【WEBぶらあぼ特別インタビュー】東京二期会《リゴレット》を指揮する、アンドレア・バッティストーニ

 2012年の東京二期会公演《ナブッコ》による衝撃的な日本デビュー以来、東京フィル定期での指揮やCDも大好評と、快進撃を続けるイタリア人若手指揮者、アンドレア・バッティストーニ。東京フィルとの2枚のCDに続き、この1月にはイタリアでの本拠であるジェノヴァのカルロ・フェリーチェ歌劇場管弦楽団、合唱団と共演した新譜「イタリアオペラ名曲集」が発売され、オペラ指揮者バッティストーニの真価を知らしめている。
 そのオペラでの待望の再登場となるのが、まもなく開幕する東京二期会公演《リゴレット》だ。リハーサルも順調に進行中だ。2月12日にはイタリア文化会館で、バッティストーニが《リゴレット》の魅力を語る講演会が開催され、膨大な知識と体験に裏づけられた情熱的な語り口で、満員の聴衆を虜にした。本番直前のマエストロに、《リゴレット》の魅力、そして今回の公演の見どころを語ってもらった。
(取材・文:加藤浩子 撮影:M.Terashi/TokyoMDE)

◆2012年に上梓された著作『Non e musica per vechi』のなかで、《リゴレット》はオペラ入門に最適の作品と書かれていますが、その理由を教えて下さい。

「音楽も含め、とてもドラマティックで情熱的な作品で、タランティーノ監督のバイオレンス映画のような要素もあり、きわめて今日的だと思うからです。リゴレットのような異形の登場人物は、古代ギリシャ、ローマから中世、近世の宮廷劇、ブルジョワ演劇へと至る伝統的なものですが、それまでは異形=悪役だった。けれど、ヴェルディはこの定型をひっくり返しました。リゴレットは多面的な人物です。モンテローネに呪われるようなことをする悪人の面もあるけれど、愛情あふれる父親といういい面もある。そこにヴェルディはとても美しい音楽をつけています」

◆音楽的な特徴について教えて下さい。

「ヴェルディはこの作品で、伝統的なベルカントと、とても革新的な音楽、表現主義に近いような音楽の両方を使っています。たいへん興味深いのは、過去の美しい場面を回想するときに伝統的なベルカントを使っていることです。たとえばジルダのアリア〈慕わしき名前〉や、マントヴァ公爵の第2幕のアリア〈頬の涙が〉はベルカントの音楽で書かれていますが、ここでジルダや公爵は過ぎた愛の場面を思い出しているわけです。
 それに対して、劇的な場面、辛く苦しい場面では、とても革新的な音楽を使っています。この激しいコントラストが、《リゴレット》というオペラの大きな特徴だと思います」

◆《リゴレット》をはじめ、ヴェルディのオペラの多くは音楽がシンプルだと言われます。単純、単調だと批判されることもあるわけですが、そのような作品を指揮する難しさはどこにあるでしょう。

「シンプルな音楽を生かすか、退屈に聴こえるようにしてしまうかは演奏家次第です。シンプルに思える音楽に対するセンシビリティが重要なのです。音色や行為も含めて「声」にあわせていくこと、単なる伴奏ではなく、参加して一緒にやるということが大切です。
今回の場合、東京フィルは技術的には素晴らしいので、テンポやアーティキュレーションも含めて音楽的な問題はまったくありません」

◆今回共演する歌手の方について感想をいただけますか。

「とてもレベルが高いと思います。よく勉強していますし。イタリアの伝統をわかっているし、ヴェルディが何を言いたかったかを自分たちで考えて、見つけている。《ナブッコ》で共演した歌手もいますが、みなさんよくなっていると思いますよ」

◆今回、《リゴレット》を初めて見る方もいると思いますし、オペラの公演自体が初めての方もいると思うのですが、そのような方達に、何に注目したらいいかアドヴァイスをいただけますか。

「ヴェルディの、イタリア人の感情表現は他の誰にも真似できない、素晴らしいものです。それは誰にでも伝わると思います。それが《リゴレット》では最高度に発揮されているので、ぜひ感じ取ってください。演出も伝統的で、映画のようでとてもきれいなプロダクションなので、楽しんでいただけると思います」

◆関連記事
●東京二期会《リゴレット》稽古場レポート https://ebravo.jp/archives/16374

◆パルマ王立歌劇場との提携公演
東京二期会オペラ劇場 

ヴェルディ/オペラ《リゴレット》全3幕
日本語字幕付き原語(イタリア語)上演

2015年2月19日(木) 18:30 20日(金) 14:00 21日(土) 14:00 22日(日) 14:00
東京文化会館

2015年2月25日(水) 18:30
iichiko総合文化センター iichikoグランシアタ

上演予定時間:約2時間50分(休憩2回を含む)

■指揮:アンドレア・バッティストーニ
■演出:ピエール・ルイジ・サマリターニ/エリザベッタ・ブルーサ

■キャスト
●2月19日(木)/21日(土)
古橋郷平 / 上江隼人 / 佐藤優子 / ジョン ハオ / 谷口睦美 / 与田朝子 ほか
●2月20日(金)/22日(日)/25日(水)
山本耕平/ 成田博之 / 新垣有希子 / 伊藤 純 / 加藤のぞみ / 小泉詠子 ほか

合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

■チケット
S18,000円 A15,000円 B11,000円 C9,000円 学生 2,000円
(2月19日(木)のみ S16,000円 A13,000円 B10,000円)
※学生席は二期会チケットセンター電話のみの取扱い

■問
二期会チケットセンター 03-3796-1831 
東京二期会オペラ劇場 http://www.nikikai.net/