12月12日、広島交響楽団が2025年度シーズン(25年4月~26年3月)のラインナップを発表した。
新シーズンのテーマは“Piece of Peace(平和のかけら)”。25年が原爆投下から80年の節目であることから、定期演奏会、毎年恒例の「平和の夕べ」コンサートなどに加え、被爆80周年特別公演が開催される。
今季から音楽監督を務めるクリスティアン・アルミンクは、シーズン・パンフレットで「今の世界において平和がいかに重要であるかを再認識する機会になればと考えています」とテーマにこめた想いを明かしている。
新シーズンの定期演奏会は全10公演。アルミンクはそのうち3回登壇する。
開幕を飾る第450回(4/12)ではブラームスをフィーチャー。ピアノ協奏曲第1番(独奏:ルーカス・ゲニューシャス)をメインに据え、今年亡くなった戦後ドイツを代表する作曲家ヴォルフガング・リームがブラームスの歌曲にインスピレーションを得て作曲した「オーケストラのための『厳粛な歌』」を組み合わせる。第458回(26.2/14)は群馬交響楽団との共同制作で、ワーグナーの楽劇《ワルキューレ》より第1幕を演奏会形式で上演。ルツェルン歌劇場のシェフを務めた経験を持ち、フランクフルト歌劇場やストラスブール歌劇場などにも客演するアルミンクが、ロマン派オペラの傑作をどのように描くのか期待が高まる。
アルミンクは定期演奏会以外にシン・ディスカバリー・シリーズ(全4公演)でもタクトをとる。「ヒロシマとモーツァルト」をテーマに、すべての公演でモーツァルト作品と広島にまつわる現代作品を組み合わせる。
客演指揮者も豪華な顔触れ。特別定期演奏会(6/21)に登壇するのは、少年期にレニングラード(現サンクトペテルブルク)で戦争を体験しているという巨匠ウラディーミル・フェドセーエフ。チャイコフスキーの交響曲第5番、ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番(独奏:角野隼斗、トランペット:児玉隼人)というロシア・プロでタクトをとる。
他にも海外勢では、ドビュッシー&ラヴェルのフレンチ・プロを披露するシルヴァン・カンブルラン(5/16)、一流指揮者を次々と輩出するフィンランドからハンヌ・リントゥ(11/22)とピエタリ・インキネン(26.3/7)という実力派が登場する。また、ウィーン・フィルの第1コンサートマスター フォルクハルト・シュトイデがソリスト&コンマスとしてリードするモーツァルトの「トルコ風」協奏曲、ドヴォルザークの交響曲第8番にも注目だ(6/27)。
日本勢では二人の巨匠 秋山和慶と尾高忠明がアニバーサリー作曲家を紹介。秋山は25年が生誕100年の芥川也寸志の3作品を作曲家の誕生日に披露(7/12)。尾高も生誕160年のシベリウスから「4つの伝説曲」(レンミンカイネン組曲)を取り上げる(9/20)。
ソリストも巨匠から若手まで多彩なラインナップ。世界の第一線で活躍するチェリスト スティーヴン・イッサーリス(10/24)、名門オーケストラとの共演の他に、近年は美術や演劇とのコラボでも注目を集めるヴァイオリニスト庄司紗矢香(11/22)、2019年のミュンヘン国際音楽コンクールのチェロ部門を制した俊英・佐藤晴真(7/12)ら注目の弦楽器奏者が登場。
ピアノでは、阪田知樹(5/16)、久末航(26.2/14)、キット・アームストロング(26.3/7)という若手実力派が名を連ねた。
また、ベルリン・フィルの首席ホルン奏者を30年以上務めるシュテファン・ドールはR.シュトラウスの協奏曲第2番を吹く(9/20)。
「平和の夕べ」コンサートは広島(8/5)、大阪(8/7)、東京(8/8)の3公演。先日「第35回高松宮殿下記念世界文化賞」を受賞し話題となったマリア・ジョアン・ピリスがベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番で広響に初登場するほか、メインではアルミンクがマーラーの交響曲第4番を指揮する。
被爆80周年特別公演はブリテン「戦争レクイエム」(9/6)。英国の名門「ボーンマス・シンフォニー・コーラス」を迎え、第二次世界大戦におけるすべての犠牲者を追悼するために作曲されたこの作品を、同合唱団の音楽監督ギャビン・カーが指揮する。
広島交響楽団
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