
スペイン歌曲のスペシャリスト谷めぐみ。その《帰国40周年リサイタル》が5月に開かれる。
「もう40年だなんて、自分が一番驚いています(笑)。私にとってスペイン歌曲は唯一無二の友のような存在。いつも傍らで私を励まし、時には松葉杖のように支えてくれました」
リサイタルは《祈り》《カタルーニャの抒情》《異郷の香り》《魅せられし国》の4部で構成される。
「まず《祈り》のステージを、と決めていました。様々な不安を覚えることが多い今、歌で祈りを捧げたい、と強く願う気持ちがあります。スペインの歌と出会い、歌曲として最初に魅せられた作品、トゥリーナ〈エスペランサの聖母に捧げる祈祷風のサエタ〉から始めます」
第1部は他に、ファリャ、アルバレスの作品。第2部は、谷の恩師であるピアニスト、作曲家マヌエル・ガルシア・モランテ編曲によるカタルーニャ民謡3曲で始まり、アルベニス、グラナドス、モンポウの作品と続く。
「アルベニス〈舟歌〉は、アルベニス生誕の町カンプロドンで開かれた演奏会で、ビクトリア・デ・ロス・アンヘレスがモランテ先生の伴奏で歌うのを聴いた、思い出の曲です。お許しを得てリハーサルから聴かせていただけたことは、今考えると、夢のような経験でした」
グラナドスのロマンティシズムが凝縮された〈ちいさな歌〉はピアノも聴きどころだという。そしてよく知られたモンポウ〈君の上にはただ花ばかり〉。谷はこの曲を作曲家自身の前で歌ったことがある。
「モランテ先生がご自宅に連れていってくれたんです。歌い終えると、マエストロ・モンポウは微笑み、『とてもよかった』と言ってくださいました」
第3部は広くスペイン語圏の国々にも目を向けた。
「イラディエール〈ラ・パロマ〉、モンサルバッジェ〈ピアノの中のキューバ〉、どちらもヨーロッパとキューバ辺りを行き来したリズム、ハバネラが使われています。アルゼンチンの作曲家グアスタビーノの作品はロマンティックな魅力。ピアソラ〈忘却〉はオリジナルの映画音楽を尊重してヴォカリーズで。今回、初めて歌います」
そして最後は、もちろんスペイン色いっぱいのステージだ。
「お国ぶり豊かな作品を揃えました。オブラドルス〈エル・ビート〉は、お客様が大好きな一曲。グリディの作品ではカスティーリャのホタを。胸に沁みるラビージャ〈バスクの歌〉、そして〈アストゥリアスの歌〉で小粋に締めます」
谷が厚い信頼を寄せる名手、浦壁信二のピアノも楽しみだ。
取材・文:井内美香
(ぶらあぼ2025年4月号より)
谷めぐみ 帰国40周年リサイタル スペイン歌曲浪漫
2025.5/10(土)14:00 Hakuju Hall
問:ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977
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