーニが東京フィルと共に取り組むのが、ヴェルディ演目の中で彼が最も愛しているという《リゴレット》。3年前よりさらに貫禄と威厳を増したバッティストーニは、オーケストラはもちろんのこと、舞台上の歌手たちまでも完全に掌握しているようで、全員が彼の一挙手一投足に注目して即座に反応していることが客席にも伝わってくる。まだ20代とは思えないほどの求心力で、これが真に“カリスマ”と呼ばれるべき存在なのかと実感させられる。その指揮ぶりは惚れぼれするすばらしさで、思わず見入ってしまう。よく知られている《リゴレット》なのに、初めて聴くような鮮やかな響き、深い打撃音、繊細をきわめた弱音と、全ての瞬間がニュアンス豊かで新しい発見に満ちている。
 とはいえ、目立つのは指揮者ばかりではない。今回、舞台リハーサルよりも前の段階でリゴレット成田博之組による立ち稽古も見学したが、そこでは主役の成田がすさまじい気魄の歌と演技で歌手陣全体を引っ張り、マントヴァ公爵役の山本耕平はじめ皆が自分の出番以外の場面も食い入るように見つめるなど、舞台を作るチームとしての熱気に満ちあふれていた。その成果は舞台でも存分に発揮され、成田を中心に指揮者に負けないテンションで大変な熱演が繰り広げられた。一方、リゴレット上江隼人組は、イタリアに暮らしているという主役の上江が「これぞヴェルディ・バリトン」と表現したくなる立派な歌唱を聴かせ、それに乗って各役の個人技も冴え、堂々たる舞台が形成されていく。両キャストともに違う味わいを持ち、観る者を楽しませてくれる。
 パルマ王立歌劇場との提携公演ということで、同地伝統の美しい舞台が観られるのもうれしい。読み替えは一切無く、衣装も調度も時代考証に合ったきめ細かいもので、わかりやすく初心者でも安心して観られる。しかし、そこは本場の舞台。空間の使い方が独特で、特に第1幕ではジルダの部屋のシーンから大胆な転換が起こり、一気にその部屋を遠景に望む路上の情景になるなど、オペラではちょっと意外な映画のような視覚的効果も発揮されている。
取材・文:林昌英 撮影:M.Terashi & J.Otsuka/TokyoMDE ※写真は2015.2.18 東京文化会館での山本耕平/ 成田博之 / 新垣有希子組GPから)

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◆パルマ王立歌劇場との提携公演
東京二期会オペラ劇場 

ヴェルディ/オペラ《リゴレット》全3幕
日本語字幕付き原語(イタリア語)上演

2015年2月19日(木) 18:30 20日(金) 14:00 21日(土) 14:00 22日(日) 14:00
東京文化会館

2015年2月25日(水) 18:30
iichiko総合文化センター iichikoグランシアタ

上演予定時間:約2時間50分(休憩2回を含む)

■指揮:アンドレア・バッティストーニ
■演出:ピエール・ルイジ・サマリターニ/エリザベッタ・ブルーサ

■キャスト
●2月19日(木)/21日(土)
古橋郷平 / 上江隼人 / 佐藤優子 / ジョン ハオ / 谷口睦美 / 与田朝子 ほか
●2月20日(金)/22日(日)/25日(水)
山本耕平/ 成田博之 / 新垣有希子 / 伊藤 純 / 加藤のぞみ / 小泉詠子 ほか

合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

■チケット
S18,000円 A15,000円 B11,000円 C9,000円 学生 2,000円
(2月19日(木)のみ S16,000円 A13,000円 B10,000円)
※学生席は二期会チケットセンター電話のみの取扱い

■問
二期会チケットセンター 03-3796-1831 
東京二期会オペラ劇場 http://www.nikikai.net/