Music Fusion in Kyoto 音楽祭 レポート vol.3
京丹波会場 「森の京都」de コンサート

海の京都、森の京都で極上の室内楽を味わう!

取材・文:高坂はる香

 京都府内の幅広い地域に一流の音楽を届けるべく創設された、Music Fusion in Kyoto音楽祭。
 10月から各地で演奏家が小中学校を訪問する教育プログラムが行われていたなか、10月12日〜19日の週末には、舞鶴市、宮津市、城陽市、長岡京市、京丹波町という5つの街で室内楽コンサートが行われました。その一部のコンサートの様子をレポートします。
里山の風景が美しい京丹波町

 取材最終日の10月14日は、南部の城陽と中部の京丹波という二つの街でコンサートを同時開催。なかでも、山々に囲まれた美しい盆地であり、丹波栗や黒豆でも知られる京丹波町では、2021年に地元の木材を使って建てられたばかりの美しい木造庁舎を舞台に演奏会が行われました。

中ヒデヒトさん、うしろは会場となった京丹波町役場

 京丹波出身のクラリネット奏者、中ヒデヒトさんとポール・メイエさんによる色鮮やかなクラリネット・デュオ、クァルテット・インダコのパワフルな熱演、そこにメイエさんが加わったモーツァルトと、一流の演奏を目と鼻の先で聴くことができる贅沢な時間が流れます。
 アンコールは、中さんがこの日の全出演者による編成のためにアレンジしたという「赤とんぼ」の変奏曲。なつかしさと新しさが同居する洗練された赤とんぼに、熱く盛大な拍手が贈られました。

©Naoki Noda

 この演奏会には、音楽愛好家だという西脇隆俊京都府知事も出席。終演後、府知事とメイエさん、中さんによるトークイベントが行われました。
 話題は、音楽が持つパワーにはじまり、メイエさんの故郷アルザスなど海外の地方都市における演奏会のあり方について、また、音楽家としてこれから行政にリクエストしたいことについてなど、さまざまに展開。興味深い話を聞くことができました。

写真中央:西脇隆俊京都府知事 ©Naoki Noda

 西脇府知事は、「よく“音楽のシャワーを浴びる”という表現がありますが、その余韻は体の中で蓄積されていくのでしょう。ハードルが高いと思われがちなクラシックを、今日のように、普段から住民の皆さんが足を運んでいる場所で気軽に聴ける機会をつくることは、すばらしいと思います。あわせて、京都には、祇園祭の音楽をはじめ優れた伝統芸能や民謡があるので、その良さもこれからももっと知ってほしいと思います」と語りました。

たくさんの人が詰めかけた京丹波町役場 交流ラウンジ(こだち)©Naoki Noda

 そして、「地元の京丹波が会場に選ばれ、しかも全公演の中でも一番にソールドアウトになって、とてもうれしい」と中さん。さらに若い頃から憧れ続けたメイエさんと共演できたことも、「まるで夢のようだった」と話します。
「世界の素晴らしい演奏家を、こんなに近くで、呼吸の音までわかる距離で聴くことができる。そのおもしろさを感じていただけていたらと思います。木と木が共鳴して、みなさんとの気持ちも一つになるような、とても素敵なコンサートでした!」

©Naoki Noda

 今回がいわばプレ開催という形だったMusic Fusion in Kyotoは、来年から本格的にスタートし、京都府内の複数の町に音楽を届ける予定だそう。
 海と山、豊かな自然、歴史的な名所、そして地域ごとの新鮮な食材を楽しみながらコンサートを巡る——地元はもちろん、全国の音楽ファンにとって、秋の京都の新しい楽しみ方が誕生したといえそうです。

Music Fusion in Kyoto 音楽祭
https://music-fusion.kyoto

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