特集 トリノ王立歌劇場、いよいよ来日迫る!

躍進著しいイタリア・オペラ界の至宝「トリノ王立歌劇場」が来日する。プッチーニの《トスカ》にヴェルディの《仮面舞踏会》&「レクイエム」という魅力的なプログラムを並べた3年ぶり2度目の来日公演は、2013年のヴェルディ・イヤーを締めくくる豪華なクライマックスとなるに違いない。

(c)田中克佳

イタリア北部の街「トリノ」と聞いて何を思い浮かべるだろう。もしもワインを想像したとしたら、あなたはかなりのワイン通だ。トリノのあるイタリア・ピエモンテ州は極上のワイン生産地として有名。特にトリノ郊外で生産される「バローロ」の素晴らしさは何物にも代えがたい。チョコレートを思い浮かべたあなたはなかなかのグルメだ。トリノには「バラッティ」という名の、とても美味しいチョコレートがある。三日月形をしたこのチョコレートは高級チョコレートの代名詞として知られ、多くのグルメたちに愛されている。自動車を思い浮かべたあなたは間違いなくカーマニアだ。そう、トリノはイタリアの国民的企業「フィアット」の本拠地。イタリア車を中心に美しいクルマがずらりと並ぶ「トリノ自動車博物館」は、カーマニアなら一度は訪ねてみたい聖地なのだ。そして、オペラのことを思ったあなたはかなりのオペラ通に違いない。音楽監督ジャナンドレア・ノセダ率いる「トリノ王立歌劇場」は、今やイタリア随一のレベルを誇るまでに成長したオペラ界最大の注目株。まさに、トスカニーニが君臨していた時代に次ぐ黄金時代の到来というのが、世界のオペラ関係者の共通意見だ。

ジャナンドレア・ノセダ
ジャナンドレア・ノセダ

その話題のトリノ王立歌劇場(以下トリノ)が、まもなく3年ぶり2度目の日本公演を実現させる。プログラムには、前回の来日公演と同じくヴェルディとプッチーニの名作が並び、選り抜きの歌手たちが顔をそろえる。4月のトリノで上演中の《ドン・カルロ》を指揮するマエストロ・ノセダを訪ね、日本公演にかける想いを聞いてみた。
「イタリアには、『勝つチームは絶対に変えない』ということわざがあるのです。今回も、イタリアの音楽の歴史の中で最も質の高い作曲家2人の作品をセレクトしたのはそのためです。プッチーニの代表作であり私自身大好きな《トスカ》。そして、ヴェルディの中で最もドラマティックな作品である《仮面舞踏会》と宗教曲「レクイエム」。この3作品によってイタリア・プログラムを全方位的に紹介したいと思っています。今のトリノは、数多いイタリアの歌劇場の中で最も質の高い演奏を提供できる存在です。最近になって、オーケストラや合唱団、歌手たちの力を完全に引き出せるようになりました。それが現在の高評価につながっているのだと思います。日本では最高のステージをお見せしますよ」

※ジャナンドレア・ノセダ インタビュー全文は こちら

ラモン・ヴァルガス
ラモン・ヴァルガス

同じく《ドン・カルロ》に出演中で、今回の日本公演では《仮面舞踏会》のリッカルド役を歌うラモン・ヴァルガスにも話を聞いた。
「リッカルドというのは、おそらくテノールの中で最も好まれる役でしょう。紳士的なキャラクターですし、この役のために書かれた音楽が本当に素晴らしい。個人的にもとても感情移入しやすい役で、演じるのが楽しみです。そしてトリノ。ここで歌うのは今回が初めてですが、とてもラッキーな気分です。長い歴史がある劇場ですし、素晴らしいオーケストラと合唱団が揃っています。特にマエストロ・ノセダは、自分が何を追及しているのかがはっきりわかっているので、指示も明確でとても仕事がしやすい方です」

※ラモン・ヴァルガス インタビュー全文は こちら

ダニエラ・バルチェッローナ
ダニエラ・バルチェッローナ

出演者やスタッフ、マエストロの話を聞くにつれ、現在のトリノの勢いが浮き彫りになる。そして「劇場の運営がしっかりしているからこそ、海外公演も可能になる」と語るマエストロ・ノセダの言葉にも重みがある。特別コンサートのヴェルディ「レクイエム」に出演するメゾ・ソプラノのダニエラ・バルチェッローナは、「私自身、初めて歌ったヴェルディが『レクイエム』だったので、とても思い入れの強い曲です。これまでに素晴らしい歌手やオーケストラと一緒に何度も歌ってきましたが、これはもうこの世の歌とは思えません。天国の歌ですね。謙虚に歌うことを心がけます」と語る。

※ダニエラ・バルチェッローナ インタビュー全文は こちら

躍進著しいトリノの来日と共に、いよいよヴェルディ・イヤーのクライマックスがやってくるのだ。これは絶対に見逃せない。

取材・文:田中 泰(編集部)


■information

《トスカ》(プッチーニ)
指揮:ジャナンドレア・ノセダ
管弦楽・合唱:トリノ王立歌劇場管弦楽団&合唱団
演出:ジャン・ルイ・グリンダ
出演:ノルマ・ファンティーニ(トスカ)(11/29、12/2)、パトリシア・ラセット(トスカ)(12/5、12/8)、マルセロ・アルバレス(カヴァラドッシ)(全日)、ラド・アタネリ(スカルピア)(全日)
日程:11月29日(金)・18:30、12月2日(月)・15:00、
12月5日(木)・18:30、12月8日(日)・15:00
会場:東京文化会館

《仮面舞踏会》(ヴェルディ)
指揮:ジャナンドレア・ノセダ
管弦楽・合唱:トリノ王立歌劇場管弦楽団&合唱団
演出:ロレンツォ・マリアーニ
出演:オクサナ・ディカ(アメーリア)、ラモン・ヴァルガス(リッカルド)、ガブリエーレ・ヴィヴィアーニ(レナート)、マリアンネ・コルネッティ(ウルリカ)、市原 愛(オスカル)
日程:12月1日(日)・15:00、12月4日(水)・18:30、12月7日(土)・15:00
会場:東京文化会館

特別コンサート
「レクイエム」(ヴェルディ)
指揮:ジャナンドレア・ノセダ
管弦楽・合唱:トリノ王立歌劇場管弦楽団&合唱団
独唱:バルバラ・フリットリ(ソプラノ)、ダニエラ・バルチェッローナ(メゾ・ソプラノ)、ピエロ・プレッティ(テノール)、ミルコ・パラッツィ(バス)
日程:11月30日(土)・14:00 会場:サントリーホール

問:ジャパン・アーツぴあ 03-5774-3040
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テレビ東京チケット事務局 03-3435-7000