大野和士&都響が「ホルンの王」シュテファン・ドールとヴィトマン協奏曲を初演!

左:大野和士 ©Rikimaru Hotta
右:シュテファン・ドール ©Simon Pauly

 ベルリン・フィルの首席ホルン奏者、シュテファン・ドールが、再び都響にやって来る。2023年には、モーツァルトの協奏曲第4番の独奏に加え、R.シュトラウスの「アルプス交響曲」ではオーケストラのなかで、その輝かしい響きを聴かせたホルンの帝王だ。

 今回は、ヴィトマンのホルン協奏曲での共演となる。ドールに捧げられ、ベルリン・フィル、都響(創立60周年記念)、ブリュッセル・フィル、ルツェルン響、スタヴァンゲル響、スウェーデン放送響による共同委嘱作品の日本初演だ。

 ホルンによる超絶技巧はもちろんのこと、スラップスティックなユーモアとロマンティックな音楽が入り乱れる全7楽章、40分ほどの大曲である。第2楽章はウェーバーのホルン小協奏曲の主題に基づき(ベートーヴェンの「第九」も顔をのぞかせる)、続くスケルツォ楽章では、ロッシーニ《ウィリアム・テル》、シューマン「コンツェルトシュトゥック」、オッフェンバック《地獄のオルフェ》などの引用もちりばめられる。さまざまな引用でホルン音楽の歴史を盛り込みつつ、エンターテインメント性も豊かな作品に仕上げてしまう、才人ヴィトマンならではの快作だ。

 休憩後は、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。マエストロ大野にとって、この曲を都響で取り上げるのは意外にも初めてだという。円熟のコンビによる彫りの深い表現を期待したいところだ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2025年3月号より)

大野和士(指揮) 東京都交響楽団
第1017回 定期演奏会Aシリーズ 
2025.3/14(金)19:00 東京文化会館
問:都響ガイド0570-056-057 
https://www.tmso.or.jp