ベートーヴェンは自宅でチケットを売っていた!?
—演奏会事情 今昔物語〜チケット手売りからQRコード時代へ

対談 鈴木優人(指揮)&石上真由子(ヴァイオリン)

石上 今日は“クラシックコンサートの昔と今”というテーマです。
 最近は、チケットがQRコードになったり、音楽家が普通にiPadを使うようになったり。宣伝する方法とかも以前と変わってきましたか?

優人 バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)では、チラシは今も作っています。以前と違うのは、同時にウェブ用素材とかも作るようになったことですね。

石上 私も自分の公演でチラシは作ります。SNSとかで流したりするので、横型のチラシを作ることが多くなりました。

優人 前に「成長するチラシ」っていうのを作ったことがあります。最初は、木の芽が書いてあって、それが配り終わったら枝が出てるものになって、最後には大きな木になる、みたいな。

優人 関西に行くと、ホールの外で学生さんとかよくチラシの手配りをしていますね。

石上 私もやったことあります。意外とみんな受け取ってくれないんだな…と思って 笑

優人 ティッシュ配りみたいに。

石上 結構心折れました。それ以来ティッシュは受け取ろうと思って 笑

優人 最近はウェブ広告もありますね。例えば読響で僕が指揮するコンサートの広告が僕に表示されたりするんですけど 笑

石上 私も一時自分の広告が出てきて、私が見てもなーと思うことがありましたけど、自分と同世代のこの地域に住んでる人たちが見てるというのがわかってちょっと安心しました。

優人 僕は敢えてそういう広告の設定をオンにしていて、めちゃくちゃターゲットされますね。美容系の広告なんかもすごいです。「43歳の男性を探してます」みたいに、年齢ごとに作り分けてるんでしょうか。でもそれをクラシックでもやったらいいかもしれない。「43歳のあなたにぴったりの音楽を用意しました」みたいに 笑

もしベートーヴェンがSNSをやっていたら!?

優人 昔は作曲家にパトロンがついていて、そのパトロンが人を呼んで音楽を聴かせていたわけですよね。
そしてモーツァルト、ベートーヴェンの頃になると予約演奏会というのが行われていて、チケットを予約できる仕組みだったようです。

石上 ベートーヴェンが初めてブルク劇場を借り切ってコンサートをやったときに新聞広告を出していて、チケットを買えるところがベートーヴェンの家だったっていうんです!自分でやるんだ!?って驚きました 笑

優人 ヘンデルもそうですよね。ヘンデルハウスにチケットセンターを作って売っていたり。みんな頑張ってたんですよ。

石上 自分の家を知られてもいいっていうのはちょっとびっくりしました。

優人 ベートーヴェンがSNSやっていたらどうだっだんだろう?彼のアカウントはなんか情報が散らかっていそう。

石上 確かに 笑

優人 モーツァルトは投稿の回数がすごく多そうですよね。

石上 一言みたいなのがたくさん。

優人 辿っても辿ってもなかなか昨日にならないSNSアカウントみたいな感じ?
 ヘンデルは宣伝ばっかりして。割とお金のことをしっかり考えて。

石上 笑

優人 バッハは、7年前から1回も投稿がありませんみたいな。仕事が忙しいから、そんな他人に書くメッセージなどないって感じで。あとDMが長そう。実際、市の当局に合唱メンバーの人数について訴えてる手紙とか残っています。
 ベートーヴェンも自分の作曲料が納得いかないっていう手紙があって。要は文句言ってる手紙ですよね、裏表びっしり。SNSだったら炎上ですね。

石上 批判とかする人がいたら「それは違う!」とか投稿したり 笑

クラシック音楽DX担当大臣とかあったら就任したい

優人 わりとデジタル化推進派です。例えばコンビニ発券とか慣れていないし、結構面倒と感じてしまいます。

石上 私も…。私の場合、コンサート会場にギリギリで駆け込むことが多くて、「発券しなきゃ!近くのコンビニどこ!?」みたいな感じになってしまって。QRコードならそのまま会場に入れるし、買うときもクレジット番号入れたりとか、買う行程は紙のチケットと変わらないし。

優人 デジタル化という意味では、少しずつ変わってきていると思うんですよね。飛行機や新幹線、美術館とかでもQRコードの入場はもう当たり前というか。だからコンサートのチケットをオンラインで買いたいという人も、若者だけではなくシニア層にも広がってきているように感じます。
 BCJではいまteket(テケト)っていうチケットサービスを使っています。

石上 すごく便利で私もよく使っています。

優人 やっぱりウェブサイトに情報がすべて載っていて、そこから購入リンクですぐにチケットが買えるっていうのが便利ですよね。

石上 すごくわかりやすいですし。私は、4年くらい前から利用しています。私が出ているYouTubeの動画(827万回再生)もあって音楽家も見てたし、音楽に関係ない人たちからも「見たよ」って言われました。

優人 僕もその動画でteketを知りました 笑
 そのあと、BCJでも利用し始めました。いろいろ要望を(teketに)お伝えすると随時対応していただいています。システム自体が硬直してない、進化していく仕組みっていうのがすごいなと思います。

石上 私がteketを使い始めたときは、コロナ禍ということもあって、自分で販売を開始して自分で予約も受付けていました。

優人 アーティスト自身がそれをできるのがとても良いですよね。忙しいときには周りにフォローして貰えばいいし。

石上 そう、当日受付でお金を受け取るのも自分でやっていました。「2,500円です」って 笑

優人 すごいね!
 でもそれってアーティストみんな興味を持つべきですよね。どうやって演奏会を作るとかチケットを売るとか、考えるべきだと思うし。

石上 あとすごく重宝しているのが、チケットを購入してくださった方にメールを送れるっていう機能です。これからやるコンサートの購入者だけじゃなくて、以前来てくださった方たちにも「こんな公演がありますよとか、ちょっとこれチェックしてください」ってメッセージを送れるんです。

優人 「今日はご来場ありがとうございました。アンコールは何々でした」みたいなのもできる?

石上 それもできます。
 なので、初めて自分でコンサートをするっていう人にはteketを薦めています。ホームページがない人でも情報がteketに集約されるので、ウェブサイトを作らなくても大丈夫。あと、買う人の手数料が0円というのも大きいですね。

優人 それはいいですね。BCJでは、teketにしてから若いお客さんが増えたと実感しています。QRコードの入場は、若い人が気軽に来られる環境の一つとして必要なことかなと思って。コンサート直前に友達と行こうよって電車の中でチケットを買えたりとか、携帯で簡単に入場できるというのは魅力ですね。

石上 確かに。あと逆に、万が一コンサートに行けなくなってしまった時も、オンラインでチケットの受け渡しができるんです。紙のチケットだと行きたい人に送ったり会う必要があるけど、teketならネット上で完結できます。

優人 もう若者だけじゃなくて、これまでのBCJのお客さんもみんな普通にteketを使っていますね。

石上 応援コメント機能というのも素敵なんです。「楽しみにしてます♪」とかお客さんからメッセージをもらえて嬉しくなります。
 あと一番の魅力は、コンサート情報を入れてボタンひとつで情報が出せて、すぐに発売もできるっていうところ。
「最短5分で販売開始!」って。

優人 話を聞いていて何か登録したくなりましたね 笑

石上 すぐにできちゃいます。

優人 ふたりでイベント作りましょうか?笑