楽壇から熱い注目を浴びるチェコの気鋭、ペトル・ポペルカがN響の指揮台に初めて登場する。ポペルカは2022年に東京交響楽団にマティアス・ピンチャーの代役として出演し、センセーショナルな成功を収めた。24年に首席指揮者兼芸術監督を務めるプラハ放送交響楽団と来日し、覇気にあふれた名演を披露してくれたのも記憶に新しい。ウィーン交響楽団では24/25シーズンから首席指揮者に就任するなど、急速に活躍の場を広げている。
N響との共演にあたって、ポペルカは意欲的なプログラムを用意してくれた。ツェムリンスキーの「シンフォニエッタ」で始まり、ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」で終わるという、“ダブル・シンフォニエッタ・プログラム”だ。間にはさまれるのは、ラデク・バボラークの独奏によるリヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲第1番と、ドヴォルザークの交響詩「のばと」。前半がウィーン・プログラム、後半がチェコ・プログラムの二部構成ともみなせる。バボラークのソロは今回も、大きな喜びと驚きをもたらしてくれることだろう。
ツェムリンスキーの「シンフォニエッタ」を聴く機会は貴重だ。後期ロマン派スタイルの作品で知られている作曲家だが、この曲は新古典主義の様式をベースにした後期の作品。一方、ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」は、金管楽器の壮麗なファンファーレを特徴とする独創的傑作。両者の性格はまったく対照的だが、ポペルカはN響とどんなサウンドを生み出してくれるのだろうか。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2025年1月号より)
ペトル・ポペルカ(指揮) NHK交響楽団
第2031回 定期公演 Aプログラム
2025.2/8(土)18:00、2/9(日)14:00 NHKホール
問:N響ガイド0570-02-9502
https://www.nhkso.or.jp