東京フィルの4月定期は、尾高忠明&舘野泉の巨匠ふたりが競演

左:尾高忠明 ©上野隆文
右:舘野 泉 ©Akira Muto

 4月の東京フィル定期演奏会は、桂冠指揮者の尾高忠明が登壇。彼と関わりの深い人と作品が集まる、特別な雰囲気の演奏会になりそうだ。

 まず忠明の兄、尾高惇忠のピアノ連弾曲「音の旅」のオーケストラ版より3曲。心温まる平明なメロディで演奏機会も多い、子どものためのピアノ名品集だ。意外にも忠明がこの版を取り上げるのは初めてとのことで、心洗われる時間になりそう。

 東京フィル初の欧州演奏旅行は1984年、指揮者が尾高忠明、共演ピアニストは舘野泉だったという。その後世界的に活躍し続けた両者が、舘野の演奏生活65周年の今年、同楽団定期で共演する。舘野はこの20年は「左手のピアニスト」としてその世界を開拓し、新作も数多く献呈された、レジェンドというべき存在。その彼がラヴェル生誕150年の記念年に、左手作品の代表作「左手のためのピアノ協奏曲」を、長年の盟友とともに奏でる。聴き逃がす手はない。

 同じく必聴なのが、尾高の振るエルガー、しかも交響曲第3番。創作への熱意の衰えていた晩年、多くの仲間や音楽家たちの協力を得て意欲新たに取り組んだ大作。残念ながら完成は叶わなかったが、残されたスケッチからアンソニー・ペインが1997年に補筆完成、98年に初演され、以来この版の演奏が定着している。イギリス音楽の第一人者である尾高は、本作も2004年の日本初演をはじめ各地で演奏し続け、誰よりもその真価を知悉する。円熟の境地にある名匠の指揮で、新たなエルガーのサウンドに浸れる喜びはこの上なく大きい。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年4月号より)

尾高忠明(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
第1014回 サントリー定期シリーズ 
2025.4/24(木)19:00 サントリーホール
第169回 東京オペラシティ定期シリーズ
4/25(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第1015回 オーチャード定期演奏会
4/27(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522 
https://www.tpo.or.jp