
「トリトン晴れた海のオーケストラ」は、指揮者のいないオーケストラ。コンサートマスターの矢部達哉がリードし、室内楽的な親密さでシンフォニーを演奏する。第一生命ホールの座付きとして2015年に結成され、18年から21年にかけて、ベートーヴェンの全交響曲を演奏。指揮者なしの「第九」がNHKで放送され、大きな話題となった。
現在、2度目となるベートーヴェン・ツィクルスに取り組んでいる。第17回となる6月28日の演奏会では、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」を取り上げる。名曲中の名曲であり、メンバーの誰もが何度も演奏したことがあるに違いない作品を、矢部と約40名のメンバーたちがどのように緻密に作り上げていくのか注目である。

右:広田智之 ©Ayane Shindo
演奏会の前半はリヒャルト・シュトラウス・プログラム。彼の最後のオペラである《カプリッチョ》の序曲は、弦楽六重奏の隠れた人気レパートリー。ロココ的な優雅さが感じられる作曲者晩年の美しい室内楽曲である。国内オーケストラの主力メンバーとしても活躍する矢部、丹羽紗絵、篠﨑友美、村田恵子、清水詩織、山本裕康の6人がなごやかなアンサンブルを聴かせてくれるだろう。そして、晴れオケのメンバーである広田智之がオーボエ協奏曲を吹く。同じくR.シュトラウス晩年の作品であり、これも過去に目を向けた優美な音楽。ベテランの広田が結成10年の晴れオケとどんな演奏を繰り広げるのか楽しみである。
文:山田治生
(ぶらあぼ2025年4月号より)
トリトン晴れた海のオーケストラ 第17回演奏会 ベートーヴェン・ツィクルスV
2025.6/28(土)14:00 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702
https://www.triton-arts.net