Noism設立20周年記念公演は「四季」とマーラー交響曲第3番にのせて

 Noism Company Niigata(以下Noism)が、設立20周年記念公演『Amomentof』を、6月りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館、7月彩の国さいたま芸術劇場で上演する。これに先立ち4月19日、芸術総監督・演出振付家の金森穣、国際活動部門芸術監督の井関佐和子、地域活動部門芸術監督の山田勇気らが登壇して会見を行った。

写真提供:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館

前列左より:山田勇気、金森穣、井関佐和子 
後列:Noism1、Noism2メンバー

 Noismは2004年4月、日本初の公共劇場専属舞踊団としてりゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館に設立された。20年間で約160人のダンサーが関わり、また別れを告げてきた。井関はこの記念公演にあたり、芸術総監督の金森に、過去作品のオムニバス的なものではなく「心の底から創りたいと思うものを」と創作依頼したという。

 「20年で一番重要なのは、毎年ここりゅーとぴあで創作、発表しつづけ、お客様が劇場に足を運んでくださっているということです。お客様が劇場に足を運んでくださらなければ、2004年に金森が言った『劇場文化100年構想』というものに到達しえないと思っているので改めて感謝し、ますます飛躍するために精進していきたい。
 20周年は通過点に過ぎません。穣さんがスタジオで作品を創り続け蓄積してきたものの、次の一歩となる作品を観てほしいし、私も観たい。ここにはNoism設立時に子どもだったメンバーもいますが、このタイミングにいあわせた彼らが次の歴史の1ページを作ってくれることを願っています」

井関佐和子

 演目はともに金森の演出振付による新作。Noism0(Noismのプロフェッショナル選抜メンバー)とNoism1(同プロフェッショナルカンパニー)が出演する『セレネ、あるいは黄昏の歌』は、「四季のめぐり」をテーマに、音楽にはマックス・リヒター編曲のヴィヴァルディ「四季」が使用される。
 一方の『Amomentof』は、「A moment of(一瞬の)」のスペースを縮めて作った造語で、20年の闘いが一瞬であった金森の実感と、舞踊家にとって実演とは常に一瞬の出来事であることを指す。音楽はマーラーの交響曲第3番第6楽章「愛が私に語ること」を使用して、Noism立ち上げ当初から在籍する井関を軸に、研修生カンパニーのNoism2を含むNoismメンバーが総出演して、「この音楽を舞踊化する」という。

金森穣

 「舞踊家は小さい頃から稽古を積み重ねてプロになり、舞台で一瞬の勝負をする。『Amomentof』は、対象となる井関と、音楽から感じる『舞踊とはなにか』を舞台に顕現させたい。
 『セレネ、あるいは黄昏の歌』は、『人間とはなにか』を集団として表現できたら。科学技術の進歩に恩恵をうけている現代の社会のなかで、芸術には、その利便性によっておびやかされていくもの、失われていくもの、忘れられているものに向き合うきっかけを与える力があると思っています。そこには『Amomentof』とも共通するNoism20年の歩みのなかで模索、実験、蓄積してきた身体性が総動員されます。
 20回の四季のめぐりを体験してきましたが、一つとして同じ季節はなく、それでもなお時が過ぎていくその無常を“黄昏”というキーワードにからめて創作します。Noismの20年を具体的に想起させる演出をしますので、我々を追ってくださっている方には涙が止まらない、胸にせまる作品になると思います。とはいえNoismの過去をしらない方にも、井関佐和子という一人の舞踊家が蓄積してきた時とエネルギーが舞踊芸術として昇華される様を観てほしいです」

 Noism2を率いる山田は、普段Noism1のアンダースタディとして練習しているNoism2が表舞台に立つことについて、「Noismカンパニーの層の厚さや空間の広がり、奥行きを表現できたらと思います。また次の10年、20年に向け、いまいるメンバーや未来ある舞踊家に希望を与える公演になるようメンバーと一緒にがんばっていきたい」と想いを語った。
 さらに出演メンバーを代表してNoism1の三好綾音は、「昔は海外で働く先輩や友人に憧れていましたが、いま日本の劇場で働けていることに誇りを感じています。Noismは海外への憧れにも負けない夢を20年かけて作ってくれました。この思いを乗せて良い公演にしたいです」と意気込みを語った。

山田勇気
三好綾音(中段左より2人目)

 質疑応答でこの20年の経過について問われると、井関は「振り返れば一瞬に思える20年ですが、設立当初はいまの年齢まで踊っているとは思っていませんでした。『この道を歩いていく』と自分で定めましたが、この道のりにはいろいろなことがありました」。
 
 金森は 「観に来てくださる方たちには感謝しかないです。我々は『舞踊とはなにか』『人間とはなにか』を会下するために日々精進していますが、誰かに観ていただかなければ表現としては成立しません。ただ、その方たちのためにやっているわけではなく、ここの淡いを失すると芸術家として死にます。ものすごい感謝を感じつつ背を向ける。だから背中で愛を感じてほしいです」。
 
 2つの新作に「いま考えているNoismの未来を作品に込めた」と語る金森。その想い、そしてNoismの歩みとこれからの行く末を劇場で体感したい。

Noism Company Niigata
20周年記念公演『Amomentof』

2024.6/28(金)~6/30(日)
新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
7/26(金)~7/28(日)

彩の国さいたま芸術劇場

『セレネ、あるいは黄昏の歌』
演出振付:金森穣
音楽:Recomposed by Max Richter《Vivaldi: The Four Seasons》
衣裳:中嶋佑一
出演:Noism0、Noism1

『Amomentof』
演出振付:金森穣
音楽:Gustav Mahler《交響曲第3番第6楽章「愛が私に語ること」》
レオタード:YUMIKO
出演:Noism0、Noism1、Noism2

問:りゅーとぴあチケット専用ダイヤル025-224-5521
  SAFチケットセンター0570-064-939(埼玉公演のみ)
https://noism.jp
https://noism.jp/amomentof-20th/