トリノ王立歌劇場《仮面舞踏会》ゲネプロレポート

 ヴェルディ生誕200年記念で沸いた2013年。ヴェルディ・イヤーの掉尾を飾る、トリノ王立歌劇場のヴェルディ《仮面舞踏会》のゲネラルプローベ(ドレスリハーサル)が11月28日(木)に行われた。同演目は日本では上演される機会が少ないだけに、注目の公演だ。
 今回のロレンツォ・マリアーニ演出、各場面で目に飛び込んでくるのは、異様に巨大なドア、額縁、ベッド、そして首つり台など。人物の大きさとのアンバランスさにより、運命にあらがえない人間の非力さが象徴されているかのようだ。全体に暗めな色調が土台となっていて、それだけに最後の舞踏会の場に入った瞬間の鮮やかな「赤」への転換が見事に際立つ。転換は一瞬なので絶対にお見逃しなく。
 キャストは期待通りの名歌手揃い。リッカルドのラモン・ヴァルガスは、スター歌手ならではのすばらしい歌唱と存在感で、まっすぐで前向きなリッカルドのキャラクターにもぴったり。観る人すべてを惹きつけてしまうだろう。アメーリアのオクサナ・ディカも遠くまで突き抜けてくる美声で、芯の強さも感じさせながら悩めるヒロインを演じる。レナートのガブリエーレ・ヴィヴィアー二は佇まいが美しく、忠誠心溢れる部下から怒りに満ちた殺人者になるまでの感情の幅を見事に表現。占い師ウルリカのマリアンネ・コルネッティも、まるで魔女たちの集まりのような演出の中で、不気味なまでの存在感を発揮した。今回、唯一の日本人キャストとして出演するオスカルの市原愛は、重いストーリーの中で明
るさやアクセントを効かせる大事な役を魅力的に好演した。
 指揮のジャナンドレア・ノセダは「《仮面舞踏会》はヴェルディの中で最もドラマティックな作品」と語っていた通り、熱いドラマを完璧に作り上げ、理想的な歌手陣と共に、ヴェルディ・オペラの喜びを満喫させてくれる。細かいところまでおろそかにすることはなく、少しでも違和感を感じたときには妥協なく確認し直し、完成度をさらに高めていく。躍進著しいトリノ王立歌劇場の真価を見せてくれる公演になるに違いない。
(Photo:M.Terashi & J.Otsuka /TokyoMDE)


■information

《トスカ》(プッチーニ)
指揮:ジャナンドレア・ノセダ
管弦楽・合唱:トリノ王立歌劇場管弦楽団&合唱団
演出:ジャン・ルイ・グリンダ
出演:ノルマ・ファンティーニ(トスカ)(11/29、12/2)、パトリシア・ラセット(トスカ)(12/5、12/8)、マルセロ・アルバレス(カヴァラドッシ)(全日)、ラド・アタネリ(スカルピア)(全日)
日程:11月29日(金)・18:30、12月2日(月)・15:00、12月5日(木)・18:30、12月8日(日)・15:00
会場:東京文化会館

《仮面舞踏会》(ヴェルディ)
指揮:ジャナンドレア・ノセダ
管弦楽・合唱:トリノ王立歌劇場管弦楽団&合唱団
演出:ロレンツォ・マリアーニ
出演:オクサナ・ディカ(アメーリア)、ラモン・ヴァルガス(リッカルド)、ガブリエーレ・ヴィヴィアーニ(レナート)、マリアンネ・コルネッティ(ウルリカ)、市原 愛(オスカル)
日程:12月1日(日)・15:00、12月4日(水)・18:30、12月7日(土)・15:00
会場:東京文化会館

特別コンサート
「レクイエム」(ヴェルディ)
指揮:ジャナンドレア・ノセダ
管弦楽・合唱:トリノ王立歌劇場管弦楽団&合唱団
独唱:バルバラ・フリットリ(ソプラノ)、ダニエラ・バルチェッローナ(メゾ・ソプラノ)、ピエロ・プレッティ(テノール)、ミルコ・パラッツィ(バス)
日程:11月30日(土)・14:00 会場:サントリーホール

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